銀の花と銀の月

JUN

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セレム

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「で、ユーリ。それで帰って来たと言うんだね」
 カリムが穏やかに言う。
 カリム・シラルは、一見穏やかなお爺さんという雰囲気だ。しかし、銀花楼の楼主として、男も女もたくさんの遊妓を抱え、上級貴族から破落戸じみた客までを相手に渡り合う立場だ。見かけ通りでは務まらない。
「はい。元々、魔術師としての才能が無ければ、ここでとっくに働いていたはずですしね」
 カリムは腕を組んで軽く溜め息をついた。
 その隣では、ラライエとレイリが座っている。男太夫と女太夫のトップだ。
「もし魔術師の才能がなければ、あの後レイリの禿になって、今頃は銀花楼の男太夫になってたのね」
 ラライエがそう想像するように言った。
「今からでも、店に出しますか?閨教育はしてませんけど」
 レイリが笑いながらカリムに訊く。
「はあ。魔術師の、それも天才とまで言われた才能があるのに、それを使わないのは惜しいですしね。第一、ユーリが大人しく客を取れるとは、ちょっと思えない」
 それに、ラライエはくすくすと笑い、レイリは吹き出すように笑った。
「いいでしょう。ユーリは探索者として、うちの依頼を最優先に。それと、魔道具の制作と。
 それらの利益から、太夫と同じ割合での花代を渡します。
 この店で育つ子は、売られてきた子と違い、落籍されるという事がない。ユーリもここの子だから、ここで一生を終える事になります。いいですね」
「はい」
 そして、ラライエとレイリは笑った。
「お帰り、ユーリ。まあ、死刑とかにならなくて良かったじゃないか」
 レイリが言うと、ラライエは
「あら。官僚でも貴族でも、上手く丸め込んで使えるようにならなきゃダメじゃないの。仕方のない子ね」
と言い、カリムは苦笑した。
「まあ、無事でよかったよ。お帰り」
「ただいま。てて様、レイリ兄さん、ラライエ姉さん」
 ユーリはほっとして、笑った。

 カイとジンは、別室でお茶を飲みながらユーリを待っていた。
 しかし、開店前できちんと準備をしていないとはいえ、見かける遊妓は男も女も流石は美人揃いだ。カイもジンも、異世界に迷い込んで来たかのような心地で、通りかかる遊妓達を見てないふりをしつつじっくりと見ていた。
「凄えな」
「う、うん。ユーリ、こんな人に囲まれて生活してたんだね」
「ああ。だから、顔自慢の帝都の半端な女にコナかけられても平然としてたんだな」
「そりゃあ、ここの人に比べたらねえ」
 銀花楼の遊妓は、男も女もいる。女遊妓を買うのはほぼ全員が男だが、男遊妓を買うのは、男も女もいる。さらに、男として買うのもいれば、女として買うのもいる。なので男遊妓は、女性と見紛う者もいれば、男らしい者もいた。
 それでも、どちらにしても、目を引くような美形が多いには違いない。
 夢見心地なような緊張しているかのような気持ちで待つカイとジンのところにユーリとカリムが来たのは、しばらくした頃だった。
 カリムはここの遊妓たちの親みたいなもので、ユーリにとっても同じく親のようなものだ。カリムの事を従業員達は、「てて様」と呼ぶ。
 そこでカリムが言ったのは、この先ユーリが探索者兼魔道具製作者として生きるという事と、同じチームを組むのなら、銀花楼の依頼を優先とするのを条件に、最低限の下宿代で、銀花楼が住居と食事の面倒はみる、という事だった。
 カイもジンも願ってもないと同意し、早速チームとして登録することになった。
 チーム名は『銀月』だ。

 次にユーリ達は、カリム直々に部屋へ案内された。
 勝手口から入ると従業員用の部屋を集めた区画があるが、それに渡り廊下でつながった離れがある。そこは昔、カリムの父親が道楽で鍛冶を始めた時に作った離れで、魔道具開発に必要な道具も揃っているし、小さいが風呂場もある。
「すっげえ!」
 カイはワクワクとした声を上げた。
「ここで着替えてから、中に入って下さい。探索者もお客として来店されますが、血なまぐさいものを連想させるものは、目に付かないようにしたいので。
 手入れや魔道具の開発もここでお願いしたい。
 寝起きのための部屋はこちらです」
 建物内に入ってすぐのところにある部屋を示される。
 ベッド、クローゼット、チェスト、机だけの小さい部屋だ。
「わあ!明るくてきれいな部屋ですねえ」
 ジンも目を輝かせて部屋を見回した。
「ありがとうございます!」
 カイとジンはカリムに頭を下げた。
「いえいえ。よろしくお願いしますよ。
 後の、食堂や風呂場の案内は、ユーリ、任せていいね」
「はい」
 カリムはそれで店の方へ歩いて行き、ユーリはカイとジンに向き直った。
「じゃあ、他を案内するよ」
 




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