43 / 53
番外編 ー朝月夜ー 其の一
二
しおりを挟む
その晩、眠気覚ましにと庭を散歩をしていた翔真は、普段は滅多に使われることのない裏門から、提灯の灯りだろうか、三つの光が庭の奥へと向かっているのを見かけた。
「こんな時分に……?」
土地の名士でもある父を尋ねて来た客人なのか、はたまた大田家の財産を狙って忍び込んだ盗っ人なのか……
正体が何であれ、不審に思った翔真は、連なる三つの光の後を追った。
時折木の陰に身を潜めて息を殺し、足音を忍ばせながら着いて行くと、ある場所に辿り着いたと同時に、三つの光が一瞬にして消えた。
「あれ……?」
薄闇の中凝らした視線の先には、無数の蔦が壁を包む古い蔵が建っていて、その一角だけは全く庭木の手入れがされておらず、鬱蒼とした……不気味な雰囲気さえ漂わせている。
「あ、ここって……」
翔真自身、蔵の存在を全く知らなかったわけじゃない。
ただ幼い頃より、大田家の当主でもある父親から、蔵に近寄ることを固く禁じられていたのと、加えて、不用意に扉を開けば、たちまち不幸が訪れるだろうなどと言われれば、幼い上に肝の小さい翔真には恐怖以外の何物でもない。
だからこそ、翔真は蔵の存在自体を忘却の彼方へと追いやっていたのに、その蔵が今翔真の目の前に建ちはだかり、しかも固く閉ざされていた扉が開けはなられているのだ。
「こんな時分に……?」
土地の名士でもある父を尋ねて来た客人なのか、はたまた大田家の財産を狙って忍び込んだ盗っ人なのか……
正体が何であれ、不審に思った翔真は、連なる三つの光の後を追った。
時折木の陰に身を潜めて息を殺し、足音を忍ばせながら着いて行くと、ある場所に辿り着いたと同時に、三つの光が一瞬にして消えた。
「あれ……?」
薄闇の中凝らした視線の先には、無数の蔦が壁を包む古い蔵が建っていて、その一角だけは全く庭木の手入れがされておらず、鬱蒼とした……不気味な雰囲気さえ漂わせている。
「あ、ここって……」
翔真自身、蔵の存在を全く知らなかったわけじゃない。
ただ幼い頃より、大田家の当主でもある父親から、蔵に近寄ることを固く禁じられていたのと、加えて、不用意に扉を開けば、たちまち不幸が訪れるだろうなどと言われれば、幼い上に肝の小さい翔真には恐怖以外の何物でもない。
だからこそ、翔真は蔵の存在自体を忘却の彼方へと追いやっていたのに、その蔵が今翔真の目の前に建ちはだかり、しかも固く閉ざされていた扉が開けはなられているのだ。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる