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商人の国
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「その場合損失はどのように補填されるのですか」
「もし失敗した場合責任は誰がとるのです」
「警備せずにみすみす封印を解かれたら、その場合の損失は」
喧々諤々と交わされる怒号のような意見交換だったが、待っている方の身になれば、こうとしか言えない。
「で、結局どうするのかな。早く決めてくれないかな」
ユーリは議場の隅で欠伸をかみ殺した。
南の、海に面した国、ナカシャ。東西に細長い国で、トゥヤルザ帝国とウヨタリ公国と国境を接する共和国だ。
この国の2国との国境にほど近い場所に祠はあり、まだ封印が破られていないので、トゥヤルザ帝国とウヨタリ公国の兵はナカシャ共和国の祠の警備に向かった。
先に手紙で知らせておいたので、国境に着く頃には迎えが出て、スムーズに祠へ行けるものと誰もが思っていたのだが、手違いが起こった。
「聞いていない?」
国境警備隊の者は、困ったように返事をした。
「はい。議会から何の指示も受けておりません。ですので、軍隊を通すわけには参りません」
それに、ユーリ、カイ、ジン、キリーは小声で同意した。
「確かになあ。上からの指示抜きで通していいグループじゃないよな」
カイが呑気に言うと、
「でも何で指示が出てないんだろうね」
とジンが首を傾げた。
「さあ。手紙は先に送っておいたと聞いているが」
キリーは不信感も露わに責任者であるリアンのいる方へ目を向け、
「まさか、イタズラだと思われてたとか」
とユーリは冗談を言った。
しかしこれが冗談ではなく、まさに、どうするべきか緊急開催された議会でもめにもめ、本物かニセモノか疑う意見も出たのだった。
そして連合軍側の出した結論が、「取り敢えず状況を知りたい。他国の軍人を通せないのであれば、探索者が見て来るしかないのでは」という事であり、銀月が先に祠と議会の様子を見て来る事になったのだった。
「頼むよ」
リアンが言うのに、側近が続ける。
「なるべく早く入国できるように交渉をしていただけますよう、お願いします。ここで殿下を野営などさせるわけにはいきませんので」
「もしそうなったら、あなた方も野営ですからね」
お願いには程遠い顔付きで頼まれて、ユーリ達はナカシャに入国したのだった。
周辺国は邪神問題でピリピリした空気があるというのに、ナカシャの首都は、そうは見えなかった。活気があり、人々は笑顔で行き交い、市場には物がたくさんあった。
議会で会議が開かれているというので行ってみると、ここでは議員が、眉間にしわを寄せ、唾を飛ばして論戦し、頭を抱えていた。
このナカシャは州民に選挙で選ばれた代表者が集まって議会を運営し、その議会で国の事を決めるというシステムになっている。
それは国民の意見が反映しやすいという利点はあるが、多数決で決める為、何かと時間がかかるという欠点もあった。
そのうえ、ナカシャは漁師と商人の国だ。何事にも利益というものが前提に立つ考え方をする者も多く、それが更に決定を複雑にしている。
今回の邪神対策にしてもそうだった。祠に警備がいると言われたが、それを聞いて、「間違いないのか」「軍や警察ではだめなのか」「それはどのくらいの人員で予算はどのくらいなのか」「他国に協力として軍を派遣するのは法律に違反していないのか」「そもそも祠に邪神を封印していることは確かなのか」とケチのつけ合いのような状態で話が進んでいなかった。
「だめだな、こりゃ」
ユーリ達は祠の前に行って、一応地元の警察が警備しているのを見て、報告に戻った。
「何という……」
誰もが言葉を失い、頭を抱えた。
「祠について理解してたんじゃないのか?」
リアンの問いに、側近は、
「それはこの前の選挙で落ちた、前の代表の考えです」
と答えた。
「今の議会は、商人が強い合理派が多数を占めています。前時代的な邪神なんて話は眉唾物だと考える人が多いんです」
ウヨタリから参加している兵の隊長がそう言って、溜め息をつく。
「ついでに言うと、軍に反対する国民もいて、他国の軍人が入国できないのもこの派閥のせいです」
キリーが言った。
「という事は、祠の警備はナカシャ任せにするっていう事になるのかな」
リアンは言って、周りを見た。
「それで大丈夫そうなのか?」
「今見て来たら、警察が何人かで警備するだけだったようですよ」
ユーリが言うと、ウヨタリの隊長が絶望的な顔をした。
「勝手に、ナカシャ周辺で警備しよう。それで、銀月は中に入って、祠の周辺をブラブラと観光しててもらおうかな。その間に、議会をせっせとせっつこう」
