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4章 みんなの母親アオイはふんわりで怖い
第18話 消えたスコーン
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ユウキの姿勢にふわりと微笑み、ゆるっと敬礼を返すアオイ。
「あら?」
その表情が、ふと、怪訝に染まる。
彼女の視線は、フードカバーを被されたおやつに向いている。
ヒナタが目を輝かせた。
「わ。今日はスコーンなんだね。楽しみ!」
「ええ。上手く焼けたから楽しみにしてて欲しいのだけど……あらら?」
アオイの眉がハの字になる。すらりとした指先が、ゆったりとした仕草でスコーンの数を数える。ひとつ、ふたつ、みっつ――。
ユウキは、「これがスコーンかあ。元の世界でも聞いたことあるよ」とつぶやきながら、一緒に数を数える。
フードカバーに守られたお皿、そこに乗っている丸いスコーンの数は、全部で13個。
ヒナタが言う。
「いつもより1個多いね。作り過ぎちゃったの?」
「いいえー。今日は全部で14個作ったの。ひとり2個ずつ。ユウキちゃんが来るって聞いてたからー」
「……1個、行方不明?」
ユウキ、ヒナタ、アオイは顔を見合わせる。
自然、残ったひとりに皆の視線が向かう。
サキは明後日の方向を向きながら、憤慨したように言った。
「ウチはつまみ食いなんてしてないよ! レン君じゃあるまいし!」
「そうよねえ……」
「きっと、ほら、あれさ。ミオ君がついつい食べてしまったのではないか? ずっと自室で勉強してると頭が疲れるし。そして疲れた頭には甘い物が良いと決まっているさ。しかも、それはアオイお手製の最高スコーンだからね!」
ヒナタが目を細める。
「つまみ食い? レンじゃなくて、あのすごく決まりに厳しいミオが?」
「う……」
「あーやしーぞー」
迫るヒナタの目を、頑なに見ようとしないサキ。強ばった笑みを貼り付けたままだ。
ユウキは間に入った。
「まあまあ。いきなり疑ったらかわいそうだよ」
「おおっ、ユウキ君……!」
「こういうのは、ちゃんと原因を調べてからじゃないと。病院の先生も、色々な可能性を調べてから、『こうだ』って決めてたからさ」
にっこり笑いながらサキを振り返る。同じくにっこり笑い返した寝癖少女に言う。
「その代わり、ちゃんと原因がわかったら謝ってね。サキ」
「無論だ! ――って、んん? ユウキ君、実は結構な割合でウチのこと疑ってる?」
「僕はもふもふ家族院の院長先生ですから」
腰に手を当てると、サキはむつかしい顔をした。
ユウキは顎に手を当てた。
「例えばさ、スコーンに魔法がかかって、ひとりでに旅に出たってことはないのかな?」
「実に夢のある推測だね」
「ダメかな? 魔法があるから、そういうこともあるのかなって思ったのだけど」
「ユウキ君は本当に純粋なのだな。……うー、むー。院長先生君にこれ以上夢推理させるのも……むぅうぅ……ええい、よし!」
ひとり唸っていたサキが、意を決して口を開きかけたとき。
「サキちゃん」
アオイが呼んだ。
サキが言葉を飲み込む。彼女の目の前にいたユウキも口をつぐんだ。隣のヒナタは「うわっちゃあ」と小さく小さくつぶやいた。
凍り付いたキッチンで、再度、アオイがサキを呼ぶ。
三人は、恐る恐る振り返った。
踏み台に乗り、キッチンの上の棚を開けたアオイの姿があった。
『のんびりお母さん』は微笑んでいる。ユウキは、『笑ってるのに笑ってない人』を初めて見た。
「これはどういうことかしら?」
いつものとは違う、ハキハキした口調でアオイが問う。
彼女の手には、小皿に乗った1個のスコーンがあった。
アオイが踏み台から降りる。
小皿に載ったスコーンは、他と違ってしなしなになっていた。色もちょっとだけ濃くなっている。
まるで、何かを上からかけてしまったかのように。
サキの額に、見る見るうちに冷や汗が噴き出してくる。
「あ、いや……それはぁ……」
「ん? なぁに?」
「えっとぉ、その。き、きっとミオ君が――」
「……」
「あ、はい。ウチです」
「それだけ?」
「……うぇ?」
「そ・れ・だ・け・ですか?」
「本当にッ、申し訳ありませんでしたぁあぁっ!!」
その場に伏せて謝罪するサキ。
この世界でも土下座が存在するんだと圧倒されながら、ユウキは思った。
