手出しさせてやろうじゃないの! ~公爵令嬢の幼なじみは王子様~

薄影メガネ

文字の大きさ
35 / 58
本編

33.かけがえのない存在

しおりを挟む
 エルフリーデの告白を聞いてジュードはエルフリーデの華奢な身体をグイッと抱き寄せ顔を上向かせると、その可憐な花びらのような形をした唇を覆うように自らの唇を重ねた。そうして奪うように深くジュードはエルフリーデに口づけた。

「ふぁっ……」

 小さく声を上げてエルフリーデはジュードの着ている服をギュッと握り締める。そうしてジュードの強い抱擁と口づけに始めは必死に耐えて身体を硬くしていたエルフリーデが、次第に肩の力を抜いて身を任せるようにジュードの腕の中に身体を預けてきた。
 無抵抗にジュードをそのまま受け入れてくれたエルフリーデが愛しくて、ジュードはエルフリーデのチョコレートを連想させるふわふわの栗色の髪ごと肩を掴んでさらに強く抱き寄せた。き抱くようにエルフリーデの身体にまわされた手がエルフリーデの服にしわを作り。華奢なエルフリーデの細腰をきしませる。

「……っ!」

 その力強さに一瞬ビックリしてエルフリーデは身体を強張らせたけれど、ギシッと弓なりに身体を反らしたエルフリーデの身体が壊れそうなくらい強く抱き締めても、エルフリーデは無抵抗のまま逃げずに大人しくジュードの腕の中に収まっている。エルフリーデが本当にジュードを受け入れているのが分かって、ジュードは口づけたまま静かに息を吐き出した。

 互いの唇を合わせながらゆっくりとエルフリーデの身体をベッドに横たえて組み敷いて、それからそっと唇を離す。トサッとベッドの上に寝かされたエルフリーデは、頬を赤く染めて息も絶え絶えにとろんと目を潤ませながら見下ろすジュードを見つめ返している。互いの息がかかるくらい近くに顔を近づけ見つめ合いながら、ジュードは唇をエルフリーデのものに何度も落として息つく暇もないくらい何度も唇を重ねた。

 少しだけ唇を離すとエルフリーデのあえぐように半ば開かれた可憐な唇が、ジュードのものに触れた摩擦で赤くなっているのが分かる。唾液で濡れてしっとりと湿った甘く柔らかい感触のそこへもう一度唇を重ねながらエルフリーデの両手を掴んでベッドに縫い付ける。抱き締めるように身体を重ねて体重を下ろすとエルフリーデが「……ぁっ」と戸惑いの声を出してくすぐったそうに身動みじろいだ。

「……リー、本当に怖くないの? 僕が手を出そうと近付いたときは逃げたのに。今は逃げなくてもいいの?」
「ジュードのいじわる……」

 重ねた唇をわずかに離して、互いの唇が触れるか触れないかのギリギリの距離からジュードが意地の悪い質問をすると。エルフリーデは恥ずかしそうに目を潤ませて泣きそうな顔をした。ジュードの意地悪な質問に怒って唇をとがらせると、ねてプイッと横を向いてしまった。

「ごめん、リーがあんまり可愛い反応をするからつい意地悪したくなっちゃったんだ。謝るからこっちを向いてくれないかな?」
「いやっ」
 
 頬を赤く染めてキュッと目をつむり、そうしてジュードを拒絶するエルフリーデの頬に優しく手を当てると、エルフリーデは少しだけそろそろと目を開いて迷うような表情を見せた。

「リー、ごめんね。もう意地悪しないから。こっちを向いて?」
「…………」
「もしかして僕に触られるのが恥ずかしいの?」
「…………」
「どうして答えてくれないの? リー……?」

 ジュードがその可愛らしい頬をでながら謝罪しても、益々ますます身を縮こませて思い詰めたように顔を真っ赤にしてギュッとまた目を強くつむってしまった。ジュードがかたくななエルフリーデの心を溶かすように優しく頬や額にキスを繰り返すと、やっとエルフリーデは様子をうかがうように少しだけジュードに視線を戻した。
 その様子はまるで警戒心の強い小動物のようだ。近づいてきたと思ったらすぐ警戒して逃げられて。捕まえていないとすぐに姿を見失ってしまう。そんなとらえどころのない小動物を相手にしている感覚に苦笑しながら。ジュードはエルフリーデに愛しい視線を注ぐ。

 かつて神童と呼ばれ、エルトリア公国、法定継承順位第1位の公子であり、手に入らないモノなど何もないと言っても過言ではない位に事実上の地位と権力と財力と……全てを持ち合わせた王子のジュードが、ここまで一人の女性に苦戦をいられている。それがどんなにすごいことなのかをこの腕の中にいる幼なじみの少女は知らない。純粋でただ一途いちずにジュードを慕っているだけの感情を常に向けられているのは心地良い。だからこそかけがえのない愛しい存在だった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

処理中です...