19 / 38
追っ手の影
しおりを挟む
「ああああー」
レミが声を出し、その超音波で、鋭い歯がびっしりと生えたくちばしと毒のある鋭い爪を持った鳥が落下して来た。それをすかさず、セイが殴り掛かる。
鳥はジタバタと暴れ、爪でセイの腕を引っかいた。
が、
「効かねえよ!」
と言うなり、セイはナイフを鳥に突き立て、首を斬り落とした。
「セイ!」
スレイが慌てたが、セイは笑った。
「大丈夫、大丈夫」
セイは研究所では「体を固くできる」と言っていたが、実際は、怪力でもあるし、毒も効かない体質になっていた。
「でも、血を止めないと」
スレイは言って、血止めの効果のある草を揉んで布に包み、セイの傷に押し当てた。
「押さえてろよ」
スレイはセイにそう言い、手早く穴を掘ってその中に鳥の死体を入れ、自分の腕を切って血を垂らすと鳥の死体を燃やし、土を被せた。
ある地域で凶暴な新種の鳥が出たという噂を聞き、来ていた。
そして辺りを探ってみると、森の奥で鳥の死体が散乱しており、巣の近くに青い石があった。そして石を爆破し、変異した個体を片付けて回っていたのだった。
「これで最後かなあ」
「どうだろう。そろそろほかには見かけなくはなって来てたけど」
レミとスレイが辺りを見回しながら言い、
「とにかく、離れようぜ」
と、そこを離れた。
近くにある村に宿を取った。
3人は髪の色を変えようと、木の皮を煎じた物で髪を洗っていた。おかげで、スレイは白色、セイは灰色、レミは灰色がかった茶色の髪色になっている。
安いだけあって、風呂無しで、食事も大したことがないし、宿の主の愛想も悪い。
それでも、同じ部屋のベッドに腰かけ、ホッと息をついた。
「石も無事に見つかったし、変異した鳥も片付けたし」
レミが言うが、油断は禁物だ。スレイは、警戒をするべきだと思った。
「おかしな鳥の噂で、連中が調べに来るかも知れない。明日の朝にはここを発とう」
「そうだな。
まあ、メシもまずいし、名残は全く惜しくねえ」
セイがそう言って、顔をしかめた。
スレイと違って、セイは傷がすぐに治ったり消えたりはしない。それでも、人よりは治りが早い。
出血が完全に止まり、傷口も塞がっている事を確認して、する事もないと早々に3人は寝た。
サンは、スレイすらも知らないスレイの前世の記憶の断片を楽しんでいた。
異世界に魅せられ、必ずあるはずと、巨大な魔石を準備し、一世一代の複雑な魔術を編んだのだ。その結果、異世界であるこの世界に辿り着いたはいいが、体を消失してしまった。が、悔いはない。
しかし、言うなら、スレイの前世のような異世界が良かったとは思っていた。
スレイの前世。それは、地球だった。
それは断片でしかなく、なかなかスレイ本人の意識にも上がらない。第一覚えていないのだから、スレイに解説を求める事は不可能ではあるが。
だが、大魔導士であるサンは、洞察力にも優れているし、色々な知識にも触れている。なので、わけのわからないそれらの知識について、推察できるものもある。
「ふむ。これは何かの構造を現しているのか?
それにこれは、人体の構造か!こうなっているんだな、体の内部は!
興味深い!この世界は、随分と知識が溢れているのだな。実に羨ましい」
サンは疲れも知らないし、寝る必要もない。思う存分、知識の断片の海を引っかき回した。
翌朝、ボソボソしたパンと具の無いスープという朝食をどうにか呑み込み、スレイ達は出立の準備をした。
階段を下りてドアへ歩いて行くと、向こうからドアが開けられた。
「おお、すまん」
そう言って脇に寄ったのは、鍛えられた体と鋭い目付きを、巧妙に明るい雰囲気と猫背気味の姿勢で隠した男だった。
「いえ」
短く答え、軽く頭を下げて脇を通り抜けて外へ出る。
(公権力の雰囲気がする。でも、軍人じゃないかな、この姿勢と髪形は。
警察か?)
スレイはフードの奥から、男をそう観察してあたりを付けた。
(ヤバい所だったのかも知れないな。セーフ!)
