神獣ヤクザ ~もふもふ神獣に転生した世話焼きヤクザと純粋お嬢の異世界のんびり旅~

和成ソウイチ

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93話 さらなる飛躍

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 俺はお嬢を自慢げに指し示したが、司書たちの反応はイマイチだった。
 驚きが強すぎて、半信半疑らしい。

 まあいい。
 それならばお嬢の力をさらに示すだけだ。

「お嬢」
「ヒスキさん?」
「こいつらはまだ、お嬢のお力を完全には理解していないようです」
「さっき『目覚めたのはお嬢のおかげ』とか復唱させていたような……」

 細けぇことはいいんです。

「ここはぜひ、お嬢の歌でわからせてやってください」
「わ、わからせるって。私はそんなつもりは」
「先ほどの現象はご覧になったでしょう。大量の本の音、本の文字がお嬢に流れ込みました。お嬢の力は、さらに高まっているはず。あのしおりのヤロウに、今度こそ認めさせるためにも、こいつらにお嬢の実力を示しましょう」

 俺の説得に、お嬢は周りを見た。目覚めた司書連中たちと目を合わせる。
 奴らは少なくとも、お嬢が只者ではないことは認識しているようだ。じっと、期待混じりの視線を向けている。

 お嬢はぎゅっと拳を握りしめた。
 それから、まるでステージに立ったアイドルのように、深くお辞儀をする。

 お嬢がゆっくりと呼吸を整える。それを見た俺は、司書連中に言った。

「お前ら、本を開け」
「え?」
「いいから開け。面白いモンを見せてやる」

 司書連中たちが言われたとおりにする。綺麗になった本たちは、まるでお嬢を称えるサイリウムに見えなくもない。

 お嬢が、歌い出した。

 直後、俺が思ったとおりの反応が起こる。
 司書連中たちが持った本たちが、再び輝きだしたのだ。
 俺の物語のときよりも、さらに鮮やかに、柔らかに、温かく。まさに会場を埋め尽くすサイリウム。お嬢を称える光。

 それらがお嬢の歌の抑揚に合わせて渦を巻き、お嬢の元に集束していく。
 聖女のスカーフが、その光をぐんぐん吸い取っていった。あれが本の力をお嬢に還元する役目を担っているのだろう。さすが聖女のお召し物だ。

 本からはさらに、音が響いた。
 お嬢の歌声に伴奏を付ける。

「こ、これは……」
「まさに聖女様の歌声……!?」
「こんな小さな少女が」

 呆気にとられた司書たちの声が聞こえてくる。俺は非常に気分が良かった。

 気分がいいのは俺だけではない。
 お嬢の表情は、司書連中たちの憧憬の眼差しを受け、さらに輝いた。

 ファンマがそっと俺のそばに寄って囁く。

『聖女様の力の源は、希望。皆から称えられ、敬われることで、その力を増す』
「まさにその通りの現象が起きているってことか」

 不敵に俺は笑う。
 これならば、誰にも文句は言わせない。
 こいつらをお嬢のシンパにすれば、お嬢の力は不動のものとなる。そこからさらに、この大図書館をお嬢のシマとして確立していくのだ。

 しおりのヤロウにも、レフテにも文句は言わせない。

 だからまずは――。

「おい、しおりのヤロウ!」

 俺は叫んだ。

「そこにいるんだろ? さあ、もう一度聞かせてもらおうか。お嬢が、聖女の服を身につけるに足る人物か否か!」

 同時に、歌が終わる。
 司書連中から自然と拍手が溢れた。

 その拍手に誘われるように、恐る恐るといった様子で、しおちゃんが現れた。
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