桜の葉が舞い散る季節、あなたの傍にいられたら

誠奈

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第10章

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 「奥様……!」

 傍に立っていたお手伝いさんがすぐに駆け寄り、今にも崩れそうなお母さんの身体を支えた。

 「あ、あの……、大丈夫ですか?」


 俺だってショックだったんだ。それが親なら尚のことだろうな……


 「ええ……、大丈夫よ。それで、それで翔真は……」

 大粒のダイヤが光る指で額を押さえ、何とか身体を立て直すと、お母さんはまた少しだけ身を乗り出した。
 多分……だけど、翔真さんがこのことを知っているのか、って聞きたいんだと思った。

 でもそれ以上に伝えなきゃいけないことがある。俺はもう一度深く息を吸いこむと、膝の上で握った拳ににグッと力を籠めた。

 「詳しいことはMRIとか、ちゃんとした検査を受けないと分からないんですけど、その医師の話だと、翔真さんの病状はかなり進んでいるらしくて……」

 そこまで言った時、目の前で本の表紙がパタンと閉じられた。

 「それで? 私達にどうしろと? 病気だから何とかしろと? 残念だが、アレ・・は私の顔に泥を塗って逃げた狡い奴だ。そんな奴に、どうして私が? それとも何か、金が目的か? ……まったく、君もあの男と一緒だな」


 あの男……それは大田先輩のことなんだろうか?


 そんな疑問が不意に頭を過るが、それを吹き消す勢いで俺の中には怒りにも似た感情が込み上げてきて……

 俺はテーブルをひっくり返す勢いで立ち上がった。
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