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4章 みんなの母親アオイはふんわりで怖い
第17話 前向き勉強、院長先生
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それからユウキたちは、皆で力を合わせて洗濯物を取り込み、片付けた。
もふもふ家族院にはすでに6人の少年少女がいるということで、洗濯物の量もそれなりに多い。
家族院がある聖域内は、いつも心地の良い気候らしい。洗濯物が気持ちよく乾くのはいいことだとユウキは思った。
「ユウキ、畳むのうまいね」
ふと、ヒナタが言う。アオイたちの見よう見まねで、あまり深く考えずに手を動かしていたユウキは、「そうなのかな?」と応えた。自分ではよくわからない。
アオイもうなずく。
「ちょっと教えただけなのにー、すぐにできるようになるのはすごいですよぉ。ユウキちゃん」
「それじゃあ、アオイたちの教え方が上手いからだね!」
「あっはっは。ユウキらしーい」
ヒナタが笑う。
一方のサキはなにやらむつかしい顔をしていた。
「いや……なかなか問題は深いかもしれないよ。ユウキ君は異世界の住人だ。共通点は多いとはいえ、ウチらの衣服の構造を瞬時に把握し、分別し、適切に素早く折りたたむ技術など、特筆すべきことだ。これはきっと、いや絶対に、ユウキ君の秘められた能力のおかげに違いない。なので早急に調査を――」
「そういうのは、サキが上手に畳めるようになってから言いなよー」
ユウキはサキを見る。
彼女の前には、数着の上着が並べられていた。まるで今脱ぎ捨てたような、「ぐちゃあ」という擬音がぴったりくる有様である。
サキは表情を引き締めた。
「人類と人類の間には得意不得意という厳然とした断絶がある」
「サキはやっぱり難しい言葉を知ってるよね。すごいや」
ユウキが褒めると、サキはいそいそと畳む作業に戻った。さっきよりもだいぶ丁寧な手つきである。
「そういや、サキが洗濯物の取り込みを手伝うなんて、珍しいね」
ふと、ヒナタが言った。皆の視線が集まる。
サキは壁の方を見て言った。
「そうだったかの?」
「もしかして、またなにかやらかしたの?」
「そーんなわけはないじゃないか。ははは。ユウキ君が作業を手伝うのなら、ウチも一緒に作業すべきと思っただけだよ。はははーっ!」
視線を逸らしたまま言う。
ユウキは気にせず、洗濯物を畳む作業を続けた。楽しかった。
ヒナタが肘でユウキをつつく。
「覚えておいた方がいいよ。サキ、すごく頭がいいけど、こういうときはなにか隠してるんだ」
「そうなの?」
「うん。まあ、わたしは『しょーがないなあ』って思うくらいだけど、ユウキは家族院の院長先生だから、ちゃんと覚えておいた方がいいかもね」
「わかった。ありがとう」
サキに視線を向ける。
「ねえサキ。隠し事はよくないと思うな。僕」
「ファッ!?」
「なにか大変なことがあるなら、皆でなんとかしようよ」
「ファッファッ!?」
「……ユウキ。すごいね。さすが院長先生」
動揺するサキに、大きな目を丸くするヒナタ。
そんな家族の様子を見て、アオイはコロコロと笑っていた。
結局、この場では隠し事がなんなのか、わからずじまいだった。
――洗濯物の取り込みを終え、再びキッチンに戻る。
「よし! 僕、頑張るよ。アオイ!」
気合いを入れてキッチン前に立ったはいいものの、ユウキはすぐに「うーん」と唸った。
ネットやテレビなどでキッチンの様子は知っていたが、実物を前にすると圧倒される。色々な形をした調理器具が、綺麗に整頓されて並べられている。必要なものが必要なときに手に取れるよう、棚や壁収納に工夫が施されている様は、ユウキにとって一種の芸術であった。
このすごく綺麗な空間に、僕が手を入れるのか……!
