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追っ手の影
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「ああああー」
レミが声を出し、その超音波で、鋭い歯がびっしりと生えたくちばしと毒のある鋭い爪を持った鳥が落下して来た。それをすかさず、セイが殴り掛かる。
鳥はジタバタと暴れ、爪でセイの腕を引っかいた。
が、
「効かねえよ!」
と言うなり、セイはナイフを鳥に突き立て、首を斬り落とした。
「セイ!」
スレイが慌てたが、セイは笑った。
「大丈夫、大丈夫」
セイは研究所では「体を固くできる」と言っていたが、実際は、怪力でもあるし、毒も効かない体質になっていた。
「でも、血を止めないと」
スレイは言って、血止めの効果のある草を揉んで布に包み、セイの傷に押し当てた。
「押さえてろよ」
スレイはセイにそう言い、手早く穴を掘ってその中に鳥の死体を入れ、自分の腕を切って血を垂らすと鳥の死体を燃やし、土を被せた。
ある地域で凶暴な新種の鳥が出たという噂を聞き、来ていた。
そして辺りを探ってみると、森の奥で鳥の死体が散乱しており、巣の近くに青い石があった。そして石を爆破し、変異した個体を片付けて回っていたのだった。
「これで最後かなあ」
「どうだろう。そろそろほかには見かけなくはなって来てたけど」
レミとスレイが辺りを見回しながら言い、
「とにかく、離れようぜ」
と、そこを離れた。
近くにある村に宿を取った。
3人は髪の色を変えようと、木の皮を煎じた物で髪を洗っていた。おかげで、スレイは白色、セイは灰色、レミは灰色がかった茶色の髪色になっている。
安いだけあって、風呂無しで、食事も大したことがないし、宿の主の愛想も悪い。
それでも、同じ部屋のベッドに腰かけ、ホッと息をついた。
「石も無事に見つかったし、変異した鳥も片付けたし」
レミが言うが、油断は禁物だ。スレイは、警戒をするべきだと思った。
「おかしな鳥の噂で、連中が調べに来るかも知れない。明日の朝にはここを発とう」
「そうだな。
まあ、メシもまずいし、名残は全く惜しくねえ」
セイがそう言って、顔をしかめた。
スレイと違って、セイは傷がすぐに治ったり消えたりはしない。それでも、人よりは治りが早い。
出血が完全に止まり、傷口も塞がっている事を確認して、する事もないと早々に3人は寝た。
サンは、スレイすらも知らないスレイの前世の記憶の断片を楽しんでいた。
異世界に魅せられ、必ずあるはずと、巨大な魔石を準備し、一世一代の複雑な魔術を編んだのだ。その結果、異世界であるこの世界に辿り着いたはいいが、体を消失してしまった。が、悔いはない。
しかし、言うなら、スレイの前世のような異世界が良かったとは思っていた。
スレイの前世。それは、地球だった。
それは断片でしかなく、なかなかスレイ本人の意識にも上がらない。第一覚えていないのだから、スレイに解説を求める事は不可能ではあるが。
だが、大魔導士であるサンは、洞察力にも優れているし、色々な知識にも触れている。なので、わけのわからないそれらの知識について、推察できるものもある。
「ふむ。これは何かの構造を現しているのか?
それにこれは、人体の構造か!こうなっているんだな、体の内部は!
興味深い!この世界は、随分と知識が溢れているのだな。実に羨ましい」
サンは疲れも知らないし、寝る必要もない。思う存分、知識の断片の海を引っかき回した。
翌朝、ボソボソしたパンと具の無いスープという朝食をどうにか呑み込み、スレイ達は出立の準備をした。
階段を下りてドアへ歩いて行くと、向こうからドアが開けられた。
「おお、すまん」
そう言って脇に寄ったのは、鍛えられた体と鋭い目付きを、巧妙に明るい雰囲気と猫背気味の姿勢で隠した男だった。
「いえ」
短く答え、軽く頭を下げて脇を通り抜けて外へ出る。
(公権力の雰囲気がする。でも、軍人じゃないかな、この姿勢と髪形は。
警察か?)
スレイはフードの奥から、男をそう観察してあたりを付けた。
(ヤバい所だったのかも知れないな。セーフ!)
