銀の花と銀の月

JUN

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糾弾

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「ユーリは、ドラゴンの卵を手土産にして、上手く出世しようとしたに違いない!」
 スレイドがナジムの尻馬に乗った。
「いや、俺達は森でキャンプしてたんだ。方向が違うだろ」
 言うと、荷車に避難した皆が、口々に言い合った。
「そういえば、この荷車は森の方から来たな」
「ええ。ドラゴンは向こうの山から飛んで来たけど」
 それに、ナジムとスレイドとモルドは怯みそうになり、副団長の目が険を帯びる。
「詳しくお話を聞かねばならないようですな」
「いや、私達は関係ない。卵は、ここにあったんだ。それが全てだ」
「待てよスレイド。お前達だって荷車にそうやって乗ってるじゃないか。それは理由にならねえな」
 カイが言うのに、スレイドは甲高い声で言い返す。
「殿下の御発言を疑うのか!不敬であるぞ!」
 それで、荷車の上の平民達は口をつぐみ、魔術団のメンバーも顔を見合わせた。
「副団長」
 困ったように言われ、副団長は溜め息を堪えた。
「ああ、記録を作る為にも、一旦団へ戻って調査する」
 それで、ナジム達は団の馬に乗り、ユーリ達の荷車は、ユーリ達の他に副団長と団員が乗り込んだ。
「ユーリが出世の為に手土産?ありえねえ」
 カイが笑い、ジンも吹き出す。
「だよね。出世に興味ないもんね」
「当然だろ。そんなもんより、魔術研究や魔道具制作をしてる方が有意義だ。会議とかゴマすりとかするくらいだったら、魔術団に入らなくてもいいもんな」
 それを聞いて、副団長と団員は苦笑をもらした。
「まあ、ちゃんと調べればわかるよね」
 それには、副団長は不安があった。
(団長は、出世と上の顔色を窺う事しか興味のない人だ。まともな聞き取りをするとは思えない)
 団員も同じ事を考えていたらしく、小声で副団長に訊いた。
「流石に、大丈夫ですよね」
「こんなできる新人、まさか逃しませんよね」
 それに副団長は、溜め息で応えた。
「団長が、ああいう人だからな。何とも言えん」
「でも、これだけ目撃者がいるんですよ」
「ナジム殿下と取り巻きだろう。圧力をかけても、金をばら撒いても、どうにかしそうじゃないか?」
 団員は何とも言えない顔で、口を閉じた。

 そして即日。
 ユーリ、カイ、ジンが、ドラゴンの卵を帝都に持ち込もうとしたとして、魔術団が報告書を上げた。そして即、帝都を危険にさらしたとして有罪判決を受けた。結果、ユーリは魔術団への就職取り消し、その上3人共帝都からの追放が決まり、カイは実家から絶縁された。
「3日以内に出て行けとはな」
 カイが乾いた笑いを浮べる。
「ボクはこのまま、行商に出て美味しい物探しをしてもいいんだけどね」
 ジンが呑気にそう言った。
「俺はまあ、セレムに帰るしかないな」
 ユーリは言って、水を飲んだ。
 3人は、キリーの家にこっそりと来ていた。
「何か証拠とかないのか?目撃者とか」
 キリーがイライラと訊く。
「森で誰にも会ってないしなあ」
「森の方から街道に出て来たのは見られてるんだけど、なぜか皆、急に口を閉ざしちゃってさあ」
「ナジムのクソ野郎どもが、脅してやがるんだぜ」
 キリーは頭を抱えた。
「調査もほとんどされてないなんて」
 しようとすると、「ナジム殿下の証言を疑うとは不敬である」と言われ、そうでなくとも、団長はナジム達の言いなりだ。
「こんな事でいいのか」
「権力を持つ者が黒と言えば黒。まあ、珍しい話じゃないだろ。
 腹は立つけどな」
 ユーリは言って、天井を見上げた。
(いつもそうだ。最初から何も持たない者は、何も持てないし、選べない。望んでも叶わないし、どこへも行けない。
 だから、何も望まないように、いつそれをなくしてもいいように、そうして生きて来たし、これからも生きていく。たまたま魔術の才能が出て、自分もひょっとしたらと、誤解しただけだ)
 ユーリはそう考え、望む事を諦めた。
「はあ。オレもセレムに行くかな。どうせ行く当てもないし、本格的に探索者として生きるのも悪くねえな」
 カイはニヤリとした。
「じゃあ、ボクもそうしようかな。魔物肉って美味しいもんね」
 ジンはそう言って、にっこりと笑った。
 キリーは嘆息し、言った。
「わかった。こっちで何とかできないかもう少し調べてみる。
 連絡は寄こせよ。いいな」
「はいはい」
 キリーは呑気な友人達に頭が痛いと思いながら、どこから手を付けようかと考え始めた。




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