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多発する次元事故
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そのニュースは、世界を震撼させた。
都市の中に、半径10キロのきれいな円形の荒れ地がぽっかりと出現している。
「ザイネ第2の都市を中心とした地方ですよ。昨日付近の各国が一斉に振動を観測したので、兵器の爆破実験かと思われたのですが、衛星で観測したらこのありさま。
中心地に研究施設がありましてね。兵器開発から農薬の開発まで色々とやっていたそうですが、どうも、宇宙空間に荷物を送る実験をしていて、失敗したようです。詳しい事は不明ですが、周囲が半径10キロにわたって、一瞬で蒸発した模様です」
ヨウゼが、その写真を見ながら言った。
「蒸発であるか?なくなったという事であるか?ビルも人も?」
ドルメがキョトンとして確認する。
他の皆は青い顔で、ヨウゼが「はい、そうです」と答えるのを聞いていた。
「怖いね。こんな魔法、聞いた事ないよ」
パセは震えながら言う。
残念ながら、地球には――いや、日本には2度の原子爆弾投下の過去があり、嫌でもそれを思い起こさせた。
「何らかの兵器の爆発とか?」
セレエが食い入るように画面を見るのに、ルルカが答える。
「それらしい火薬や放射線も出ていないし、きれいな円形に一瞬で蒸発というのがね。
可能性で言うなら、次元事故?」
ルルカに皆が注目する。
「ザイネも次元実験を計画してるって話は聞いてたから。地下も円形にえぐれてるし、半径10キロの球体のなかのものが、そっくりどこかに消えたとか、中心部にギュッと圧縮されて爆発して蒸発したとか、ね」
ゴクリと唾を呑む。
「もし異世界にでんと出て来てたら、そこにいた僕達は、押しつぶされてた可能性もあったのか、あの事故で」
「否定はできないわね」
あっさりとルルカが言い、部屋の中がシンと静まり返った。
「入れ替わって、死ななかっただけでも良かった?」
篁文が言うと、ルルカは少し言葉に詰まり、
「そうね。比べられないけど、まあ――いえ、ごめんなさい」
と目を伏せた。
「別に、そういうつもりでは……。済みません」
「とにかく、そういう事故のせいで、次元が不安定になる可能性があります。もしかすると、次元の裂け目ができる時間に変化があるとか、場所がずれるとか、頻度が高くなるとかが考えられます。皆さん、しばらくは、なるべくこの近くから離れないようにして、いつでも出動できるようにお願いします」
ヨウゼが締めくくり、朝のミーティングは終わった。
パセ、ドルメ、篁文が、順番にスティックでの訓練をする。その間、紗希とセレエはよく見学をしていたのだが、セレエは研究室に行って、何かしていた。
ようやく打ち合っていた3人が終わる事にした時、端末が受信を示し、ヨウゼの声がした。
『他国で次元震です。すぐに解析室まで来てください』
4人は一瞬顔を見合わせ、
「まさか海外出張?」
と言いながら、解析室へ急いだ。
セレエやルルカ、ヨウゼが、画面に見入っていた。
「何?これ」
それが何か、パセはわからなかったらしい。
「溶岩。火山の中の物凄い熱いものよ。
次元がマグマにつながったらしいわ。マグマが研究室に溢れ出てきて、大火災よ。先週南の小国家で大きな火事があったけど、本当の原因はこれだって、監視カメラの映像が流出したの」
「次元実験をどこの国も始めてるんですか」
篁文が訊くと、ルルカが嘆息した。
「頭の痛い事に、そうらしいわね。ちゃんとそれをやれるところまで技術や理論ができてないところまでもが、見切り発車的に実験に踏み切って、事故を起こしてる」
セレエが、イライラと言う。
「よくわかってない子供に、材料と爆弾の設計図を取り敢えず渡したらどうなる?事故のオンパレードさ」
重苦しい空気に皆が無口になっていると、サイレンが鳴った。
「次元震よ。地図は転送するから」
皆は飛び出して、車を目指した。
