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ランナー(3)ミニ駅伝大会
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瞬く間に、話はまとまり、計画は進んで行った。出身大学の陸上部は、箱根駅伝が終わった所だったが、トレーニング代わりにも、選手達は参加してくれるという。そして近辺の警察官からも、そういう事なら出てみたいと希望する人が多数いた。
おかげで、5人チームが8チームもできた。
「驚きだな、直」
「全くだねえ」
8色のたすきを用意しながら、僕と直は驚くばかりだ。
「これで、上手くいくといいねえ」
「勝っても負けてもな」
ミニ駅伝大会の成功を、祈るばかりである。
「いい天気になったねえ」
徳川さんが空を見上げる。
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「ぼくも応援頑張る!」
「ぼくも!」
隣の康介と甥の敬は、手作りの小さい旗を持って、ブンブンと振っている。
「近付かないで、応援するんだぞ」
兄が2人に言って聞かせる。
御崎 司。頭脳明晰でスポーツも得意。クールなハンサムで、弟から見てもカッコいい、ひと回り年上の頼れる自慢の兄である。両親が事故死してからは親代わりとして僕を育ててくれ、感謝してもしきれない。警察庁キャリアで、警視正だ。
「興奮してついて走り出さないように注意しておかないと」
御崎冴子。姉御肌のさっぱりとした気性の兄嫁だ。母子家庭で育つが母親は既に亡い。
「そうね。子供はやりそうだわ」
双龍院京香。僕と直の師匠で、隣に住んでいる。大雑把でアルコール好きな残念な美人だが、面倒見のいい、頼れる存在だ。
冴子姉の心配に、京香さんも、苦笑しつつも同意する。
「元気でいいなあ。僕なんて、幼稚園の運動会で、父兄参加の競技で走るのが当たらなくて、心からホッとしたからなあ」
京香さんの夫である康二さんが苦笑して言い、
「小学校はそれがなくて良かったですよ。
もう少ししたら、司さんもですねえ。司さんは大丈夫そうですね」
と、兄と、参観日や運動会などの行事での父兄の大変さを話し始めた。
「千穂さん。テープ係、よろしくお願いしますね」
ゴールテープを持つのは、千穂さんと大学のマネージャーである。
「選手も位置に着いたねえ」
「じゃあ、始めるか」
「チッ!」
スタートの合図は、監督が出す。
「お願いします」
「はい。
では、位置に着いて。用意……」
パン!
スタートピストルが鳴り、8人が一斉にスタートした。
やはり早いのは、現役大学生、次に警察チームだ。しかし、まだまだわからない。風岡チームも、ミニ駅伝が決まってから、趣味で続けていたランニングをトレーニングに切り替えてきたらしい。
「頑張れーっ!」
「頑張って―っ!」
敬と康介も、旗を振って、応援で熱くなってダウンがいらなくなるくらいだ。
「ああ、ドキドキするなあ」
「係長。打ち上げ会場の設営、完了しました!」
陰陽課と麹町署の強行犯係と盗犯係は、休日にもかかわらずボランティアで手伝ってくれているので、打ち上げで労うだけだが、それでいいと言ってくれた。なので、僕は昨夜、しっかりと仕込みを済ませておいた。
後は、この結果に満足して、風岡さんが逝ってくれれば成功だ。
僕達は、レースを見守った。
意外と社会人達も頑張って、結果がわからない。大学の練習コースを使い、1人1周、スタートも交代もゴールも同じ地点にしている。そして、反対側には給水地点もちゃんとある。
「いけーっ!」
「頼むぞーっ!」
そして、アンカーにたすきが渡った。
奇しくも、風岡さん、大島さん、現役選手、3人がほぼ同時にスタートをする事になった。
「これは面白い展開だねえ」
僕達は、固唾を呑んで、彼らの背中を見送った。
おかげで、5人チームが8チームもできた。
「驚きだな、直」
「全くだねえ」
8色のたすきを用意しながら、僕と直は驚くばかりだ。
「これで、上手くいくといいねえ」
「勝っても負けてもな」
ミニ駅伝大会の成功を、祈るばかりである。
「いい天気になったねえ」
徳川さんが空を見上げる。
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「ぼくも応援頑張る!」
「ぼくも!」
隣の康介と甥の敬は、手作りの小さい旗を持って、ブンブンと振っている。
「近付かないで、応援するんだぞ」
兄が2人に言って聞かせる。
御崎 司。頭脳明晰でスポーツも得意。クールなハンサムで、弟から見てもカッコいい、ひと回り年上の頼れる自慢の兄である。両親が事故死してからは親代わりとして僕を育ててくれ、感謝してもしきれない。警察庁キャリアで、警視正だ。
「興奮してついて走り出さないように注意しておかないと」
御崎冴子。姉御肌のさっぱりとした気性の兄嫁だ。母子家庭で育つが母親は既に亡い。
「そうね。子供はやりそうだわ」
双龍院京香。僕と直の師匠で、隣に住んでいる。大雑把でアルコール好きな残念な美人だが、面倒見のいい、頼れる存在だ。
冴子姉の心配に、京香さんも、苦笑しつつも同意する。
「元気でいいなあ。僕なんて、幼稚園の運動会で、父兄参加の競技で走るのが当たらなくて、心からホッとしたからなあ」
京香さんの夫である康二さんが苦笑して言い、
「小学校はそれがなくて良かったですよ。
もう少ししたら、司さんもですねえ。司さんは大丈夫そうですね」
と、兄と、参観日や運動会などの行事での父兄の大変さを話し始めた。
「千穂さん。テープ係、よろしくお願いしますね」
ゴールテープを持つのは、千穂さんと大学のマネージャーである。
「選手も位置に着いたねえ」
「じゃあ、始めるか」
「チッ!」
スタートの合図は、監督が出す。
「お願いします」
「はい。
では、位置に着いて。用意……」
パン!
スタートピストルが鳴り、8人が一斉にスタートした。
やはり早いのは、現役大学生、次に警察チームだ。しかし、まだまだわからない。風岡チームも、ミニ駅伝が決まってから、趣味で続けていたランニングをトレーニングに切り替えてきたらしい。
「頑張れーっ!」
「頑張って―っ!」
敬と康介も、旗を振って、応援で熱くなってダウンがいらなくなるくらいだ。
「ああ、ドキドキするなあ」
「係長。打ち上げ会場の設営、完了しました!」
陰陽課と麹町署の強行犯係と盗犯係は、休日にもかかわらずボランティアで手伝ってくれているので、打ち上げで労うだけだが、それでいいと言ってくれた。なので、僕は昨夜、しっかりと仕込みを済ませておいた。
後は、この結果に満足して、風岡さんが逝ってくれれば成功だ。
僕達は、レースを見守った。
意外と社会人達も頑張って、結果がわからない。大学の練習コースを使い、1人1周、スタートも交代もゴールも同じ地点にしている。そして、反対側には給水地点もちゃんとある。
「いけーっ!」
「頼むぞーっ!」
そして、アンカーにたすきが渡った。
奇しくも、風岡さん、大島さん、現役選手、3人がほぼ同時にスタートをする事になった。
「これは面白い展開だねえ」
僕達は、固唾を呑んで、彼らの背中を見送った。
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