桜の葉が舞い散る季節、あなたの傍にいられたら

第５章

４

　暫く翔真さんの背中を摩り、漸く翔真さんが落ち着いて来た頃、インターホンが鳴った。

　和人だ。

　「開いてるから、入ってきて？」

　俺は翔真さんを抱きしめたまま、玄関に向かって声を上げた。

　「誰か来るの？」

　俺の胸の中で、怯えた目が俺を見上げる。

　「俺の友達です。怖くないから、安心して？」

　漸く落ち着きを取り戻した翔真さんを不安にさせたくなくて、俺は翔真さんの耳元にそっと頷いた。

　「雅也？　どこ？ ってか、何なのコレ」

　和人が驚くのも無理もない。
　なんたって部屋ん中、まるで泥棒でも入ったみたくパラダイス状態になってんだから。

　「和人、こっちこっち」
　「こんな所にいたんですか？」

　床の物を足で蹴散らしながら、和人が物置部屋の入り口から顔を出した。

　「それよりこれ……、どうしたんです？ まさか、泥棒？」
　「違う違う、そんなんじゃないんだ」

　まあ、この状況じゃ、そう思うのも当然っちゃ当然だよな。

　「そ？ ならいいんだけど。それにしても酷いね……」
　「うん。俺も帰って来てビックリした」

　一瞬、部屋間違えたかと思ったくらいね？

　「で、その人が？」

　和人の視線が、俺の胸の中で身体を丸める翔真さんに向けられる。

　「ん？ ああ、そうなんだ。和人も覚えてるでしょ？」

　俺は翔真さんに“ゴメンね”と断りを入れてから、顔の半分を覆う前髪を掻き上げた。


　瞬間、

　「あっ……、先……輩？」

　和人が驚いた様子で目を見開いた。