一大事!

JUN

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盗賊団でござる

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 脱穀した米を、そのまますぐに城へ避難させる。それが無理なら、集落の奥の荷車の入れないような所に移しておく。
 一方、街道沿いにある米蔵には、ゆっくりとしたペースで米を運び込んで行く。
「どうだ?」
 薪を拾ってきた風を装った手下に訊くと、
「へい。見かけない顔の奴らが3人ほど、山の上から眺めまわしていやがりました」
と答える。
「そいつらかな」
「だといいがな」
「上手くこのエサに食いついてくれよ」
 祈りながら、作業を監督する風に見ていた4人は、帰るフリをして近くの納屋に隠れた。

 交代で仮眠を取りながら待ち、やがて深夜になった。
「おい、来たぞ」
 見張り番の光三郎が低い声で告げた。
 それで3人は起き、各々刀を腰に差して準備した。
「どうだ」
「全部で20人はいるぞ。荷車も3台だし、浪人らしきものが4人、警護している」
 小声で言いかわし、機を窺う。
 なるほど、辺りを警戒しているのは浪人者のようで、倉を開けて米を運ぶのは、農民か何からしい。手慣れているのが見て取れる。
 錠前破りのできる者がいたらしく、鍵が開き、蔵の扉が開く。
「よし、行くぞ。
 そこまでだ!」
 バーン!と納屋の戸を開けて外へ飛び出すと、ギクッとしたように彼らが身を縮める。
 そして、別の納屋、もみの山の中からも、潜んでいた捕り方やその手下達が姿を現した。
「クソッ、騙しやがったな!?」
 オドオドとする者もいるが、懐から短刀を掴みだす者もいる。
「大人しくお縄につけ!」
「捕まってたまるもんか!」
 乱闘が始まり、佐之輔達も飛び込んで行った。
 殺さないように峰打ちで倒していく。
「あ!逃げるぞ!」
 誰かが叫んで見回すと、浪人がこっそりと逃げ出して行くところだった。
「あ!貴様、待てい!!」
 すかさず追いかける佐之輔を、
「あ、待てって!」
と慌てて宗二郎が追う。
 それに横から、逃げ惑う賊の一味がぶつかる。
「ぎゃああああ!」
 巻き込まれる宗二郎を追い抜いて、秀克が追った。
 浪人は振り返ってギョッとしたような表情を浮かべると、近くの民家へ走って行く。
 運悪く、厠へでも行ったのか外にいた娘が鉢合わせる。
 まずい、と思ったら案の定、浪人は娘を羽交い絞めにして首に刀を突き付けていた。
「近寄るな!」
「ひええええ!」
 止まらざるを得ない。
「そのまま、動くなよ。動いたら、こいつを殺す」
 ギラギラとした目でそう言い、浪人と動ける者達は、馬と荷車に集まって行く。
 それを、歯ぎしりして見ているしかない。
「くそ、卑怯な」
「どうしますか」
 捕り方も、秀克に訊く。
「人質を取られている。犠牲にはできぬ」
「くそっ」
 そうして奴らは、逃げて行った。
「後を追うぞ!」
「はい!」
 馬に乗り、或いは走り、こちらも盗賊団の後を追って行く。
 やがて、前方の道が狭くなり、荷車がギリギリの幅になる。その先に、賊が見えた。
 と、何かが放り出される。
「娘だ!止まれ!はねるな!」
 慌てて、娘をひづめにかけないようにと馬を止め、佐之輔は娘のそばへしゃがみ込んだ。
「大丈夫か?」
 娘は呆然としていたが、やがて、わっと泣き出した。ケガをしている様子も無さそうだ。
「跡を辿るのは明るくなってからでないと無理だな。まあ、米も無事だったし人質も取り返したし、ひとまず帰ろう」
 秀克が言い、今夜の捕り物はひとまず終了となった。
 明日からは、捕縛した賊の取り調べと逃走跡を追っての追跡だ。
「逃げ切れたと思うなよ」
 各々の闘志は、益々燃え盛っていたのだった。





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