銀の花と銀の月

JUN

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男の意地

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「邪教の信徒よ、思い知りなさい!」
 センリアは魔術を叩きつけた。
 狼煙が上がり、最小限の警護官を残して兵が駆けつけて行ったのはつい先ほどの事だ。
 大丈夫だろうか、と心配しながら狼煙の上がった方向を見ていると、別の方向から強烈な風が叩き込まれて警護官数名が吹き飛ばされ、センリアとリアンは警護官の張った盾に守られていた。
 だが、ほっとすると同時に忍び寄っていた別の者がその警護官を剣で斬り、ギョッとしているうちに、センリアとリアン以外に意識を保っている者はいなくなっていたのだ。
 警護官をするくらいだ。腕はいい。それをこうも短時間に無力化してしまえる相手がいる事に、リアンはアトラ原理主義というグループに戦慄した。
 しかしセンリアは、これ以上の狼藉は許さないと、怒りも露わに立ち向かった。
 だが、センリアが叩きつけた炎はいとも容易くその魔術師に防がれてしまう。
「クッ!」
 続けて、渾身の魔術を放つ。が、全て防がれ、センリアは魔力が切れてふらりと膝をついた。
「公女殿下!」
 リアンはセンリアの前に出ると、のっそりと近付いて来るその2人組に、抜いた剣を向けた。
「殿下、無理ですわ」
 リアンの剣先は、微かに揺れている。
 リアンも、自分の実力など嫌という程知っている。魔術はセンリアより下だと今のセンリアの攻撃でよくわかった。剣も、警護官に並ぶ事すら不可能だ。
 それでも。
「それでも、逃げるわけには行かないのですよ、公女殿下」
 センリアは、震えながらリアンを見上げた。
 その震えが、怒りの為なのか恐怖の為なのかはわからない、いや、知りたくなどなかった。
「な、なぜです。同盟のためですか。だったら」
「いいえ。男として、女の子を置いて逃げるなんてできるわけがないじゃないですか」
 リアンは引き攣った笑いを浮べながら、近付いて来る男達を見た。
「死にさえしなければ、大丈夫」
「はあ!?あなた、皇子殿下なんですのよ!?何かあったら、我が国がトゥヤルザに申し開きができないじゃありませんか!」
 センリアはリアンを怒鳴りつけた。
 リアンはもう、口を開く余裕もなかった。
(ユーリがいれば何とかしてくれる)
 アトラ原理主義の剣士は、無造作に剣を上げ、そして、振り下ろした。
「うわっ!」
 辛うじて受け止めたが、一撃で腕が痺れた。
 センリアを背後に庇う形で、リアンは気合だけで剣を手放さずに立つ。
 センリアの後ろには祠があり、その祠は魔道具の生み出す結界で守られている。リアンが負けると、センリアもやられるだろうし、魔道具を壊されると祠の封印も解かれるだろう。
 意地でも、粘る必要があった。
 センリアは、自分よりも弱い、内心バカにしていたリアンが自分をかばって立つのに唖然とし、イライラとしていた。
 なんて大馬鹿なのだろうか、と。
 そのセンリアの目の前で、ほんの形ばかり剣を習っただけのリアンは、傷を増やしていく。
「もうやめて、いいから、もうやめて!」
「やめないよ!」
 血しぶきが飛ぶ。足元もフラフラとおぼつかない。
 それでもリアンは、剣を下げず、相手から目を離さずに立ち続ける。
 襲撃して来た男の方が、
「邪魔しなければ殺しまではしない。もう黙って見てろ」
と言うが、リアンは奥歯を噛み締め、血塗れになりながらも、そこをのこうとはしない。
 呆れたのか業を煮やしたのか、魔術師が杖を掲げた。
「もういい。俺がやる」
 リアンは内心、焦った。精一杯防御して、何発もつか――いや、一撃ですらもつ気がしない。
「ユ、ユーリ!まだか!」
 叫んだ時、男が氷の槍を射出した。
 それが、横合いから吹き付けられた火柱で瞬時に溶かされた。
「やっぱり本命が来てたか」
 ユーリが魔銃剣を構えており、カイが
「させねえよ!」
と言いながら、剣を片手に躍りかかって行く。
 そしてユーリが魔術師に斬りかかって行くのと同時にジンがリアンのそばに走り寄る。
「殿下!」
「やあ、良かった」
 リアンはふわりと笑って、座り込んだ。









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