――アオイ、怒らせたら怖い子だったんだね。
「サキちゃん!!」
「うわああああん、ごめんなさーい!!」
そう、強く思った。
「あら?」
その表情が、ふと、怪訝に染まる。
彼女の視線は、フードカバーを被されたおやつに向いている。
ヒナタが目を輝かせた。
「わ。今日はスコーンなんだね。楽しみ!」
「ええ。上手く焼けたから楽しみにしてて欲しいのだけど……あらら?」
アオイの眉がハの字になる。すらりとした指先が、ゆったりとした仕草でスコーンの数を数える。ひとつ、ふたつ、みっつ――。
ユウキは、「これがスコーンかあ。元の世界でも聞いたことあるよ」とつぶやきながら、一緒に数を数える。
フードカバーに守られたお皿、そこに乗っている丸いスコーンの数は、全部で13個。
ヒナタが言う。
「いつもより1個多いね。作り過ぎちゃったの?」
「いいえー。今日は全部で14個作ったの。ひとり2個ずつ。ユウキちゃんが来るって聞いてたからー」
「……1個、行方不明?」
ユウキ、ヒナタ、アオイは顔を見合わせる。
自然、残ったひとりに皆の視線が向かう。
サキは明後日の方向を向きながら、憤慨したように言った。
「ウチはつまみ食いなんてしてないよ! レン君じゃあるまいし!」
「そうよねえ……」
「きっと、ほら、あれさ。ミオ君がついつい食べてしまったのではないか? ずっと自室で勉強してると頭が疲れるし。そして疲れた頭には甘い物が良いと決まっているさ。しかも、それはアオイお手製の最高スコーンだからね!」
ヒナタが目を細める。
「つまみ食い? レンじゃなくて、あのすごく決まりに厳しいミオが?」
「う……」
「あーやしーぞー」
迫るヒナタの目を、頑なに見ようとしないサキ。強ばった笑みを貼り付けたままだ。
ユウキは間に入った。
「まあまあ。いきなり疑ったらかわいそうだよ」
「おおっ、ユウキ君……!」
「こういうのは、ちゃんと原因を調べてからじゃないと。病院の先生も、色々な可能性を調べてから、『こうだ』って決めてたからさ」
にっこり笑いながらサキを振り返る。同じくにっこり笑い返した寝癖少女に言う。
「その代わり、ちゃんと原因がわかったら謝ってね。サキ」
「無論だ! ――って、んん? ユウキ君、実は結構な割合でウチのこと疑ってる?」
「僕はもふもふ家族院の院長先生ですから」
腰に手を当てると、サキはむつかしい顔をした。
ユウキは顎に手を当てた。
「例えばさ、スコーンに魔法がかかって、ひとりでに旅に出たってことはないのかな?」
「実に夢のある推測だね」
「ダメかな? 魔法があるから、そういうこともあるのかなって思ったのだけど」
「ユウキ君は本当に純粋なのだな。……うー、むー。院長先生君にこれ以上夢推理させるのも……むぅうぅ……ええい、よし!」
ひとり唸っていたサキが、意を決して口を開きかけたとき。
「サキちゃん」
アオイが呼んだ。
サキが言葉を飲み込む。彼女の目の前にいたユウキも口をつぐんだ。隣のヒナタは「うわっちゃあ」と小さく小さくつぶやいた。
凍り付いたキッチンで、再度、アオイがサキを呼ぶ。
三人は、恐る恐る振り返った。
踏み台に乗り、キッチンの上の棚を開けたアオイの姿があった。
『のんびりお母さん』は微笑んでいる。ユウキは、『笑ってるのに笑ってない人』を初めて見た。
「これはどういうことかしら?」
いつものとは違う、ハキハキした口調でアオイが問う。
彼女の手には、小皿に乗った1個のスコーンがあった。
アオイが踏み台から降りる。
小皿に載ったスコーンは、他と違ってしなしなになっていた。色もちょっとだけ濃くなっている。
まるで、何かを上からかけてしまったかのように。
サキの額に、見る見るうちに冷や汗が噴き出してくる。
「あ、いや……それはぁ……」
「ん? なぁに?」
「えっとぉ、その。き、きっとミオ君が――」
「……」
「あ、はい。ウチです」
「それだけ?」
「……うぇ?」
「そ・れ・だ・け・ですか?」
「本当にッ、申し訳ありませんでしたぁあぁっ!!」
その場に伏せて謝罪するサキ。
この世界でも土下座が存在するんだと圧倒されながら、ユウキは思った。
――アオイ、怒らせたら怖い子だったんだね。
「サキちゃん!!」
「うわああああん、ごめんなさーい!!」
そう、強く思った。
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