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第二章 ー月ー
十三
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ある日のこと、潤一は植栽の手入れを手伝っている最中に、庭に迷い込んだ一匹の犬を拾った。
人目につかないよう、空いていた使用人部屋に隠し、こっそり飼おうとも考えたが、照にだけはそのことを正直に打ち明けた。
隠したところで照には隠し通せる訳が無いことを、潤一は知っていた。
当然咎められるだろうと思っていた潤一だったが、「旦那様に見つからなければ」、と照はあっさり犬を飼うことを許可した。
照は気付いていた。
潤一が夜な夜な蔵へ忍び込んでは、明け方に戻って来ていることを……
そして潤一が智樹にどうにもならない想いを寄せていることも……
根拠などない。
ただ長年我が子同然に育てて来た潤一の僅かな変化と、人よりも多くの歳を重ねて来た照の勘だけがそう思わせていた。
犬を飼うことで、智樹への想いが少しでも薄れるのならば……、そう願ってのことだった。
潤一はその犬に〝五助〟と名付け、五助を可愛がる潤一に、照も険しい目を少しだけ和らげた。
しかし、そんな照の願いを他所に、潤一の智樹への想いは益々膨らんでいった。
潤一が五助を懐に入れ、智樹の元へ連れて行くと、智樹は生まれて初めて触れる犬に、初めこそ怯えた様子を見せていたが、人懐っこい五助の性格のお陰もあってか、頬を摺り寄せられるまでになった。
明け方になって潤一が蔵を後にする際も、五助を置いて行けと強請っては、潤一を困らせた。
「五助をここに置くことは、出来ないんだ……」
大粒の涙を零し、泣きじゃくる智樹の顔を見る度、潤一は後ろ髪を引かれる思いに駆られた。
人目につかないよう、空いていた使用人部屋に隠し、こっそり飼おうとも考えたが、照にだけはそのことを正直に打ち明けた。
隠したところで照には隠し通せる訳が無いことを、潤一は知っていた。
当然咎められるだろうと思っていた潤一だったが、「旦那様に見つからなければ」、と照はあっさり犬を飼うことを許可した。
照は気付いていた。
潤一が夜な夜な蔵へ忍び込んでは、明け方に戻って来ていることを……
そして潤一が智樹にどうにもならない想いを寄せていることも……
根拠などない。
ただ長年我が子同然に育てて来た潤一の僅かな変化と、人よりも多くの歳を重ねて来た照の勘だけがそう思わせていた。
犬を飼うことで、智樹への想いが少しでも薄れるのならば……、そう願ってのことだった。
潤一はその犬に〝五助〟と名付け、五助を可愛がる潤一に、照も険しい目を少しだけ和らげた。
しかし、そんな照の願いを他所に、潤一の智樹への想いは益々膨らんでいった。
潤一が五助を懐に入れ、智樹の元へ連れて行くと、智樹は生まれて初めて触れる犬に、初めこそ怯えた様子を見せていたが、人懐っこい五助の性格のお陰もあってか、頬を摺り寄せられるまでになった。
明け方になって潤一が蔵を後にする際も、五助を置いて行けと強請っては、潤一を困らせた。
「五助をここに置くことは、出来ないんだ……」
大粒の涙を零し、泣きじゃくる智樹の顔を見る度、潤一は後ろ髪を引かれる思いに駆られた。
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