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第3話 カーストの頂点
しおりを挟む――舞踏会。
それは王侯貴族にとって、ひとつの戦場のようなものだ。
そこではマナーや礼節はもとより、何気ない会話のなかで知識や見識を披露したり、自身の美貌や連れそうパートナー、ダンスの腕前で力を示したり、貴族たちはありとあらゆる方法で周囲にマウントをとり、有力者との繋がりをつくり、王宮での自身の立場をあげんとする。
武力の代わりに知恵やコミュニケーション能力を競う場、とでも言おうか。
とにかく、ただ上流階級のもの同士が上品に笑いあい、ダンスを踊るだけの華やかな場所でないのは確かだ。
そして――
今日も王宮では、貴族同士の表向きでは華やかな、裏では血みどろなマウント合戦が繰りひろげられていた。
『あ、エドワードさまとミーナさまよ』
『何度見てもお似合いだわ』
『エドワードさまは今日も精悍でたくましく……ミーナさまは天使のようにお可愛らしいわね』
その実は本音だったり、お世辞だったり、皮肉だったりと違うが、そんな声が会場のあちこちからあがっていることからわかるように、現在この舞踏会場のカースト頂点に君臨しているのは、間違いなくこの二人。
「エドワード~? あたしかわい~?」
「ああ、世界一かわいいよ」
「えへへ、すっごくうれし~♡」
公爵令息エドワードと男爵令嬢ミーナのカップルであった。
(ま、言われなくてもわかってるけど)
エドワードに寄りかかりつつ舞踏会場を見回し、ミーナはほくそ笑む。
いまこの舞踏会場で一番の美女は、間違いなく自分であろう。
以前は目障りな女が――エミリア・ファーラットがいたが、あの邪魔な女もエドワードを手に入れる過程で消せた。だからもはやここに自分の敵はいない。自分こそが王国最高の美女なのだ。
いや、美しさだけではない。
公爵令息のエドワードとともに権力をも手中におさめた。もはや王族をのぞけば、国で一番偉いのも自分なのだ。
有象無象の貴族どもは、みな自分にひれ伏すべきだとミーナは本気で思う。
(まあそれを言うなら、本当は殿下がよかったんだけど~……)
エドワードに愛想を振りまきながらも、内心ではそんなことを思う。
この国には、クラウス・トラフォードという王太子が存在する。
クラウスは文武両道で眉目秀麗。淑女のみならず、同性からですらも憧れの的となっている完璧な王子だ。この国で一番の色男をあげろと言われれば、彼をおいてほかにはないだろうというぐらいの美丈夫である。
だが婚約者をつくらず、結婚適齢期にさしかかっても女の影もないため、色々な憶測が国中には流れている。
ねらっている令嬢は数しれずなのだが、どんなに美しい令嬢が言い寄っても、興味なさげにするだけなのだ。
もちろんミーナも彼をターゲットにしていたし、以前声をかけたことがあるのだが、まったく手応えはなかった。
国一番の美女である自分でさえ興味を向けられないのだから、おそらくクラウスは本当に女に興味がない――男が好きな同性愛者なのだろうとミーナは勝手に結論づけていた。
(まあ一番は誰にも手にいれられないんだから、エドワードが一番でいいわよね。今日は……来てないみたいだし)
王宮主催の舞踏会なのだが、クラウスの姿は見当たらなかった。
クラウスには数段劣るが、エドワードは公爵令息で顔もそこそこいい。クラウスがいないいまの舞踏会場では、ほぼほぼ一番と言ってもいいだろう。
しかしミーナが自分こそが世界の中心と言わんばかりに、エドワードとともに舞踏会場を我がもの顔で闊歩し、注目を一身に集めていたそのときだった。
『おお、なんとお美しい!』
『しばらくお見かけしないあいだに、さらに輝きが増したようだ』
『まるで女神さまみたいだわ』
そんなざわめきが耳に届いた。
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