触れるな危険

紀村 紀壱

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2部 本編のその後の話

2部 5話 目の前しか頭にない*

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――あり得ない。

シャルトーの指で。ほんの少し尻を弄くられただけで達するなんて、そんなことはあり得ないし認められない。射精に伴う脱力と、ほんの少し冷めた意識でギィドは顎を戦慄かせながら思う。
しかし衝撃から立ち直るよりも先に、シャルトーの指を前立腺に押しつけたまま揺らし、直ぐさまギィドを快楽の階段へ引きずり上げて下りるのを許さない。

「あ゛、や゛め゛、っ……う゛ぐ゛、あぁ゛っ……!」
「ほら、気持ちイイ」

ぐっ、ぐっ、ぐっと腹の中を揺すられているのに、触られてもいない前から押し出されるように精液がとぷ、とぷ、と溢れ出て、頭の中までグチャグチャに乱される。
身体がおかしい。
シャルトーを蹴って逃げ出したいのに、足はシーツの上を滑って背中が反り、きゅうっと腹が指をしゃぶる。
骨張った指がどこに当たれば気持ちが良いのか知ってしまう。知られてしまう。
指が広げられて、いつの間に指が3本も入っていたことに愕然とする。
なぜ自分の身体は易々と受け入れてしまっているのか。

「スゴイ、もう入りそうだ」

なかから指を抜いたシャルトーはシーツで手を雑に拭いて、指で孔を広げるような形でギィドの尻を鷲掴みにする。
否応にもヒクつくアナルに、くぷ、くぷとツルリとした塊が押しつけられる感覚。視界は生理的に滲んだ涙で歪み、ソレが何か、なんて確認は出来ない。
だが本能的に挿入を許しては駄目だ、と思った。

「嫌、だ。やめ、ろっ……!」

身を捻って逃げようにも、身体は悶えるような程度の抵抗だった。

「ん゛ぅっ……!」
「ン、やわらかい……」

腹の中へ、ゆっくりと熱杭が侵入してきた。
はあ、っとシャルトーが熱い吐息を漏らす。
拒絶と悦楽の狭間で頬を震わせ、足掻くギィドの意志とは反対に、後孔は押し込めば、そのまま素直に飲み込んでしまうほど柔軟にシャルトーを迎える。
ぎゅうっと締めるつけてくるギィドを侵略するような初めての時とは違い、中が蠢いてしがみ付いてくるような感覚に、シャルトーは亀頭の部分だけを含ませてゆるゆると腰を揺らす。

「ぅ、ふ、………ん、ぁっ、やめ、……くっ、抜、け……よっ」
「ヤバイ、ねえ、アンタの中。熱くてふかふかなのにヌルヌルで、ほら、前立腺ココ。好きだろ」
「んっ、好きじゃっ、ねぇっ……!」
「嘘つき」
「あ゛ぁ゛っ……!」

緩やかな動きで前立腺を擽られて、甘やかな快楽に腹が疼く。しかし激しさのないそれに僅かに浮上したギィドの意識と反抗は、狙い澄ましたひと突きで崩れた。

「ほら、また射精した出た、可愛いネ、ギィ」
「や、ぇ゛っ、そごっ、やめ゛っ……!」

指とは違う質量で前立腺がどつっ、どつっと押しつぶされる度に頭の中がドロドロに崩れて視界が白くスパークする。
たらたらとギィドのペニスから漏れて腹を汚す薄い精液をシャルトーが「腹毛がアンタの出したのでベタベタだ、臍に精液が溜ってんじゃん」と熱っぽく笑い、臍に指を入れ、くちゅくちゅとくすぐる。
たったそれだけでも腹がきゅうっと痙攣してギィドはイった。

「い゛っ……」
「またイった。…………なぁ、俺の、ドコまで入るカナ?」

連続で極めて全身を紅く染め、為すがままに揺すられるギィドにシャルトーはうっそりと笑って、自身が収まったギィドの下腹を撫でる。
その言葉に不穏な気配を感じ、ギィドはなけなしの気力でシャルトーを睨もうとした、ところで――

「…………あぁ゛っ!?」

ぐんっ、と深く奥を突き上げられて、一瞬、意識が飛んだ。だらりと唾液が口からこぼれて、意識が戻ったギィドは己の醜態に顔に血を上らせて歯を食いしばろうとするが、また、ドチュっと奥まった場所を小突かれ身体がびくりと跳ねた。

「やめ゛、ろ゛っ! ……奥、おぐ、はっ……!」
「そんな顔して、止めれるわけっ……! ほら、イけよっ、俺のチンポで気持ちよくなって、イけっ……!」
「ぐ、そ……ぉ、お゛、お゛~~~っ!!」

