わたしの愛した世界

伏織

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七章

7-15

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よくよく見てみると、扉のドアノブには乾いた血液のようなものが僅かについていた。そして、扉を開けた先には煌々と明かりの点いた部屋があり、中のベッドにより掛かるようにして、知らない女性が目を閉じて座っていた。女性の着てる服の胸部から腹部にかけて赤く染まっている。胸の部分の布地に縦に細い、小さく穴が開いているのを見た感じでは、その赤はもともとの服の色ではなさそうだ。

エリザが私に近寄り、扉を少し開いて中を覗き込んだ。中にあるものを確認して、私の肩を手で押して扉から遠ざけた。静かに扉を閉めると、早足で他の客室の扉を近い順から開けては閉めて、中を次々と確認し始めた。

流石に私は肝が少し冷えてしまった。エリザが二階の客室をすべて確認して戻ってくるまで、近くのヒビの入った窓から外を眺めていた。暗がりの中、クロスらしき人影が大股であちこちへ歩いて回っているのが見えた。外には街灯があったはずだが、今はそれがどうしてかすべて消えているようだ。クロスの持つ杖の先が光っており、それがちょこちょこと家々の間を動いていた。


「皆死んでいるわ。ほとんどがベッドの上ね」

「寝ていたところを、ですかね」

「でしょうね。皆、首を深く切られて死んでいたから、ベッドが真っ赤だったわ」

「洗濯じゃ綺麗にするのも一苦労ですね」


他人事のような口調で、そう軽口を叩いてしまった。エリザに怒られるかと思ったが、彼女は何故か安心した様子で微笑んだ。「少しは落ち着いたみたいで、良かったわ」


「ごめんなさい、不謹慎なことを言いました」

「いいのよ。神妙にされる方がめんどくさいわ」


と、ここで私はあることに気付き、廊下の角を見つめた。角には階段があり、降りた先には宿のカウンターがある。その横に宿の食堂への入口のドアがあったはずだ。そしてカウンターの右の通路を進んだ先に大浴場とトイレ。カウンターの奥に二つの扉。おそらくその二つの扉のうち一つが、宿の奥さんたちの居住スペースだろう。

この宿の奥さんには、まだ小さな息子がいたはずだ。

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