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イリーナ・セエトの子
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テーブルを囲んでユーリとカイとジンが自己紹介すると、ルルシャは
「銀月さんですか!お話は先輩から伺いました。よろしくお願いします」
とにこやかに言って、上品な仕草で紅茶を飲んだ。
そこで、魔物の話や銀花楼の話、この間の騒動の話などをしていたが、やはりイリーナの話になった。
「知らなかったよ、ニキータさんがイリーナの弟だったなんて」
ユーリはそう言い、ニキータはぎこちなく笑った。
「まあ、宣伝するような事ではないからな」
「でも、あのイリーナ様の杖を拝見できて、感激しました。やっぱりイリーナ様は、女性、いえ全国民の憧れですもの。ましてや、たとえわずかにしろ魔術に関わる者なら、崇拝の対象です」
ルルシャがどこか危ない目付きで言い、ユーリ、カイ、ジンはやや後ろに下がって小声でかわした。
「この人大丈夫か?」
「色んな人が世の中にはいるんだよ、カイ」
「暖かく見守ってあげようね、ボクらに被害がないなら」
するとルルシャは、突然真顔になって、言い出した。
「イリーナ教の信者である私です。関係する事は調べ上げました」
「この人イリーナ教って言ったぜ。信者って認めたぜ」
「お腹のお子の父親は誰なのか」
カイの言葉を無視してルルシャが言うと、ミリアが息を詰めた。
「イリーナ様の子お子はどこへ行ってしまったのか。そして、イリーナ様は本当に心臓発作だったのか」
ニキータのカップを持つ手に力が入った。
「当時、父親の予想としましては、同僚、団長、辺境伯の息子などが上がっておりましたが、皇帝陛下というのがございました。
だからイリーナ様は、おいそれと父親の名を明かさなかったのではないか。私もそう思います。
そうなると、イリーナ様は皇妃の誰かの命を受けた者に殺された可能性がありますし、お子も殺されたのかも知れない――いえ、皇帝陛下のお血を引かれるなら、殺すのはためらわれる。そうなれば、ご落胤です。不文律に従い、このセレムで遊妓として過ごすように、送られたのかも知れません」
誰もが、言葉もなく聞いていた。
セレムという、まさにここの話だ。そしてその通りなら、
「現在は18歳かな」
「いえ、命日が過ぎたので、19歳でしょう」
ニキータとミリアは言葉を発する事無く、無表情を保っていた。その横で、ユーリ達はああだこうだと考える。
「ユーリ、該当するやつっているのか?」
カイが勢い込んで聞けばルルシャも身を乗り出すようにして返事を待つ。
「18や19と言えば、俺と同じくらいだからなあ。銀花楼だとジルラ、フルイエ。ほかの見世に、ナナセとゲイリーがいるな」
ユーリが思い出しながら言うと、ジンがううんと唸る。
「フルイエは目の色が陛下と同じ緑だね。ジルラは、言われてみれば鼻と口許がイリーナに似てるかな?」
「そんなにじっくりと、比べる気になって見た事ないからなあ」
ユーリも当惑気に言うと、ミリアが笑いながら割って入った。
「はいはい。そうと決まったわけじゃないし、もしそうなら、ご落胤が誰か詮索するのはまずいんじゃないの?」
それで全員が、
(そうだった。隠すためにセレムにやるのに、探してどうするんだ)
と思い至った。
ルルシャは咳払いをして、切り替えた。
「それはそうと、ニキータさんは皇都でも名高い武具職人だったのに、どうしてセレムへ?」
「セレムは迷宮に一番近い街だからな。皇都よりもここの方が何かといんじゃないかと思ったんだ。私自身の向上のためにも」
「そうなんですか」
柔らかくニキータがそう言って返すと、ルルシャは笑い返して、
「やっぱり、魔物の最前線って感じですか」
と言う。
「俺達としても、ニキータさんが近くにいてくれるのは、凄くありがたいよな」
ユーリが言い、カイとジンが頷く。
「ああ。研ぎひとつにしても、違うからな」
「このトゥヤルザ帝国の最前線と言えば迷宮と魔の森だけど、ニキータさんがセレムに来てくれたのはラッキーだったよね」
「ははは。だからって、無茶な戦い方をするんじゃないぞ。武具は修理できても、人間はそうはいかないんだからな」
ニキータに笑って言われ、ユーリ達は素直に
「はあい」
と返事した。
そしてそろそろとユーリ達とルルシャが一緒に帰って行くと、ニキータとミリアはそれを見送り、見えなくなったところで微笑みを陰らせた。
「あのルルシャって子、悪い子ではないんでしょうけど……」