乱暴に腹を突き回されながら、ビシャりと腹の中に精液をぶちまけられる。ソレすら脳味噌が気持ちが良いという言葉で溢れかえる。
だがシャルトーに犯されて快楽を得ているという事実が認められなくて。抗う故に腹の中を脈動しながら往復するシャルトーの存在を、より意識するハメになっていることにギィドは気がつかない。
いっその事、快感に身を委ねてしまえば良い。しかしそれはシャルトーに負けるような気がするというプライドが無駄に邪魔をする。
結局どっちつかずで余計に己の醜態を認識して、羞恥で憤死しそうだ。

「く、ぅ……」
「あ゛ー……、やばい。全然、止めれナイ、かも……」

普通は出したら少しは冷めるもんだ。
しかしギィドの胎へ収めたまま、シャルトーが中に出した精液を塗り付けるようにゆらゆらと腰を揺らす。そんな事しても本来は気持ちが悪いはずなのに、段々と固さを取り戻してゆくシャルトーのペニスにぞりぞりと腹の中を擦られるのがどうしようもなく気持ちが良い。
いつの間にか、動きが突き入れる律動へと変わってゆくのに比例して、ギィドの足先が伸び、揺すられる動きに合わせて腰が揺れる。ぱつぱつとシャルトーの腰が当たって尻が弾かれるその衝撃にすら疼く快感を得ていた。

「んっ、ぐぅッ……っ……! ぅ゛、ふっ、だ、駄目、駄目だっ、う゛、ん゛っ、ん゛っ、ん゛ッ……!」
「入りそう……? 今日は、無理かナ……、わかるっ? アンタの奥、物欲し、そうに、俺の先っぽ、吸い付いてるっ……!」

くちゅ、くちゅうっ、と腹の中で、先を暴こうとするペニスとソレを強請る音がする。
もう、持たない。
ソコだけは許しては駄目だ。
がらがらと自分の中の何かが崩れてしまう予感がして、やめろ、と止めるはずの腕はみっともなくシャルトーの腕にしがみ付いている。

「お゛っ……ぉ゛ぉ……」
「……っ!」

シャルトーがギィドの腹へと手を伸ばしたかと思えば、手のひらでぐうっと外から圧迫して、ほんの少しだけペニスの先が結腸に食い込んだ。
その刺激にとうとうギィドの意識は限界を迎えた。
痙攣しながらメスイキをする。ギィドが射精を伴わない絶頂に達していることを、胎のうねるような締め付けで知りながら、シャルトーは愉悦に表情を歪めながら腹の中へ精液を注いだ。

「……だらしない顔。そんなに気持ちがイイ?」
「……ぁ」

シャルトーが上体を倒し、のし掛かって顔を近づけてくる。
押しつぶされて苦しい。しかしギィドにはもはや避けるだけの気力なんて物はなく、だらりと口から垂れた舌を甘噛みされて、脳が痺れた。ギィドの舌にシャルトーのソレが絡みく。ちゅうっと吸われ、舌を摺り合わされるだけで視界に小さく星が散った。
股を大きく開いた情けない格好でゆさゆさと揺すられて、奥へ、奥へと精液を擦り付けられる。それでも腹の中はまた快楽が弾け始める。
ベタベタとうっとうしいはずのシャルトーの手が、顎の裏の髭を逆撫でて喉が鳴る。肌を辿る指に身体がヒクつく。
落ち着くどころか、底なしの快楽に一体ドコまで沈めば終わりが見えるのか。
ギィドはもとより、シャルトー自身も己がどんな状態か上手く知覚出来てはいなかった。
今までとは比べものにならないくらい、征服欲と快楽を伴った射精だった。
目の前の獲物ギィドを捻じ伏せて貪って。縋り付かれながら、必死になってマーキングする獣のように種付けする雄の愉悦に浮かされる。
胎に出しているのは自分の方なのに、ギィドに触れる肌から何かが溶け出して、自分の中に流れ込んで混じってゆく感覚がする。それがたまらなく気持ちが良い。
ギィドのくるりと渦を巻いた胸毛の真ん中で、つんと立った乳首が目に留まる。きゅっと摘まめば、コッチも、と言うように胎内がキュウッとうねる。
求めるままに腰をぐっと押しつけてやればギィドが濁った嬌声を上げ、背中をしならせて感じ入る。その様子にますます興が乗る。
まるで己の為にあつらえた様だと思う。ギィドの胎がピタリと応えてくれる形へと変化しているような錯覚にシャルトーは陥りながら。

「ぃ……あ、あ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛――……!」
「っ、ふ、俺のだ、俺の……」

部屋の中に響く、ギシギシとベットが軋む音がまた大きくなりはじめる。


まだ、この奇妙な熱は冷めそうになかった。


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