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第19章 純子の再生

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「室長、何か御用でしょうか?」
 植木が両腕を前に組みながらドアから姿を見せた。植木はとても穏やかな笑みを浮かべていた。
「あら、植木係長? な、なんか、いつもと雰囲気が違いません?」
 純子は植木の笑顔に吸い込まれそうになるくらい見つめた後、やっと純子はかすれた声を絞り出し答えた。今まで緊張していた純子の心が植木の笑顔を見て安心した。
 順子の不審な挙動を心配し、植木がさらに一歩を踏み入れた。純子の体が植木に向かっていきながら、両腕を植木に向かって伸ばしていた。純子は植木に抱きつこうとしている、と思った。
「いけない、やめて、今は昼よ、だめよ、ここは役所の室長室よ、やめて、何考えてるの? 潤子、やめてぇー」
 心の中で叫ぶ純子の差し出した腕を、植木はしっかりと両手で捕らえた。
「室長、大丈夫ですか? 昨晩のビールがまだ残っていますか? あんなにアルコールに弱い方とは存じませんでした……」
 植木から昨晩のことを言われても、純子には記憶がまったくなかった。
「すみません、年がいもなく飲みすぎたせいか、昨夜の記憶があまりなくて…… あたし、何かしでかしましたか?」
 純子は植木に対し、夜間の人格・潤子がきっとあんなことや、??なことを、誠実な植木にしたに違いない、と想像したら顔が紅潮してきた。それを間近に見た植木がさらに相好を崩した。
「あ、彼女、小山内さんって言いましたか? 彼女、室長の後輩ですって? そんな子がいらしたんですね?」
 純子は植木の放った言葉に耳を疑った。
「えっ? 昨晩、小山内さんも同席した?」
 純子の言葉を聞いた植木が驚いた顔をした。
「わたしも最初はタクシーの運転手かと思いましたけど、あんなかわいらしい子が後輩にいらしてうらやましいです。彼女が京王大に合格し、上京したとき、巡り合ったって、室長が喜んでお話してましたよ。うらやましいお話でした」
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