「よ、よろしくお願いします」
「ユウキちゃん、そんなに緊張しなくてもいいんだよー?」
隣でアオイが首を傾げている。ユウキは言った。
「実際キッチンの前に立ったら、何か『すごいな』って思って。こんなに綺麗で、整っているんだね」
「ありがとうー……? ユウキちゃん、本当に異世界から来た人なんだねー」
アオイは調理器具のひとつに、そっと手を触れた。
「道具は大切だよー。家族院のみんなをお腹いっぱいにするために、このコたちの力が絶対に必要だからー。だからアオイはね、ありがとうの意味も込めて、このコたちを大事にしているの」
「おお」
「家事をするときに一番大事なのは、その気持ちかも……なんちゃってー」
ちょっと恥ずかしそうにアオイは舌を出して笑った。
ぜんぜん恥ずかしくない、むしろ素晴らしいことだ――という気持ちを込めて、ユウキは敬礼した。
「よろしくお願いします。アオイ先生!」
もふもふ家族院にはすでに6人の少年少女がいるということで、洗濯物の量もそれなりに多い。
家族院がある聖域内は、いつも心地の良い気候らしい。洗濯物が気持ちよく乾くのはいいことだとユウキは思った。
「ユウキ、畳むのうまいね」
ふと、ヒナタが言う。アオイたちの見よう見まねで、あまり深く考えずに手を動かしていたユウキは、「そうなのかな?」と応えた。自分ではよくわからない。
アオイもうなずく。
「ちょっと教えただけなのにー、すぐにできるようになるのはすごいですよぉ。ユウキちゃん」
「それじゃあ、アオイたちの教え方が上手いからだね!」
「あっはっは。ユウキらしーい」
ヒナタが笑う。
一方のサキはなにやらむつかしい顔をしていた。
「いや……なかなか問題は深いかもしれないよ。ユウキ君は異世界の住人だ。共通点は多いとはいえ、ウチらの衣服の構造を瞬時に把握し、分別し、適切に素早く折りたたむ技術など、特筆すべきことだ。これはきっと、いや絶対に、ユウキ君の秘められた能力のおかげに違いない。なので早急に調査を――」
「そういうのは、サキが上手に畳めるようになってから言いなよー」
ユウキはサキを見る。
彼女の前には、数着の上着が並べられていた。まるで今脱ぎ捨てたような、「ぐちゃあ」という擬音がぴったりくる有様である。
サキは表情を引き締めた。
「人類と人類の間には得意不得意という厳然とした断絶がある」
「サキはやっぱり難しい言葉を知ってるよね。すごいや」
ユウキが褒めると、サキはいそいそと畳む作業に戻った。さっきよりもだいぶ丁寧な手つきである。
「そういや、サキが洗濯物の取り込みを手伝うなんて、珍しいね」
ふと、ヒナタが言った。皆の視線が集まる。
サキは壁の方を見て言った。
「そうだったかの?」
「もしかして、またなにかやらかしたの?」
「そーんなわけはないじゃないか。ははは。ユウキ君が作業を手伝うのなら、ウチも一緒に作業すべきと思っただけだよ。はははーっ!」
視線を逸らしたまま言う。
ユウキは気にせず、洗濯物を畳む作業を続けた。楽しかった。
ヒナタが肘でユウキをつつく。
「覚えておいた方がいいよ。サキ、すごく頭がいいけど、こういうときはなにか隠してるんだ」
「そうなの?」
「うん。まあ、わたしは『しょーがないなあ』って思うくらいだけど、ユウキは家族院の院長先生だから、ちゃんと覚えておいた方がいいかもね」
「わかった。ありがとう」
サキに視線を向ける。
「ねえサキ。隠し事はよくないと思うな。僕」
「ファッ!?」
「なにか大変なことがあるなら、皆でなんとかしようよ」
「ファッファッ!?」
「……ユウキ。すごいね。さすが院長先生」
動揺するサキに、大きな目を丸くするヒナタ。
そんな家族の様子を見て、アオイはコロコロと笑っていた。
結局、この場では隠し事がなんなのか、わからずじまいだった。
――洗濯物の取り込みを終え、再びキッチンに戻る。
「よし! 僕、頑張るよ。アオイ!」
気合いを入れてキッチン前に立ったはいいものの、ユウキはすぐに「うーん」と唸った。
ネットやテレビなどでキッチンの様子は知っていたが、実物を前にすると圧倒される。色々な形をした調理器具が、綺麗に整頓されて並べられている。必要なものが必要なときに手に取れるよう、棚や壁収納に工夫が施されている様は、ユウキにとって一種の芸術であった。
このすごく綺麗な空間に、僕が手を入れるのか……!
「よ、よろしくお願いします」
「ユウキちゃん、そんなに緊張しなくてもいいんだよー?」
隣でアオイが首を傾げている。ユウキは言った。
「実際キッチンの前に立ったら、何か『すごいな』って思って。こんなに綺麗で、整っているんだね」
「ありがとうー……? ユウキちゃん、本当に異世界から来た人なんだねー」
アオイは調理器具のひとつに、そっと手を触れた。
「道具は大切だよー。家族院のみんなをお腹いっぱいにするために、このコたちの力が絶対に必要だからー。だからアオイはね、ありがとうの意味も込めて、このコたちを大事にしているの」
「おお」
「家事をするときに一番大事なのは、その気持ちかも……なんちゃってー」
ちょっと恥ずかしそうにアオイは舌を出して笑った。
ぜんぜん恥ずかしくない、むしろ素晴らしいことだ――という気持ちを込めて、ユウキは敬礼した。
「よろしくお願いします。アオイ先生!」
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