「とんでもないものが出て来ない事を願うであるな」
「全くだ」
頭を切り替え、皆は出動車に飛び込んだ。
都市の中に、半径10キロのきれいな円形の荒れ地がぽっかりと出現している。
「ザイネ第2の都市を中心とした地方ですよ。昨日付近の各国が一斉に振動を観測したので、兵器の爆破実験かと思われたのですが、衛星で観測したらこのありさま。
中心地に研究施設がありましてね。兵器開発から農薬の開発まで色々とやっていたそうですが、どうも、宇宙空間に荷物を送る実験をしていて、失敗したようです。詳しい事は不明ですが、周囲が半径10キロにわたって、一瞬で蒸発した模様です」
ヨウゼが、その写真を見ながら言った。
「蒸発であるか?なくなったという事であるか?ビルも人も?」
ドルメがキョトンとして確認する。
他の皆は青い顔で、ヨウゼが「はい、そうです」と答えるのを聞いていた。
「怖いね。こんな魔法、聞いた事ないよ」
パセは震えながら言う。
残念ながら、地球には――いや、日本には2度の原子爆弾投下の過去があり、嫌でもそれを思い起こさせた。
「何らかの兵器の爆発とか?」
セレエが食い入るように画面を見るのに、ルルカが答える。
「それらしい火薬や放射線も出ていないし、きれいな円形に一瞬で蒸発というのがね。
可能性で言うなら、次元事故?」
ルルカに皆が注目する。
「ザイネも次元実験を計画してるって話は聞いてたから。地下も円形にえぐれてるし、半径10キロの球体のなかのものが、そっくりどこかに消えたとか、中心部にギュッと圧縮されて爆発して蒸発したとか、ね」
ゴクリと唾を呑む。
「もし異世界にでんと出て来てたら、そこにいた僕達は、押しつぶされてた可能性もあったのか、あの事故で」
「否定はできないわね」
あっさりとルルカが言い、部屋の中がシンと静まり返った。
「入れ替わって、死ななかっただけでも良かった?」
篁文が言うと、ルルカは少し言葉に詰まり、
「そうね。比べられないけど、まあ――いえ、ごめんなさい」
と目を伏せた。
「別に、そういうつもりでは……。済みません」
「とにかく、そういう事故のせいで、次元が不安定になる可能性があります。もしかすると、次元の裂け目ができる時間に変化があるとか、場所がずれるとか、頻度が高くなるとかが考えられます。皆さん、しばらくは、なるべくこの近くから離れないようにして、いつでも出動できるようにお願いします」
ヨウゼが締めくくり、朝のミーティングは終わった。
パセ、ドルメ、篁文が、順番にスティックでの訓練をする。その間、紗希とセレエはよく見学をしていたのだが、セレエは研究室に行って、何かしていた。
ようやく打ち合っていた3人が終わる事にした時、端末が受信を示し、ヨウゼの声がした。
『他国で次元震です。すぐに解析室まで来てください』
4人は一瞬顔を見合わせ、
「まさか海外出張?」
と言いながら、解析室へ急いだ。
セレエやルルカ、ヨウゼが、画面に見入っていた。
「何?これ」
それが何か、パセはわからなかったらしい。
「溶岩。火山の中の物凄い熱いものよ。
次元がマグマにつながったらしいわ。マグマが研究室に溢れ出てきて、大火災よ。先週南の小国家で大きな火事があったけど、本当の原因はこれだって、監視カメラの映像が流出したの」
「次元実験をどこの国も始めてるんですか」
篁文が訊くと、ルルカが嘆息した。
「頭の痛い事に、そうらしいわね。ちゃんとそれをやれるところまで技術や理論ができてないところまでもが、見切り発車的に実験に踏み切って、事故を起こしてる」
セレエが、イライラと言う。
「よくわかってない子供に、材料と爆弾の設計図を取り敢えず渡したらどうなる?事故のオンパレードさ」
重苦しい空気に皆が無口になっていると、サイレンが鳴った。
「次元震よ。地図は転送するから」
皆は飛び出して、車を目指した。
「とんでもないものが出て来ない事を願うであるな」
「全くだ」
頭を切り替え、皆は出動車に飛び込んだ。
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