僕はもふもふ家族院の院長先生!!

和成ソウイチ

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3章 好奇心旺盛なサキは院長先生に興味津々

第11話 魔法を見たい、けど

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「すっかり気に入られたみたいだね、ユウキ」

 隣でヒナタが嬉しそうに言った。

「サキって結構気まぐれなところがあるから、興味のないことはぜんぜん、見向きもしないもの」
「失礼な。いくらウチだって、家族をほったらかすほど薄情じゃないぞ!」

 サキがむくれる。まだユウキの手を握ったままだった。興奮しているのか、手が温かい。それとも、これは自分の手の温かさなのだろうかとユウキは思った。

「家族、か」

 ユウキのつぶやきに、女の子ふたりはきょとんとした。
 話題を変える。

「そういえば、サキはすごい勢いで飛び出してきたけど、そんなに慌ててなにがあったの?」
「あー……」

 途端、気まずげに頬をかく。

「実はさっきまで、調べごとが行き詰まっててさあ。ひとりでうんうん唸っててもどうしようもないと思って、ちょっと外の空気を吸おうと思ったのさ」
「うんうん」
「で、扉に近づいたときに外の話し声に気づいて、『そういやもうすぐ新しい住人が来るって天使様が言ってたじゃん!』って思い出した」
「……それで、わーっとなって飛び出したってこと?」
「うむ!」

 胸を張る。それって普通のことなのだろうかとユウキは思った。
 ふと、気になることがあった。

「そういえば、僕が来ることは天使さまから聞いたの? 皆には姿が見えないって、天使さまは言ってたんだけど」

 ユウキとしては純粋な質問のつもりだったが、どうやらサキにとっては大事だったらしい。彼女の目つきが一気に変わった。

「ユウキ君。もしかして君は、天使様の御姿を直接その目で見たのか?」
「うん。ここに来る前に、森の中で。凄く綺麗な女の人で――」
「詳細ッ!」
「へ?」
「詳細! 詳細を求む!」

 正面衝突した直後と同じような勢いで、サキが飛びかかってきた。本日二度目。

「見た目は身長は体型はその他人類にない特徴はあるのかどうなのか!?」
「え? え? ちょ……」

 出逢った当初を超える圧力にたじろぎながら、とりあえずユウキは説明する。
 天使マリアの外見や物腰柔らかそうな様子を聞いたサキは、手を合わせて空を見上げた。

「ああ……ウチも天使様を見たい。お話ししたい」
「優しくて、面白い人だったよ。時々よくわからない仕草をしてたけど」
「ずるいぞユウキ君!」
「ごめん。けど、どうして天使さまは皆の前には姿を現せないんだろう」
「ああ、それは天使様の魔力が強すぎるからだろうね」

 事もなげにサキが答える。ユウキは首を傾げた。

「魔力? 魔力ってなに?」
「なんと。君は魔力を知らないというのか!?」

 うなずく。すかさず、ヒナタがフォローに入ってくれた。

「ユウキは別の世界から来た子なんだよ。魔力や魔法のことを知らなくても、仕方ないよ」
「ううむ。そういうものか」
「あの、さ」

 挙手をする。ドキドキして手汗が出てきた。

「もしかしてこの世界には魔法があるの……?」
「当然」
「どんな!? 見てみたい!」
「よーし言ったねユウキ君! そこまで言うのなら見せてあげようじゃあないかーっ!」

 お互い喜色に溢れた顔で向き合ったところ、ヒナタが間に入る。

「だーめ。『ミオ』に言われてるでしょ。魔法は大人にならないと使っちゃダメだって」
「むうーっ。しかしぃー」

 頬を膨らませるサキ。ユウキが少し残念そうにしているのを見て、彼女は怒濤の説明を始めた。

 ――いわく、この世界【レフセロス】において魔法とは、森羅万象、あらゆることを具現化する技術なのだという。
 ただし、実際に使用を許された魔法はごくわずか。

 魔法の使用は『免許制』で、その上15歳になるまでは免許の取得も魔法の使用も禁止という制約があるらしい。

 使用できる魔法は書物スクロールの形で交付され、所持しているスクロール以外の魔法を使ってはダメなのだそうだ。
 それもすべて、魔法に無限の可能性があるためなのだ。

 ……ここまで、まさに立て板に水の勢いで喋ったサキ。難しい話題にはついていけないのか、ヒナタは近くでクルクルと踊り始めていた。

 一方のユウキは、真剣な表情で聞き入っている。サキは気を良くしていた。

「しかし、しかしだよっ。それだけ素晴らしい魔法を、子どもは使っちゃダメなんてあんまりじゃないか! ウチだって派手な魔法を使いたい! 楽しそう!」
「その気持ち、わかるよ」
「わかってくれるか院長よ! じゃあその権限をもって、今日からもふもふ家族院での魔法使用を解禁して――」
「それは、また別の話じゃないかな。大人にならなきゃダメって決まりは守らないと」
「ぬううんっ! 無念不本意!」

 難しい言葉を知ってて凄いなあと思いながら、ユウキは言った。

「僕が元いた世界では魔法なんてなかったから、すごく興味深いよ」
「ふーむ」

 ふと、サキが顎に手を当てた。

「ウチが思うに、ユウキ君の身体にはまだ秘密が隠されているのではないかね?」
「へ?」

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