銀の花と銀の月

JUN

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ダチョウ討伐合戦

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 ダチョウの魔物の被害があったのは、山裾の農家だった。普通のダチョウは草食だが、魔物になると雑食性になり、家畜と畑を食い荒らしたそうだ。その被害が、山裾を転々として続いている。
 次はどこに出るか、予想しなければならない。
「いたぞ」
 遠くから草を食べるグループを見て、カイが潜めながらも嬉しそうな声を上げる。
 首と足は白く、体の羽毛が、オスは黒、メスは灰褐色というのは、ダチョウと同じだ。
「消化の為に呑んだ石を飛ばして来るのと、あの逞しい足でのキックが要注意だな」
「羽と肉と皮は買い取り対象だからね。
 ああ。ステーキ食べたいなあ。首もいいんだよね」
 ジンも嬉しそうに言う。
「火で一気に燃やすのはダメだな。足を斬って動けなくするか?それとも頭を落とすか?」
 ユーリは油断なくダチョウの魔物から目を離さないまま訊く。
「頭かな。
 なるべく今回は、魔術なしで行こうぜ。エマにいちゃもんを付けられる危険があるからな」
「わかった」
 カイは完璧にエマ達に勝ちたいようだ。
「じゃあ、行くか」
 3人は群れを囲い込むように、そっと移動を開始した。

 エマ達はずんずんと山裾を歩き回っていた。
 ユンがダチョウの魔物の痕跡を追って、今日あたり出て来そうな所を予測しているのだ。ユンは狩人の娘で、弓も獲物を追う方法も知っている。おまけに、この依頼を受けようと、数日前から情報も集めていたのだ。
「ねえ、エマ。帝国魔術団副団長が、犯人の証拠がないって言ってたそうよ」
「証拠がないだけじゃないの?うまくごまかしてるのよ。これだから、貴族のボンボンは」
 エマが憎々し気に吐き捨てる。
「カイは弱小貧乏貴族の子らしいけど、ジンは商家の子らしいし、ユーリは捨て子で銀花楼に拾われて銀花楼の子として育ったらしいし」
「え?そうなの?」
「うん。普通なら遊妓として店に出る所だけど、魔術師の才能が出たから、特例なんだって」
 言いながら、ライラはエマの様子を見ていた。
 この程度は、調べなくても耳に入って来る話だ。それを知らないくらい、エマはユーリ達の事を目にも耳にも入らないように避けていたのだ。
(カーッとなったら冷静さがなくなるのがエマの悪い癖よね)
 ライラはそっと溜め息をついた。
 と、ユンが止まって小さい声で言った。
「見付けたわ」
「流石ユン!」
 声を押さえながらもエマは弾んだ声を出した。ライラも、エマの態度や勝負はともかく、ダチョウが見付かった事は嬉しい。
「狙った通りね。
 で、作戦は?」
 小さな群れで、ダチョウが河原で水を飲んだり休んだりしている。
「一番大きいやつよ。ライラと私は接近して狙うから、ユンは弓で、邪魔して来るやつを狙って」
「うん」
「いつでもいいわよ」
「じゃあ、行くわよ」
 ギリギリまで近付いて、ライラとエマが飛び込んで行く。
 ダチョウは接近して来るエマとユンに気付いて、警戒して集まった。
「行くわよ!」
 一番大きな個体を目指して突っ込んでいきかけた時、それが石を吐いて飛ばした。石とは言え、そのスピードは動体視力がいい人でも見えないくらいに早い。なので、石が大きいと当たった時のダメージも大きく、最悪の場合は死ぬ。
 ズガガガガとライラの盾に石がぶつかる音がする。
「これが切れたらしばらくは大丈夫のはず!今よ!」
 音が途切れた所で飛び出しかけたエマは、隣のダチョウが発射体勢に入ったのを見て慌ててライラの盾に戻り、吐き出し終えた一番大きなダチョウが、足元の石を呑み込むのを見た。
「あ、しまった。河原だから石がたくさんある!」
 エマとライラが青ざめた。
「ここら辺一帯の石を呑み込むまで、これは続くの?」
 ライラが盾で石の衝撃を受け止めながら言い、エマがどうしようかと慌て出した時、後方のユンからの矢がそのダチョウの首の付け根に刺さった。
「今よ!」
 慌てるダチョウの群れに、エマが突っ込んでいき、慌ててライラが後を追った。

 ダチョウの正面に立つ事を避けて石を回避し、同時に別の方向から接近する。その上、隠れた場所からジンが射た弓が直上から降りかかり、ダチョウの群れはパニックになっていた。
 その隙に接近したユーリとカイで、頭を斬って回る。
 近すぎて石は吐けず、強靭な足でキックしようとするが、カイの剣やユーリの魔銃剣の方が早い。
 しばらくすると、足や頭を失ったダチョウがゴロゴロと転がるばかりになった。なかなか、グロテスクな眺めだ。
「どれが一番大きいかな。フフフ。過食部分の肉も羽も皮も傷めてないから、これは期待できるぜ」
「これくらいのが柔らかくて美味しいんだよ」
「よし。じゃあ、しまい込んで協会へ持って行くぞ」
 それで片っ端から死体をバッグに突っ込み、ついでにどこかに巣を作っていないか探しながら協会へ戻る事にした。
 



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