窓野枠 短編傑作集 6

窓野枠

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戦いの舞

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 これは、昔々、遙か彼方銀河系の物語である。

 K惑星に住む山之内大介は、3歳の時、伯父山之内宗六に引き取られた。大介が12歳になると、加賀藩の名門大山道場に入門した。大介は天部の才がありみるみるうちに腕を上げ、将来は藩指南役に付くこと間違いなしと仲間から期待された。
 大介20歳の時、大介は師範大山新左衛門が総見をする稽古に挑んだ。彼は道場中央に立ち目をつぶり集中した。試合の相手は師範を上回る使い手と言われた大蔵鉄心犀であった。互いに対峙し緊迫する中、見守る観客も興奮した。審判の開始の声と共に試合が開始された。
「いざ」
 互いに発したその瞬間、二人は後ろに大きく飛び跳ね間合いを開けた。二人の視線の中央で火花が散り、周辺の土が二人の気迫に押され四方に飛び散った。鉄心犀はその刹那、素早く大介との間合いを詰めた。剣を大介の鼻先に突き刺そうとした瞬間、「お命頂戴」と呟いた。一瞬の間だった、鉄心犀の身体は瞬時にして粉砕した。霧状になった血しぶきが当たりに漂った。それを見た観客が悲鳴を上げ、場内は騒然となった。
「勝負あり」
 審判が声高らかに判定を下す。その判定を受けて師範が大介を見て言った。
「大介、見事な念だ」
 それから数日が経ち、大山新左衛門から手紙が届いた。
「このたびの試合の報告に関白様がいたく興味を持たれた。銀河武道大会に参加されるようにと申された」
 大介がニタリと笑った。
「ふふ、やっと関白に会えることになった。叔父上、悲願に近づきました」

 数日後、大介たちは銀河系第3惑星で行われる武道大会に出場することになった。城の広場に各惑星から選ばれた強者が集まっている。銀河系は広い、その中の強者どもが頂点を極める。4惑星年に1度行われる武道大会。どの強者も我こそはと野心に燃えていた。
 大介は叔父と共にこの武道大会を迎えた。
「叔父上、ついに、来ました」
「ああ、大介よ、これで成功すれば報われるぞ」
 そういった宗六は大介の肩を引き寄せた。大介と宗六は固く互いを抱きしめた。
「大介よ、これで、最後かも知れぬ。顔を見せてくれ」
 宗六は大介をじっと見つめた。

 ジャンジャンジャン、打楽器と半鐘の音が高らかに大合奏をする中、大介は念を集中した。この念こそが相手を破壊する超念力である。
「関白、いざ」
 大介は念力を集中した。関白の念は底知れない。これだけいる強者どもも関白を恐れ、取り入ろうとする。そして、その一歩がこの武道大会に出ることに他ならない。ここに集う強者共もその恐怖の権化関白の顔を一度は謁見しようとして集まっている。その関白の顔を見ることが出来る機会がこの武道大会である。祖父から聞かされていた大介はこの機会を待った。関白は超念力の持ち主で、周囲に念を張り、それがため、関白の周囲の時空が歪んで関白の顔を誰も知るものはいない。3歳の時、初めて叔父から秘密を明かされ今日に至った。父助三郎はこの関白の手に掛かって死んだのである。20年前、関白宋イエペスは銀河系を支配しようともくろんでいた。支配できない星はことごとく破壊してきた。それが、地球という星である。いくつとなく数えきれない銀河系がことごとく支配服従をしないという言う理由で消滅させられた。その爆発を逃れたのが叔父宗六の一族である。大介の父はその戦いの最前線の中で命を落とした。20億の人類の怨念を受けろ。叔父宗六は大介を連れ、銀河系の星、K惑星に辿り着いた。

「許さんぞ、宋イエペスめ」
 関白宋イエペスの出身の星は誰も知らない。奴に出身などという言葉はない。支配できなければ、惑星もろとも消滅させた非道な心の持ち主である。地球という星の、20億という知的生命体が死んだなんて、あいつには心の痛みも記憶もない。細菌を熱処理した程度しか思っていないのである。恐るべし宋イエペス。大介は歯を食いしばり、宋イエペスの身体を粉々にするイメージを描いた。奴の念に打ち勝つためには奴の身体、半径1メートル以内に入らなければならない。この武道大会に優勝した人間が唯一、関白の前で優勝の冠を頭に掛けられる。その瞬間をつかむにはこの武道大会で頂点に立つことである。
「はああああ」
 大介の想定イメージが感極まった。
 大介は武道大会会場に向かって歩み出した。

  *

 大介は予定どおり、武道大会において、競合を退け覇者の頂点に達した。
「大介、ダイスケ、だいすけ」
 大介コールが響く武道場で大介は観客から一斉に注目された。いよいよ宋イエペスの前に立つことが出来る。大介は玉座に座る宋イエペスの前に一歩一歩前進する。
「良いか、大介。宋イエペスは並外れた超念力者だ。大勢の力で惑星を支配してきただけの男ではない。大勢を従えさせるだけのパワーを備えている。侮ってはならんぞ」
 大介の脳裏に叔父宗六の声が何度となく復唱されてきた。大介はこの声と共に、超念力を鍛えてきた。
「良いか、お前の超念力で宋を抹殺することができるか出来ぬか、紙一重だ。お前の一撃を出して効果があるのは宋がお前の頭上に冠を掛ける一瞬だ。お前と宋イエペスが接触した瞬間、この機会しかない」
 叔父宗六の声がこだまする。大介が謁見の間に到着した。部下の警護はない。宋イエペスは絶対の自信があるのだ。謁見の間の中央に1メートル四方の絨毯が敷かれていた。従者が大介に歩み寄って囁いた。
「そこでひれ伏して待ちなさい」
「ひれ伏していては謁見できませぬが」
「お声を聞けるだけで幸せと思うが良い」
 それだけ言うと従者はその場にひれ伏した。そのとき、会場が大歓声に包まれた。宋イエペスが玉座を立って大介に近づいてきたのだ。足音が近づき、大介の頭上で音が止まった。
「大介とやら、こたびの活躍、大儀であったのう、覇者の冠を授けよう、面を上げるがいい」
 大介は顔を上げた。驚愕した。それは懐かしい顔、3歳の頃に見た父の記憶が蘇った。
「父上」
「おお、成長したの、大介、父はうれしいぞ」
 会場から大介、ダイスケ、だいすけ の歓声がわき起る。宋イエペスは大介は手を取り観衆に答えた。
「皆のもの、私の後継者だ」
 大介は宋イエペスにより善の精神を破壊された。かつて宋イエペスが前関白によって破壊されたように。

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