銀の花と銀の月

JUN

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名物

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 エマ達虹の鳥は、矢が突き刺さり、胴体に切り傷が入った大きなダチョウを持ち込んだ。
 が、ユーリ達が次々とダチョウを取り出していくのを見て、自信がグラついた。
「か、数の勝負じゃないわ。1頭の買い取り金額よ」
 エマが言い、カイがその通りと頷く。
 この2チームの競争の事を知っている職員は、解体場に集まって見学していた。
「オレ達のは……これかな?」
 大きさや状態を見比べ、ユーリ達も比べる1頭を選び出す。
「さあ、勝負だぜ!」
 解体場の係員は、公平を期すためにこの後呼ばれて入り、どちらがどちらのチームの物かわからない状態で査定をする。
 係員は2体を見比べ、各々の査定金額を記入し、ダチョウの前に置いた。
「嘘ぉ!何でよ!?」
 エマが地団駄を踏む。
「こいつは、皮も羽毛も肉も価値がある。向こうのと違って、こっちは、胴体に大きな傷があるからな。その分マイナスだ」
 エマは悔しそうに、ユーリ達のダチョウを見た。
「確かに、首や足しか傷が入ってないわ」
「他のもよ」
 ライラとユンが見て回ってそう声を上げる。
「そ、そっちは魔術士がいるからよ。フェアじゃないわ」
 エマが言うのに、カイが嘆息した。
「今更かよ。
 でも、ユーリは一切魔術を使ってないぜ」
「そんなの、何とでも言えるじゃない」
 エマはそう言い募る。
 が、魔銃剣の先の刃を見て、職員が
「ああ。拭いてあるけど、脂が付いてるな」
と言うのを聞いて、言う。
「そんなの、後から斬って付けたのかも知れないじゃない!」
「ええ。そこまで疑う?」
 ユーリ、ジン、カイだけじゃなく、ライラ、ユンまでもが困惑した。
「いいわ。今回は負けておいてあげる。次は完膚なきまでに叩きのめしてあげるから!」
 そう言って指を突きつけると、走って行った。
「あ、エマ!」
 ライラとユンが慌てて後を追って行く。
「あ、代金!ああ。行っちまった」
 職員はそう言って、ポリポリとこめかみをかいた。

 銀花楼に連絡を入れて訊くと、肉は5頭分欲しいというので、それだけ受け取って、残りは協会に売る。
 その肉は、明日、赤ワイン煮や香草パン粉焼きなどになって出て来るらしいが、いい部分は客用になるはずだ。
 肉を持ち帰って調理場の料理人に渡し、明日の食事を楽しみに、ユーリとカイは刃の手入れをする。
「虹の鳥かあ。俺達に突っかかるやつもいるけど、随分ましにはなったのに、あそこだけは頑なだよな」
 ユーリが言うと、カイが、
「というより、エマが、かな」
と頷く。
「補償されたわけでもなくて、文句を言う相手もいないと気が済まないんじゃないかな」
 ジンが作業を見ながらそう言った。
「ああ。叔父と従兄がって言ってたな」
「気の毒だとは思うぜ。でも、俺達だって気の毒だ」
 今の所、ユーリ達への風当たりはかなり穏やかにはなっている。だが、公式にはユーリ達が追放処分を受けているので、おかしいとは思っているだろうし、好意的な者は、ナジムや取り巻きを疑っている。
 それこそ、証拠がないが。
「まあ、こっちから刺激しないようにしよう」
「それがいいね」
「チェッ。何か負けた気がして悔しいぜ」
 しかしユーリ達の思惑とは裏腹に、エマがこれからことごとく絡み、勝負を持ちかけ、それがこの支部の名物になって行くとは、この時は誰も、夢にも思わなかったのだった。

 魔の森で作戦中の魔術団は、夕食の時間を迎えていた。
 ナジムは優遇されてはいるが、普通に食べているような料理が出るわけではない。帝国魔術団名物、魔の森遠征メシだ。ミミズやヘビや昆虫を調理してある。
 ナジムとスレードとモルドは、危険だからと危ない訓練は参加していないが、食事だけは気に入らないからと街へ行くわけにもいかない。
「早く帰って、セレムに行きたいな」
 それを聞いていた団員は、思わずナジムをガン見した。
「ユーリが落ちぶれて困っている所を想像すると、溜飲が下がりますなあ」
 スレードがすかさずそう言って、団員は
(ああ、遊郭に行こうという意味じゃないのか)
と思ったが、ユーリ達とのいきさつは知れ渡っているので、顔をしかめた。
 モルドは内心で、
(落ちぶれている、かなあ。案外平気で、楽しんでたりして)
と思った。
「ユーリを呼び出して、相手でもさせますか、殿下」
「スレード。お前」
 ナジムに見られ、スレードはイヒヒと笑った。
「違いますけど、大人しくサービスさせたり無理難題をふっかけたりするのも楽しそうでしょう」
「スレード」
「はい」
「お前、いい事を思い付くな」
「殿下こそ」
「わははは!」
 笑うナジムとスレードに、モルドと給仕当番の団員は、呆れかえった目を向けながら、嘆息した。


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