追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~

和成ソウイチ

文字の大きさ
14 / 77

第14話 森林探索の目的

しおりを挟む
 ――レオンさんといったん別れてから、四日が経過した。

 俺はリーニャとともに、森の中をあちこち歩き回っていた。
 目的はいくつかある。

「主様。あっちに珍しい植物があるよ」
「お。どれどれ……えーと、この花と葉っぱの特徴は、ルケミア草か?」
『次のページのアルルカ草ではありませんか?』
「むむ、本当だ」

 ――目的のひとつめは、レオンさんから譲り受けた魔法の植物図鑑を片手に、フィールドワーク的な観察を行うこと。

 アルマディアが言うように、【楽園創造者】の力はイメージが大事。より詳細でバリエーション豊かな楽園を創るためには、いろいろな知識が必要。
 つまりは、お勉強だ。
 これが意外と楽しい。

 魔法の植物図鑑は、さほど重くないので持ち運びしやすい上、俺が知ってる紙の本よりも検索機能が段違いに高いので、すぐに目的のものを調べられる。例えるなら文字入力不要のスマホ……いや、某国民的ゲームのなんとか図鑑みたいな感じか。
 転生前はひたすらPCの前にかじりついて仕事をする生活だったから、こうして自分の足と目で調べ、学ぶ作業はとても充実感がある。

 もっとも、転生後に培ったスカウト能力も似たような作業の繰り返しだったから、ある意味、慣れ親しんでたというのも大きいだろうな。

 それに、今は俺の中にアルマディアもいる。俺が見聞きしたものは彼女も覚えているのだ。もしうっかり忘れてしまっても、アルマディアなら適切にフォローしてくれる。まるで優秀なサポートAIだ。まんまゲームの世界である。
 あ、いや。AIなんて言ったら彼女に失礼か。すまん。

 ――話を戻して、ふたつめの目的。

【楽園創造者】の力で、荒れた森を元通りにすることだ。
 勇者スカル・フェイスの尻拭い、と言った方が正確かもしれない。

 いつぞや好き放題暴れた彼らのせいで、カリファ聖森林はところどころ、地面がむき出しになっていたり、大穴が空いてしまったり、焦土と化していたりしている場所がある。
 それを、楽園創造で再び活性化させるのだ。

 こっちは難しい。なにせ、俺は元の植生を知らない。何度か失敗もした。
 例えば、周りは樹と苔ばかりの場所に、ぜんぜん雰囲気の違うキラキラの花畑を創ってしまった、とか。

 植物だって生き物だ。彼らは彼らの居場所で、彼らのルールで生きている。
 キラキラ花畑は『ラクター・パディントンが想像する楽園』であって、ここの植物たちにとっての楽園では必ずしもないはずだ。
 難しい。けど魔法の植物図鑑で知識を仕入れていけば、いずれ森に優しい楽園を創れるようになると思う。
 森を生き返らせる。
 そういう目に見える目標があるのは、楽しい。

 ――そして、みっつめの大きな目的。

「アルマディア。今、?」
『最大GPジーピー143、残り86。レベルは7といったところですね。グラフを表示しますのでご確認ください』

 アルマディアがそう告げると、俺の視界隅に円形のグラフと各種数値が現れる。
 FPSプレイヤー視点のゲームの体力ゲージみたいな奴だ。コレこそまんまゲームである。

 GPとは『神力』のこと。俺が楽園創造等に使える限界値と残りを可視化したものだ。確かガーデンポイントとゴッドポイントをかけている、とか言ってたな。
 そしてレベルは熟練度的な意味らしい。この値が高くなればなるほど、より大規模で強力な楽園を創ったり、神力を魔法として使えるようなったりする、と。

 ちなみにGPもステータス表示も、皆アルマディアが考案し、作ったものである。

 きっかけは俺のぼやき――「自分の限界が目に見えたらやりやすいのになあ。ゲームみたいにさ」――をアルマディアが真に受けたから。
 俺と一体化した女神は、どうやら俺の転生前の記憶も参照できるらしい。で、俺が昔ハマっていたゲームの記憶を引っ張り出して、アレンジしたのだとか。
 なにそれ恥ずかしい。

 もちろん、俺の神力限界値なんてバッチリ把握済み。『モニターは任せてください』と嬉しそうに言っていた。

 つーかさ。
 なに現代日本の知識にしれっと馴染んでるんですか女神様。ぜんぜん違和感ないんだけどナニコレ。おかげで俺もすっかりノリノリだよまったく。

 とにかく。
 このステータス表示のおかげで、俺は自分の限界と成長を数値で確認できるようになった。
 ステータスは、さまざまな要因で上昇するとアルマディアは言う。

 新しい楽園の創造。
 未知なる知識の習得。
 あるいは、俺自身の精神的な成長。

【楽園創造者】として生きていく上でのあらゆることが、俺の強さに繋がる。
 カリファ聖森林の探索も、その一環。
 これがみっつめの目的だ。

 これほど充実感を覚えた日々は記憶にない。
 改めて、アルマディアには感謝しないといけないな。

「ねえねえ主様」

 ……しばらくぼんやりしていたようだ。リーニャに袖を引かれて振り返る。

 ちなみに、リーニャや他の人たちのステータスを見ることはできない。元々が勝手に作った数値だから当然と言えば当然。『いずれは他の人々のステータス表示もできるとよいですね』とやっぱり嬉しそうにアルマディアは言っていた。

 気を取り直してたずねる。

「どうしたリーニャ」
「向こうに生娘きむすめがいるよ」
「……!?!!?」
「食べる? リーニャ狩ってこようか?」

 食べません。


しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

最強付与術師の成長革命 追放元パーティから魔力回収して自由に暮らします。え、勇者降ろされた? 知らんがな

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
旧題:最強付与術師の成長革命~レベルの無い世界で俺だけレベルアップ!あ、追放元パーティーから魔力回収しますね?え?勇者降ろされた?知らんがな ・成長チート特盛の追放ざまぁファンタジー! 【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】  付与術のアレンはある日「お前だけ成長が遅い」と追放されてしまう。  だが、仲間たちが成長していたのは、ほかならぬアレンのおかげだったことに、まだ誰も気づいていない。  なんとアレンの付与術は世界で唯一の《永久持続バフ》だったのだ!  《永久持続バフ》によってステータス強化付与がスタックすることに気づいたアレンは、それを利用して無限の魔力を手に入れる。  そして莫大な魔力を利用して、付与術を研究したアレンは【レベル付与】の能力に目覚める!  ステータス無限付与とレベルシステムによる最強チートの組み合わせで、アレンは無制限に強くなり、規格外の存在に成り上がる!  一方でアレンを追放したナメップは、大事な勇者就任式典でへまをして、王様に大恥をかかせてしまう大失態!  彼はアレンの能力を無能だと決めつけ、なにも努力しないで戦いを舐めきっていた。  アレンの努力が報われる一方で、ナメップはそのツケを払わされるはめになる。  アレンを追放したことによってすべてを失った元パーティは、次第に空中分解していくことになる。 カクヨムにも掲載 なろう 日間2位 月間6位 なろうブクマ6500 カクヨム3000 ★最強付与術師の成長革命~レベルの概念が無い世界で俺だけレベルが上がります。知らずに永久バフ掛けてたけど、魔力が必要になったので追放した元パーティーから回収しますね。えっ?勇者降ろされた?知らんがな…

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...