セイも視界の隅で男を見ながら通り過ぎる。
(落ち着いて。普通に、普通に)
レミは平静にと自分に言い聞かせながら、前だけを見て男とすれ違った。
男がカウンターの主に向かって訊く声がする。
「ちょっと人を探してるんだが。こういう特徴の3人組を見なかったか」
そして3人は表に出ると、何という事もない足取りで、歩き出した。
男――ジーナは、3人組を見送りながら、しっかりとデータに照らし合わせていた。
(髪の色が違うな。たまたまか)
そう考え、カウンターの宿の主に声をかける。
「ちょっと人を探してるんだが。こういう特徴の3人組を見なかったか」
レミが声を出し、その超音波で、鋭い歯がびっしりと生えたくちばしと毒のある鋭い爪を持った鳥が落下して来た。それをすかさず、セイが殴り掛かる。
鳥はジタバタと暴れ、爪でセイの腕を引っかいた。
が、
「効かねえよ!」
と言うなり、セイはナイフを鳥に突き立て、首を斬り落とした。
「セイ!」
スレイが慌てたが、セイは笑った。
「大丈夫、大丈夫」
セイは研究所では「体を固くできる」と言っていたが、実際は、怪力でもあるし、毒も効かない体質になっていた。
「でも、血を止めないと」
スレイは言って、血止めの効果のある草を揉んで布に包み、セイの傷に押し当てた。
「押さえてろよ」
スレイはセイにそう言い、手早く穴を掘ってその中に鳥の死体を入れ、自分の腕を切って血を垂らすと鳥の死体を燃やし、土を被せた。
ある地域で凶暴な新種の鳥が出たという噂を聞き、来ていた。
そして辺りを探ってみると、森の奥で鳥の死体が散乱しており、巣の近くに青い石があった。そして石を爆破し、変異した個体を片付けて回っていたのだった。
「これで最後かなあ」
「どうだろう。そろそろほかには見かけなくはなって来てたけど」
レミとスレイが辺りを見回しながら言い、
「とにかく、離れようぜ」
と、そこを離れた。
近くにある村に宿を取った。
3人は髪の色を変えようと、木の皮を煎じた物で髪を洗っていた。おかげで、スレイは白色、セイは灰色、レミは灰色がかった茶色の髪色になっている。
安いだけあって、風呂無しで、食事も大したことがないし、宿の主の愛想も悪い。
それでも、同じ部屋のベッドに腰かけ、ホッと息をついた。
「石も無事に見つかったし、変異した鳥も片付けたし」
レミが言うが、油断は禁物だ。スレイは、警戒をするべきだと思った。
「おかしな鳥の噂で、連中が調べに来るかも知れない。明日の朝にはここを発とう」
「そうだな。
まあ、メシもまずいし、名残は全く惜しくねえ」
セイがそう言って、顔をしかめた。
スレイと違って、セイは傷がすぐに治ったり消えたりはしない。それでも、人よりは治りが早い。
出血が完全に止まり、傷口も塞がっている事を確認して、する事もないと早々に3人は寝た。
サンは、スレイすらも知らないスレイの前世の記憶の断片を楽しんでいた。
異世界に魅せられ、必ずあるはずと、巨大な魔石を準備し、一世一代の複雑な魔術を編んだのだ。その結果、異世界であるこの世界に辿り着いたはいいが、体を消失してしまった。が、悔いはない。
しかし、言うなら、スレイの前世のような異世界が良かったとは思っていた。
スレイの前世。それは、地球だった。
それは断片でしかなく、なかなかスレイ本人の意識にも上がらない。第一覚えていないのだから、スレイに解説を求める事は不可能ではあるが。
だが、大魔導士であるサンは、洞察力にも優れているし、色々な知識にも触れている。なので、わけのわからないそれらの知識について、推察できるものもある。
「ふむ。これは何かの構造を現しているのか?
それにこれは、人体の構造か!こうなっているんだな、体の内部は!
興味深い!この世界は、随分と知識が溢れているのだな。実に羨ましい」
サンは疲れも知らないし、寝る必要もない。思う存分、知識の断片の海を引っかき回した。
翌朝、ボソボソしたパンと具の無いスープという朝食をどうにか呑み込み、スレイ達は出立の準備をした。
階段を下りてドアへ歩いて行くと、向こうからドアが開けられた。
「おお、すまん」
そう言って脇に寄ったのは、鍛えられた体と鋭い目付きを、巧妙に明るい雰囲気と猫背気味の姿勢で隠した男だった。
「いえ」
短く答え、軽く頭を下げて脇を通り抜けて外へ出る。
(公権力の雰囲気がする。でも、軍人じゃないかな、この姿勢と髪形は。
警察か?)
スレイはフードの奥から、男をそう観察してあたりを付けた。
(ヤバい所だったのかも知れないな。セーフ!)
セイも視界の隅で男を見ながら通り過ぎる。
(落ち着いて。普通に、普通に)
レミは平静にと自分に言い聞かせながら、前だけを見て男とすれ違った。
男がカウンターの主に向かって訊く声がする。
「ちょっと人を探してるんだが。こういう特徴の3人組を見なかったか」
そして3人は表に出ると、何という事もない足取りで、歩き出した。
男――ジーナは、3人組を見送りながら、しっかりとデータに照らし合わせていた。
(髪の色が違うな。たまたまか)
そう考え、カウンターの宿の主に声をかける。
「ちょっと人を探してるんだが。こういう特徴の3人組を見なかったか」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる