桜の葉が舞い散る季節、あなたの傍にいられたら

誠奈

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第13章

18

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 それはほんの一瞬のことだった。


 本当に僅かな時間……だったと思う。


 その僅かな時間の間に、まさかそんなことが起きるなんて……想像もしてなかったんだ。






 一向に止む気配のない雨を忌々しく思いながら、眠ったままの翔真さんを部屋に残して、俺はコンビニへとバイクを走らせた。

 冷蔵庫の中が空っぽだったから。

 途中スマホを持って出るのを忘れたことを思い出したが、すぐに戻るんだからと、取りに帰ることはしなかった。

 一通り買い物を済ませ、コンビニを出た時、一台の救急車がけたたましいサイレンを響かせながら、俺の目の前を通り過ぎて行った。救急車はコンビニの角を曲がり、アパートの方角へ向かって走って行く。
 それを見ながら、俺は急いでバイクに跨ると、メットも被ることなく、バイクを発進させた。

 嫌な予感がして、胸がざわついて仕方なかった。


 きっと違う、俺の思い過ごしだ。落ち着け、落ち着くんだ。


 何度も自分に言い聞かせるのに、不安ばかりが胸の奥に募って行き……
 アパートの前に停まる救急車を見た瞬間、俺はバイクを投げ出し、泥に足を取られながら、足を縺れさせながら、走り出していた。

 アパートの階段下に群がる幾つもの傘の間をすり抜け、救急隊員を力任せに押し退けた。

 「君……っ!」

 制止する声なんて、俺の耳には全く届かなかった。

 「翔真さん! なんで……、どうしてっ!」
 「君っ、落ち着いて……」

 ずぶ濡れで担架に乗せられた翔真さんに縋り叫ぶ俺を、一人の救急隊員が取り押さえた。

 「放せ! 放せってば! 翔真さん……翔真っ!」

 目の前で救急車のドアが閉められ、俺の叫ぶ声は、一層強く降り始めた雨音と、救急車のサイレンに掻き消された。
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