リアンの提案に、頷くしかなかった。
「もし失敗した場合責任は誰がとるのです」
「警備せずにみすみす封印を解かれたら、その場合の損失は」
喧々諤々と交わされる怒号のような意見交換だったが、待っている方の身になれば、こうとしか言えない。
「で、結局どうするのかな。早く決めてくれないかな」
ユーリは議場の隅で欠伸をかみ殺した。
南の、海に面した国、ナカシャ。東西に細長い国で、トゥヤルザ帝国とウヨタリ公国と国境を接する共和国だ。
この国の2国との国境にほど近い場所に祠はあり、まだ封印が破られていないので、トゥヤルザ帝国とウヨタリ公国の兵はナカシャ共和国の祠の警備に向かった。
先に手紙で知らせておいたので、国境に着く頃には迎えが出て、スムーズに祠へ行けるものと誰もが思っていたのだが、手違いが起こった。
「聞いていない?」
国境警備隊の者は、困ったように返事をした。
「はい。議会から何の指示も受けておりません。ですので、軍隊を通すわけには参りません」
それに、ユーリ、カイ、ジン、キリーは小声で同意した。
「確かになあ。上からの指示抜きで通していいグループじゃないよな」
カイが呑気に言うと、
「でも何で指示が出てないんだろうね」
とジンが首を傾げた。
「さあ。手紙は先に送っておいたと聞いているが」
キリーは不信感も露わに責任者であるリアンのいる方へ目を向け、
「まさか、イタズラだと思われてたとか」
とユーリは冗談を言った。
しかしこれが冗談ではなく、まさに、どうするべきか緊急開催された議会でもめにもめ、本物かニセモノか疑う意見も出たのだった。
そして連合軍側の出した結論が、「取り敢えず状況を知りたい。他国の軍人を通せないのであれば、探索者が見て来るしかないのでは」という事であり、銀月が先に祠と議会の様子を見て来る事になったのだった。
「頼むよ」
リアンが言うのに、側近が続ける。
「なるべく早く入国できるように交渉をしていただけますよう、お願いします。ここで殿下を野営などさせるわけにはいきませんので」
「もしそうなったら、あなた方も野営ですからね」
お願いには程遠い顔付きで頼まれて、ユーリ達はナカシャに入国したのだった。
周辺国は邪神問題でピリピリした空気があるというのに、ナカシャの首都は、そうは見えなかった。活気があり、人々は笑顔で行き交い、市場には物がたくさんあった。
議会で会議が開かれているというので行ってみると、ここでは議員が、眉間にしわを寄せ、唾を飛ばして論戦し、頭を抱えていた。
このナカシャは州民に選挙で選ばれた代表者が集まって議会を運営し、その議会で国の事を決めるというシステムになっている。
それは国民の意見が反映しやすいという利点はあるが、多数決で決める為、何かと時間がかかるという欠点もあった。
そのうえ、ナカシャは漁師と商人の国だ。何事にも利益というものが前提に立つ考え方をする者も多く、それが更に決定を複雑にしている。
今回の邪神対策にしてもそうだった。祠に警備がいると言われたが、それを聞いて、「間違いないのか」「軍や警察ではだめなのか」「それはどのくらいの人員で予算はどのくらいなのか」「他国に協力として軍を派遣するのは法律に違反していないのか」「そもそも祠に邪神を封印していることは確かなのか」とケチのつけ合いのような状態で話が進んでいなかった。
「だめだな、こりゃ」
ユーリ達は祠の前に行って、一応地元の警察が警備しているのを見て、報告に戻った。
「何という……」
誰もが言葉を失い、頭を抱えた。
「祠について理解してたんじゃないのか?」
リアンの問いに、側近は、
「それはこの前の選挙で落ちた、前の代表の考えです」
と答えた。
「今の議会は、商人が強い合理派が多数を占めています。前時代的な邪神なんて話は眉唾物だと考える人が多いんです」
ウヨタリから参加している兵の隊長がそう言って、溜め息をつく。
「ついでに言うと、軍に反対する国民もいて、他国の軍人が入国できないのもこの派閥のせいです」
キリーが言った。
「という事は、祠の警備はナカシャ任せにするっていう事になるのかな」
リアンは言って、周りを見た。
「それで大丈夫そうなのか?」
「今見て来たら、警察が何人かで警備するだけだったようですよ」
ユーリが言うと、ウヨタリの隊長が絶望的な顔をした。
「勝手に、ナカシャ周辺で警備しよう。それで、銀月は中に入って、祠の周辺をブラブラと観光しててもらおうかな。その間に、議会をせっせとせっつこう」
リアンの提案に、頷くしかなかった。
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