視・束ーGaze to chaseー

誠奈

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 突然、下腹部に重い痛みと、そして強い衝撃を受け、意識が徐々に戻って来る。

 それでも瞼を持ち上げることは出来なくて……

 なのに耳だけは至極敏感になっていて、自分が今どんな状況にいるのかは、朧な意識の中でも分かった。

 肌と肌がぶつかり合う音、そして粘り気を帯びた水音と、規則的に吐き出される呼吸音……


 この痛みはそうか、俺、今翔真に……

 でも何故だろう、全然気持ち良くねぇや…

 あんなに翔真との過去を忘れたくて、記憶の中から翔真の存在を消してしまいたくて、仮初ではないにしろ、他の男に身を任せたりもしたのに……
 いざこうして翔真に抱かれてみると、快楽とは程遠い……痛みしか感じないなんて……

 いや、痛みだけじゃない、嫌悪感すら感じる。

 俺、一体どうしちまったんだろう……


 そんなことを、中途半端に戻った意識の中で、ぼんやりと考えていた、その時だった。

 携帯だろうか、電話の着信音が聞こえ、続けて荒い呼吸の合間で、「君か……」翔真が電話に答える声が聞こえた。

「ん? ああ、智樹なら今ここにいるよ」


 俺のことを話している?
 ……ってことは、電話の相手は、俺の知ってる人間……なのか?

 誰だ……、一体、翔真は誰と?


 その答えは直ぐに出た。

 翔真が直接名前を口にしたわけじゃない。
 会話の内容から、俺が勝手にそう思っただけなんだけど……

 でもまさか翔真が和人と繋がってるとは、想像もしていなかった。

 しかも、

「二人……、相原君と松下君だったっけ? 二人にも伝えてくれるかな、報酬は日を追って振り込むって」


 雅也や潤一までとは……


「え? ああ、そうだね、これでコソコソする必要もなくなると思うと、些か残念ではあるけどね?」


 なんだ……、そういうことか……、これで漸く分かったよ。


 俺がずっと感じていたあの視線、あれは翔真の物だったんだ。
 そして、地下鉄で俺に触れて来たあの手、あれも恐らくは……

 翔真がどうやってあの三人と繋がりを持ったのかは、正直分からないし、もし俺の考えが正しかったとしたら、そこまでする必要性だって感じはしないけれど……

 ただ一つ分かっているのは、全ては翔真が俺をその手に取り戻すために仕組んだこと……、俺をその手に取り戻すため。


 いや、違うな。


 〝俺を支配するため〟に、が多分正しい。


 その目で、その手で……
 俺が二度と翔真の傍から離れないよう、縛り付けるために……


 




 そして俺は……

「智樹、愛してるよ」


 その目から、その手から……

 もう二度と逃れることは、


「俺も……、愛してるよ、翔真……」


 もう出来ない。
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