2 / 10
スーツアクターになれない人
しおりを挟む
スーツアクターは辛い。体力的にも大変だし、重いし、暑いし、臭い。
それから、場合によっては、どうしても無理な人もいる。
「大丈夫か?」
ガタガタと青い顔で震える新人に佐原は声をかけた。ガタイが良く、体力自慢という事なので期待したのだが、これでは無理だ。
「徐々に慣れて行く場合もあるけど、まあ、難しいなあ」
彼はガックリと項垂れた。
「閉所恐怖症にはちょっと無理かなあ」
そう。たまに、そういう心因的な理由でスーツアクターをあきらめざるを得ない人もいるのだ。
「無理、ですか……」
彼は強面なのだが子供が好きで、ゆるキャラに入っていれば子供が怖がらないで近付いてくれるはずだと新見プロへバイトの面接に来たのだ。
「スタントとかアクション系のエキストラなんかなら行けそうだけど」
「そう、ですね……」
彼は考え、
「では、少しずつ慣れるように練習して、出来るようになったらゆるキャラで。それまではエキストラでお願いします」
「わかった」
新見が頷き、佐原が彼の肩を力づけるように叩いた。
新人バイトが事務所から帰って行くと、佐原はふうと溜め息をついた。
「体力と体格は申し分がなかったのになあ。惜しい」
「閉所恐怖症はなあ。カウンセリンングでも受けて克服しないと、パニックになったりするからな」
2人は期せずして、同じ事件を思い出していた。
この事務所を立ち上げる前、佐原と新見ともう1人、田島という仲間がいた。
ある日、怪獣に入って撮影をしていたのだが、海に沈んで行くというシーンがあった。そこで、スタジオのプールに着ぐるみを着て沈んで行ったのだが、なかなか上がって来ない。
慌ててスタッフが引き上げ、どうにか溺死は免れたのだが、それ以来閉所恐怖症になって、スーツに入る事ができなくなり、事務所を退職して田舎に帰った。
その後何の仕事をしても上手く行かなくて、3年後、自殺した。
彼の事故を契機に、新見はこの事務所を立ち上げる事を決めた。スーツアクターになれなくても、エキストラやスタントの仕事でやっていけるように。そうしながら、復帰を目指せるように。
田島には間に合わせてやれなかった。それが新見の最大の後悔だ。
「意外と海賊とか、強面でも行ける上に子供にも人気だしな」
「そうだな。そういう仕事が回って来たら、声をかけよう」
新見と佐原はそう言い合って、ファイルにそう書き込んだ。
それから、場合によっては、どうしても無理な人もいる。
「大丈夫か?」
ガタガタと青い顔で震える新人に佐原は声をかけた。ガタイが良く、体力自慢という事なので期待したのだが、これでは無理だ。
「徐々に慣れて行く場合もあるけど、まあ、難しいなあ」
彼はガックリと項垂れた。
「閉所恐怖症にはちょっと無理かなあ」
そう。たまに、そういう心因的な理由でスーツアクターをあきらめざるを得ない人もいるのだ。
「無理、ですか……」
彼は強面なのだが子供が好きで、ゆるキャラに入っていれば子供が怖がらないで近付いてくれるはずだと新見プロへバイトの面接に来たのだ。
「スタントとかアクション系のエキストラなんかなら行けそうだけど」
「そう、ですね……」
彼は考え、
「では、少しずつ慣れるように練習して、出来るようになったらゆるキャラで。それまではエキストラでお願いします」
「わかった」
新見が頷き、佐原が彼の肩を力づけるように叩いた。
新人バイトが事務所から帰って行くと、佐原はふうと溜め息をついた。
「体力と体格は申し分がなかったのになあ。惜しい」
「閉所恐怖症はなあ。カウンセリンングでも受けて克服しないと、パニックになったりするからな」
2人は期せずして、同じ事件を思い出していた。
この事務所を立ち上げる前、佐原と新見ともう1人、田島という仲間がいた。
ある日、怪獣に入って撮影をしていたのだが、海に沈んで行くというシーンがあった。そこで、スタジオのプールに着ぐるみを着て沈んで行ったのだが、なかなか上がって来ない。
慌ててスタッフが引き上げ、どうにか溺死は免れたのだが、それ以来閉所恐怖症になって、スーツに入る事ができなくなり、事務所を退職して田舎に帰った。
その後何の仕事をしても上手く行かなくて、3年後、自殺した。
彼の事故を契機に、新見はこの事務所を立ち上げる事を決めた。スーツアクターになれなくても、エキストラやスタントの仕事でやっていけるように。そうしながら、復帰を目指せるように。
田島には間に合わせてやれなかった。それが新見の最大の後悔だ。
「意外と海賊とか、強面でも行ける上に子供にも人気だしな」
「そうだな。そういう仕事が回って来たら、声をかけよう」
新見と佐原はそう言い合って、ファイルにそう書き込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる