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クリスマスの雷
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どこもかしこも、雪だらけです。屋根の上、道路、ドアの前、車の上。
水道管が凍って破裂したと大騒ぎになり、車が滑って電柱にぶつかったとニュースでアナウンサーが深刻そうな顔で言っています。
ストーブを点けてもどこか寒々しく、灯油が無くなったから買いに行けば、ガソリンスタンドは大行列で灯油もガソリンも売り切れだと大人は困った顔をしていました。
学校は休校で、もっくんもはっちゃんもとんとんも、給水車まで水をもらいに並びに行っていました。
そこに、ライが来ました。
長い行列に戸惑うような顔をしながら歩いて来ると、もっくんたちの方にに笑顔を浮べながら近付いて来ました。
「よう!ホワイトクリスマスだな!」
ライは鼻歌を歌いそうになりながら言いましたが、もっくんたちの顔色が冴えないのに気付いて眉を寄せました。
「どうした?雪合戦はしないのか?雪だるまは?」
はっちゃんは溜め息をついて、ついでにはなをすすりあげました。
「寒すぎてカゼひいちまったよ」
「雪が積もると大変なんだね。電車もバスも動かないんだって。知らなかったよ」
もっくんも寒そうに肩をすぼめて苦笑します。
「ガソリンも灯油もないし、食料品も売り切れで、水も出ないしさ。皆困ってるもんな」
とんとんも、手をこすり合わせながら口を尖らせました。
ライは、あんなに楽しみにしていたのにどういう事かと思いましたが、周りを見回してみて、困ったような顔をしている人がほとんどなのに気付き、どうしたらいいのか困り果てました。
「水、運ばないといけないから」
「だから今日は遊べないんだ」
「またな」
ライを置いてもっくんたちは行ってしまい、ライは泣き出しそうな気分でその場から走り去り、天界に戻りました。
そして制御室へと行ってみると、係の天使たちが慌てて制御盤を操作していました。天界も地上も大混乱です。
それを見てオロオロしているライの頭に、カミナリが落ちました。
「この、バカモンが!!」
校長先生でした。
「ヒイッ!」
ライは飛び上がりました。
「お前は何という事をしたのかわかっているのか!」
「オレ、こんな事になるなんて知らなくて。ただ、雪が降ったら喜ぶだろうと思って」
校長先生は溜め息をつき、ライに言い聞かせました。
「どうなるかわからなかったと言ったな。そうだ。知らなかったからで済まない事もある。知らないせいで誰かを苦しめる事もある。誰かを誰かを泣かせる事もある。だから勉強するんだよ、ライ。わかるか」
ライは考えました。
「字が書けて、ちょっと計算もできればいいと思ったけど、そうじゃないんですね」
「そうだ」
「ごめんなさい」
ライは、心から反省して、頭を下げました。
「これからは勉強をさぼりません」
「うむ。しっかり勉強しなさい」
校長先生は、わあわあと泣くライの頭を撫でました。
それからライは、真面目に勉強するようになりました。勉強は相変わらず、面白くないし、飽きて来ます。それでも一生懸命にがまんして勉強をすると、今度は、知らなかった事が色々と知れて、楽しくなってきました。
どうして空は青いのか。
どうして花は咲くのか。
どうして星は動くのか。
知ればまた知らない事が増え、それをまた知る。
勉強って、面白い。ライはそう思いました。
そうしてライは、友達を困らせてしまった事を心から後悔したのでした。
水道管が凍って破裂したと大騒ぎになり、車が滑って電柱にぶつかったとニュースでアナウンサーが深刻そうな顔で言っています。
ストーブを点けてもどこか寒々しく、灯油が無くなったから買いに行けば、ガソリンスタンドは大行列で灯油もガソリンも売り切れだと大人は困った顔をしていました。
学校は休校で、もっくんもはっちゃんもとんとんも、給水車まで水をもらいに並びに行っていました。
そこに、ライが来ました。
長い行列に戸惑うような顔をしながら歩いて来ると、もっくんたちの方にに笑顔を浮べながら近付いて来ました。
「よう!ホワイトクリスマスだな!」
ライは鼻歌を歌いそうになりながら言いましたが、もっくんたちの顔色が冴えないのに気付いて眉を寄せました。
「どうした?雪合戦はしないのか?雪だるまは?」
はっちゃんは溜め息をついて、ついでにはなをすすりあげました。
「寒すぎてカゼひいちまったよ」
「雪が積もると大変なんだね。電車もバスも動かないんだって。知らなかったよ」
もっくんも寒そうに肩をすぼめて苦笑します。
「ガソリンも灯油もないし、食料品も売り切れで、水も出ないしさ。皆困ってるもんな」
とんとんも、手をこすり合わせながら口を尖らせました。
ライは、あんなに楽しみにしていたのにどういう事かと思いましたが、周りを見回してみて、困ったような顔をしている人がほとんどなのに気付き、どうしたらいいのか困り果てました。
「水、運ばないといけないから」
「だから今日は遊べないんだ」
「またな」
ライを置いてもっくんたちは行ってしまい、ライは泣き出しそうな気分でその場から走り去り、天界に戻りました。
そして制御室へと行ってみると、係の天使たちが慌てて制御盤を操作していました。天界も地上も大混乱です。
それを見てオロオロしているライの頭に、カミナリが落ちました。
「この、バカモンが!!」
校長先生でした。
「ヒイッ!」
ライは飛び上がりました。
「お前は何という事をしたのかわかっているのか!」
「オレ、こんな事になるなんて知らなくて。ただ、雪が降ったら喜ぶだろうと思って」
校長先生は溜め息をつき、ライに言い聞かせました。
「どうなるかわからなかったと言ったな。そうだ。知らなかったからで済まない事もある。知らないせいで誰かを苦しめる事もある。誰かを誰かを泣かせる事もある。だから勉強するんだよ、ライ。わかるか」
ライは考えました。
「字が書けて、ちょっと計算もできればいいと思ったけど、そうじゃないんですね」
「そうだ」
「ごめんなさい」
ライは、心から反省して、頭を下げました。
「これからは勉強をさぼりません」
「うむ。しっかり勉強しなさい」
校長先生は、わあわあと泣くライの頭を撫でました。
それからライは、真面目に勉強するようになりました。勉強は相変わらず、面白くないし、飽きて来ます。それでも一生懸命にがまんして勉強をすると、今度は、知らなかった事が色々と知れて、楽しくなってきました。
どうして空は青いのか。
どうして花は咲くのか。
どうして星は動くのか。
知ればまた知らない事が増え、それをまた知る。
勉強って、面白い。ライはそう思いました。
そうしてライは、友達を困らせてしまった事を心から後悔したのでした。
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