S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
354 / 369
第27章    All for you

10

しおりを挟む
 「なあ、これって……」

 驚いて顔を上げた俺とは対照的に、佐藤は驚く程平然とした様子でスマホを俺の手から取り上げた。

 「見ての通りだ。あとどうするかは、智樹、お前次第だがな?」

 まるで俺の本気を確かめるような、そんな口振りで言うと、佐藤には珍しく、唇の端を意地悪く持ち上げて見せた。

 その様子に、佐藤がただ単に俺の言い分だけを聞きに来たのではなく、燻り始めた俺のダンスへの情熱に、今後一切消えることのない火を点けるためだけに来たのだと、瞬間的にそう感じ取った俺は、和人と繋いだ手はそのままに、テーブル越しに佐藤を睨み付けた。

 「分かった、間に合わせる。その代わり、俺をここから出してくれ」

 俺の身元保証人は、両親でもなく、まして翔真の親父さんでもなく、佐藤になっていた筈だ。
 佐藤さえ受け入れの意志を示せば、後は所長の判断に委ねられることになる。

 尤も、当面の間通所は必要になると思うけど。


 それでも今よりは……


 今のこの限られた時間と制限された環境では、口では間に合わせると言ったものの、やっぱり自信がない。

 「良いだろう。話は通しておく」
 「悪いな、あんたには迷惑かけっぱなしで」

 もし佐藤がいなかったら俺は、今頃どうなっていたか……いや、もうこの世にはいなかったらかもしれない。


 それはそれで、翔真の近くにいられるんだろうけど……


 「和人も、色々心配かけたけど、もう大丈夫だから……」


 もう一度ステージに立つために…
 命懸けで俺を守ってくれた翔真のために……


 「俺、頑張るから」
 「智樹……」
 「馬鹿、泣いてんじゃねぇよ」


 和人が泣いたら、俺だって泣きたくなるじゃんかよ……


 「ごめん。でもさ、俺嬉しいんだもん。智樹が、俺の知ってる智樹に戻ってくれたことが、嬉しくて……」

 正直、薬に溺れていた頃の俺がとんなだったかなんて、今となっては思い出せないくらいに記憶が薄れてしまっているけど、和人にこんな涙を流させるくらいだから、相当だったんだろうな。

 「ごめんな、和人」

 今度は俺の方から、殆ど体格差のない和人の身体を強く抱きしめた。




 それから程なくして、佐藤の口添えもあってか、退所の許可が所長と、支援団体から下された。
 予想した通り、通所の条件付きではあったけど……


 そして、退所を翌日に控えた夜、俺は施設内にある倉庫に柊真を呼び出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...