セイも視界の隅で男を見ながら通り過ぎる。
(落ち着いて。普通に、普通に)
レミは平静にと自分に言い聞かせながら、前だけを見て男とすれ違った。
男がカウンターの主に向かって訊く声がする。
「ちょっと人を探してるんだが。こういう特徴の3人組を見なかったか」
そして3人は表に出ると、何という事もない足取りで、歩き出した。
男――ジーナは、3人組を見送りながら、しっかりとデータに照らし合わせていた。
(髪の色が違うな。たまたまか)
そう考え、カウンターの宿の主に声をかける。
「ちょっと人を探してるんだが。こういう特徴の3人組を見なかったか」
レミが声を出し、その超音波で、鋭い歯がびっしりと生えたくちばしと毒のある鋭い爪を持った鳥が落下して来た。それをすかさず、セイが殴り掛かる。
鳥はジタバタと暴れ、爪でセイの腕を引っかいた。
が、
「効かねえよ!」
と言うなり、セイはナイフを鳥に突き立て、首を斬り落とした。
「セイ!」
スレイが慌てたが、セイは笑った。
「大丈夫、大丈夫」
セイは研究所では「体を固くできる」と言っていたが、実際は、怪力でもあるし、毒も効かない体質になっていた。
「でも、血を止めないと」
スレイは言って、血止めの効果のある草を揉んで布に包み、セイの傷に押し当てた。
「押さえてろよ」
スレイはセイにそう言い、手早く穴を掘ってその中に鳥の死体を入れ、自分の腕を切って血を垂らすと鳥の死体を燃やし、土を被せた。
ある地域で凶暴な新種の鳥が出たという噂を聞き、来ていた。
そして辺りを探ってみると、森の奥で鳥の死体が散乱しており、巣の近くに青い石があった。そして石を爆破し、変異した個体を片付けて回っていたのだった。
「これで最後かなあ」
「どうだろう。そろそろほかには見かけなくはなって来てたけど」
レミとスレイが辺りを見回しながら言い、
「とにかく、離れようぜ」
と、そこを離れた。
近くにある村に宿を取った。
3人は髪の色を変えようと、木の皮を煎じた物で髪を洗っていた。おかげで、スレイは白色、セイは灰色、レミは灰色がかった茶色の髪色になっている。
安いだけあって、風呂無しで、食事も大したことがないし、宿の主の愛想も悪い。
それでも、同じ部屋のベッドに腰かけ、ホッと息をついた。
「石も無事に見つかったし、変異した鳥も片付けたし」
レミが言うが、油断は禁物だ。スレイは、警戒をするべきだと思った。
「おかしな鳥の噂で、連中が調べに来るかも知れない。明日の朝にはここを発とう」
「そうだな。
まあ、メシもまずいし、名残は全く惜しくねえ」
セイがそう言って、顔をしかめた。
スレイと違って、セイは傷がすぐに治ったり消えたりはしない。それでも、人よりは治りが早い。
出血が完全に止まり、傷口も塞がっている事を確認して、する事もないと早々に3人は寝た。
サンは、スレイすらも知らないスレイの前世の記憶の断片を楽しんでいた。
異世界に魅せられ、必ずあるはずと、巨大な魔石を準備し、一世一代の複雑な魔術を編んだのだ。その結果、異世界であるこの世界に辿り着いたはいいが、体を消失してしまった。が、悔いはない。
しかし、言うなら、スレイの前世のような異世界が良かったとは思っていた。
スレイの前世。それは、地球だった。
それは断片でしかなく、なかなかスレイ本人の意識にも上がらない。第一覚えていないのだから、スレイに解説を求める事は不可能ではあるが。
だが、大魔導士であるサンは、洞察力にも優れているし、色々な知識にも触れている。なので、わけのわからないそれらの知識について、推察できるものもある。
「ふむ。これは何かの構造を現しているのか?
それにこれは、人体の構造か!こうなっているんだな、体の内部は!
興味深い!この世界は、随分と知識が溢れているのだな。実に羨ましい」
サンは疲れも知らないし、寝る必要もない。思う存分、知識の断片の海を引っかき回した。
翌朝、ボソボソしたパンと具の無いスープという朝食をどうにか呑み込み、スレイ達は出立の準備をした。
階段を下りてドアへ歩いて行くと、向こうからドアが開けられた。
「おお、すまん」
そう言って脇に寄ったのは、鍛えられた体と鋭い目付きを、巧妙に明るい雰囲気と猫背気味の姿勢で隠した男だった。
「いえ」
短く答え、軽く頭を下げて脇を通り抜けて外へ出る。
(公権力の雰囲気がする。でも、軍人じゃないかな、この姿勢と髪形は。
警察か?)
スレイはフードの奥から、男をそう観察してあたりを付けた。
(ヤバい所だったのかも知れないな。セーフ!)
セイも視界の隅で男を見ながら通り過ぎる。
(落ち着いて。普通に、普通に)
レミは平静にと自分に言い聞かせながら、前だけを見て男とすれ違った。
男がカウンターの主に向かって訊く声がする。
「ちょっと人を探してるんだが。こういう特徴の3人組を見なかったか」
そして3人は表に出ると、何という事もない足取りで、歩き出した。
男――ジーナは、3人組を見送りながら、しっかりとデータに照らし合わせていた。
(髪の色が違うな。たまたまか)
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