「ああ。でも、要注意だな」
この平穏が続く事。それだけをニキータとミリアは祈った。
「銀月さんですか!お話は先輩から伺いました。よろしくお願いします」
とにこやかに言って、上品な仕草で紅茶を飲んだ。
そこで、魔物の話や銀花楼の話、この間の騒動の話などをしていたが、やはりイリーナの話になった。
「知らなかったよ、ニキータさんがイリーナの弟だったなんて」
ユーリはそう言い、ニキータはぎこちなく笑った。
「まあ、宣伝するような事ではないからな」
「でも、あのイリーナ様の杖を拝見できて、感激しました。やっぱりイリーナ様は、女性、いえ全国民の憧れですもの。ましてや、たとえわずかにしろ魔術に関わる者なら、崇拝の対象です」
ルルシャがどこか危ない目付きで言い、ユーリ、カイ、ジンはやや後ろに下がって小声でかわした。
「この人大丈夫か?」
「色んな人が世の中にはいるんだよ、カイ」
「暖かく見守ってあげようね、ボクらに被害がないなら」
するとルルシャは、突然真顔になって、言い出した。
「イリーナ教の信者である私です。関係する事は調べ上げました」
「この人イリーナ教って言ったぜ。信者って認めたぜ」
「お腹のお子の父親は誰なのか」
カイの言葉を無視してルルシャが言うと、ミリアが息を詰めた。
「イリーナ様の子お子はどこへ行ってしまったのか。そして、イリーナ様は本当に心臓発作だったのか」
ニキータのカップを持つ手に力が入った。
「当時、父親の予想としましては、同僚、団長、辺境伯の息子などが上がっておりましたが、皇帝陛下というのがございました。
だからイリーナ様は、おいそれと父親の名を明かさなかったのではないか。私もそう思います。
そうなると、イリーナ様は皇妃の誰かの命を受けた者に殺された可能性がありますし、お子も殺されたのかも知れない――いえ、皇帝陛下のお血を引かれるなら、殺すのはためらわれる。そうなれば、ご落胤です。不文律に従い、このセレムで遊妓として過ごすように、送られたのかも知れません」
誰もが、言葉もなく聞いていた。
セレムという、まさにここの話だ。そしてその通りなら、
「現在は18歳かな」
「いえ、命日が過ぎたので、19歳でしょう」
ニキータとミリアは言葉を発する事無く、無表情を保っていた。その横で、ユーリ達はああだこうだと考える。
「ユーリ、該当するやつっているのか?」
カイが勢い込んで聞けばルルシャも身を乗り出すようにして返事を待つ。
「18や19と言えば、俺と同じくらいだからなあ。銀花楼だとジルラ、フルイエ。ほかの見世に、ナナセとゲイリーがいるな」
ユーリが思い出しながら言うと、ジンがううんと唸る。
「フルイエは目の色が陛下と同じ緑だね。ジルラは、言われてみれば鼻と口許がイリーナに似てるかな?」
「そんなにじっくりと、比べる気になって見た事ないからなあ」
ユーリも当惑気に言うと、ミリアが笑いながら割って入った。
「はいはい。そうと決まったわけじゃないし、もしそうなら、ご落胤が誰か詮索するのはまずいんじゃないの?」
それで全員が、
(そうだった。隠すためにセレムにやるのに、探してどうするんだ)
と思い至った。
ルルシャは咳払いをして、切り替えた。
「それはそうと、ニキータさんは皇都でも名高い武具職人だったのに、どうしてセレムへ?」
「セレムは迷宮に一番近い街だからな。皇都よりもここの方が何かといんじゃないかと思ったんだ。私自身の向上のためにも」
「そうなんですか」
柔らかくニキータがそう言って返すと、ルルシャは笑い返して、
「やっぱり、魔物の最前線って感じですか」
と言う。
「俺達としても、ニキータさんが近くにいてくれるのは、凄くありがたいよな」
ユーリが言い、カイとジンが頷く。
「ああ。研ぎひとつにしても、違うからな」
「このトゥヤルザ帝国の最前線と言えば迷宮と魔の森だけど、ニキータさんがセレムに来てくれたのはラッキーだったよね」
「ははは。だからって、無茶な戦い方をするんじゃないぞ。武具は修理できても、人間はそうはいかないんだからな」
ニキータに笑って言われ、ユーリ達は素直に
「はあい」
と返事した。
そしてそろそろとユーリ達とルルシャが一緒に帰って行くと、ニキータとミリアはそれを見送り、見えなくなったところで微笑みを陰らせた。
「あのルルシャって子、悪い子ではないんでしょうけど……」
「ああ。でも、要注意だな」
この平穏が続く事。それだけをニキータとミリアは祈った。
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