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十一章
11-12
しおりを挟む「家族、本当に行方不明なんですね」
エリザは今にも泣きそうに顔をくしゃくしゃにして、俯いて顔を横に向けた。おそらくだが、彼女の家族は生きているかどうかすら怪しい。そんなことは本人もよく分かっていることだろう。
「私は諦めてたのよ。もうあの人もあの子も死んでるだろうと」でも、あなた達を見てたら、なんの理由も無いけど........。
「死ぬ前に、もう一度足掻いてみたくなったのよ。
私はもう、年寄りだから。思い残しなく死にたいの」
せめて、生きてるかどうか、何処で死んだのか位は、何とかして調べることは出来るかもしれない。彼女がその「答え」さえ見つけられれば満足なのかはわからないが、我々はそれの協力をするくらいなら、まぁそれくらいの労力は惜しまない。
「........決めた。一緒に来てください。多分途中であなた死ぬかもだけど」
「構わないわ。ずっと家に籠って死ぬのを待つよりは、ずっといい死に方だわ」
「ちょっと!」勝手に決めた私に、クロスは眉間にシワを寄せて怒鳴った。つかつかと私に歩み寄り、肩を掴んで顔を寄せてきた。そしてエリザに聞こえないように抑えた声で言った。
「なんで勝手に決めるの!彼女と僕が居たら、パーティバランスが偏るでしょ!魔法使い二人とか!」
「気にするところ、そこなの?」
「別にエリザが来るのはいいよ!ジョブがだねぇ」
「お前ゲーマーかよ」
「まぁ、ちょっと裏技使って地球のゲームやって暇つぶししてたからさ。だから時間や空間を操ったりするのは得意なんだけど、」
幻術はちょっと苦手かなぁ........?と。だから幻術について色々学びたい気持ちもあるようだが、おそらく彼女の体調が気になるのだろう。それは私にもある。高齢の女性と共に旅をするということで、この先彼女は体が不自由になったり病気になったりと、我々の邪魔になる可能性は否めない。
クロスの肩越しにエリザを見ると、彼女はこちらを真っ直ぐに、真面目な顔で見詰めていた。不安そうではあるが、頼もしげな笑顔を浮かべ、大きく頷くと、
「私のことは、邪魔になったら捨てて頂戴。その代わり........」
「もしあなたが抜けたあと、代わりにあなたの家族の行方を探して欲しい、と」
「そうよ」
視線を落とすと、エリザの手は拳を強く握りしめ、細かに震えているのが見えた。武者震いか恐怖か、不安か。いや、その全てなのだろう。
クロスも一度彼女を振り返り、私に向き直った。全力拒否!という様子ではない。エリザが高齢で不安要素が多いという点でしり込みしているようだが、それ以外で見れば、魔法の腕は未知数でクロス以上に知識がある様子だし、我々が今まで適当にこなしてきた料理もグレードアップするだろう。腹に入ればなんでもいいとは思うが、ご飯は美味しいに越したことはない。
「........わかったよ」クロスにも、私にも強く反対する理由が見つからない。となれば、答えは決まっている。
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