窓野枠 短編傑作集 13

窓野枠

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コブタは友だち2

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 掃除も終わった放課後の薄暗い廊下で雄たけびをあげる。教室よりエコーが効いて自分でも恐ろしくなる。そう言えば、なぜあたしはこの豚がお化けに思えないのだろう、と首をかしげて考える。かがんで豚の顔をのぞき込んだ。豚が顔をそらして幾分赤くなった気がした。よだれが垂れている。そらした視線の先を見た。
「てめえ、あたしのスカートの中をのぞいたなぁー」
 右手を握りしめ、豚の胴だか首だか分からない部分を思い切り殴りつけた。ブヒィー と豚は顔をゆがめ、2、3歩よろめいた。反撃はしてこない。至って大人しいお化けである。
 こんなにいじめているのに、こいつはなぜあたしに取りついているのだろう。ひょっとしてマゾかいなあ。いい加減、他のだれかに取りついてもらいたい。あたしに危害は与えないようだが、何の目的で取りついているのか皆目分からない。問い詰めても、こいつはブヒーとしか言わない。どうにもうっとおしい存在だ。まあ、こんな豚のお化けよりは、まだ役立たずの図書委員たちのほうが、話し相手になるだけまだましと思いつつ図書室に入る。
 ドアの引き戸を勢いよく開けると、由香里と知らない男子が親しく談笑していたようで、二人の笑い声がぴたりととぎれた。響子はこちらを見つめる二人を見つめ返した。何か気まずい雰囲気を感じた。エッヘンとせき払いをしてから声を出した。
「なんだ、由香里、もう来てたの」
 由香里がにっこり笑ってこちらを見た。
「ねえ、由香里、その子は?」
 聞かれて初めて由香里はきょとんとして首をかしげた。
「え、響子も知らないの? あんただれ?」
 何とも間の抜けた女である。そこを間髪を入れず、男が白い歯を見せながら響子を見つめながら言った。
「2年1組前沢大輔。よろしく」
 小気味のいい口調で言う歯が白く輝いていた。顔が褐色に焼けていて体もがっちりしているが、どこか優しそうなまなざしをしている。それにしてもよろしく、とはなれなれしいヤツだと響子は憤慨する。あたしゃ、先輩だぞ、と心でつぶやいた。しかし、イケメンに弱いあたしは作り笑顔で答えてしまう。
「あ、こちらこそよろしく」
「うわさに聞く美人ですね。お会いできて光栄です」
 生意気にもそんなことを言って、右手を響子の前に差し出してきた。
「あ、ありがとう。えぇー うわさって何なのぉ?」
 な、なんなんだ、こいつ、あいさつに握手をするなんて、と言いつつ響子は顔を真っ赤にし、体が一瞬だけ浮き上がり、震えながらゆっくり右手を出した。大輔が力強く響子の手を握り締めてきた。そして、手を離すと、右のほおにあろうことかいきなりキスをした。
「アアアアアアー」
 おまえ、何をするぅー 恐れ多くもこのあたしに、親にも幼少のころだけしか口づけをされていないというのに、こともあろうに、花も恥じらう乙女の年頃に、いきなり、キスとは何なんだ、こいつは? 響子の頭の中にジェット戦闘機数千機が爆音をあげ飛び交って、いっせいのせいで全機がはじけた。男ひでりの響子には刺激が強すぎた。
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