君の声が聞きたくて

誠奈

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第21章  loco

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 「で、でも今は……」


 違うと……
 智樹と出会って、時間にしたらほんの短い間だったかもしれないが、本気で愛し合って、相手を想う気持ちさえあれば、人を愛することに性別なんて関係ないんだと……


 そう思えるようになった。

 智樹と出会うことで、俺は所謂性的マイノリティと呼ばれる人達を、異端の目で見ることはなくなったし、寧ろもっと近くありたいとも思えるようになった。
 智樹を知ることで、俺の世界は大きく変わった。


 智樹を愛したことで俺は……


 「そうね、サクラちゃんはたまたま・・・・トモちゃんと出会って、トモちゃんと想いを通わせることで、アタシ達みたいな種類の人間に対しての偏見を無くしたかもしれないわ。でもね……」

 裕也さんが短くなった煙草を灰皿に揉み消す。その顔がどこか寂しげに見えるのは、多分俺の気のせいではないだろう。

 「世間はそうじゃないの。ここから一歩外に出れば、世間のアタシ達に対する風当たりは、まだまだ強いの。唾を吐きかけられることだってあるし、口汚く罵られることだってあるのよ?」
 「そんな、だってただゲイだってだけで、どうしてそこまで……」
 「そう、ただゲイなだけ。でもそれは、性的マイノリティへの理解が乏しい人達にとっては、ゲイであるってこと自体が罪で、その大罪を犯しているアタシ達は、人間として失格なのよ」


 人として失格……


 その一言が、酷く重たく感じたのは、俺自身が少なからず偏見を持った目で彼等のことを見ていたから、なんだろうな……

 「まあでもさ、世の中そんな捨てたモンじゃないわね?」

 それまでの重く、絞り出すような声から一転、裕也さんが明るい声を上げる。
 そして思ったよりも逞しい両腕を広げると、カウンターから身を乗り出すようにして、俺と松下の肩をその広い胸の中に抱き込んだ。

 「ちょ、ちょっと、裕也さん、苦しいって」

 藻掻く松下。
 でも裕也さんは気にした様子も見せず、更に俺達の肩を抱いた腕に力を込め、俺と松下……交互に髭の生えた頬を擦り付けた。
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