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69. 最終話

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次の日の早朝、僕は急いで帰宅の準備を始めると馬車に乗り込んだ。

去り際、王様が「これで70年は生きる目的が出来たな。」と言って送り出してくれた。やはり王様は寂しかっただけで実は良い人だったみたいだ。





クローブさんの街まで戻る道中、僕はウキウキとしながらもあの王宮での出来事を全てクローブさんに告げなければいけないと思うと気が重たくなる。

「(本当は言うつもりなかったけど言わないと、こんなに早く帰って来れた理由が説明出来ないもんね…はぁ~…仕方ないかぁ…。)」

僕は昨日、帰ったであろうクローブさんを思いながら帰路に着いた。






クラリさん家の玄関を叩き、自分が帰ってきたことを告げる。するとサイさんとクローブさんが慌てて家から飛び出してきた。

「ヨースケ!」
「ヨースケ君!」

僕は2人に抱き締められ、僕は嬉しくなって抱き返す。

「ただいま戻りました!」






それからリビングでお茶を飲みながら、僕は今までの経緯を話す。もちろん、王様のことも。

僕が王様の跡継ぎを産まなければいけないことはクローブさんからサイさんに話をしていたみたいで、そこは余り突っ込まれずに済んだ。しかし、やはり聞かれたのはこんなに早く帰ってきたこと。少なくとも1年は帰って来ないと踏んでたらしいが、昨日の今日で僕が帰ってきたことに2人は疑問を感じていたらしい。

僕は王様に媚薬を盛られて1度致してしまったことを告げ、それによって不老になってしまったことも告げる。その時の2人の表情は想像通り複雑なものだったが、何処か仕方ないかと諦めに似た表情でもあった。

勿論、不老の背景にはどんなことがあるのか王様についても説明し、最後は納得してもらった。

しかし、2人にどうしても言えなかったことがある。

それは僕が王様の子供を産めなかったら死んでしまうことだ。僕はこの事実だけは誰にも言わないと決めている。

言ったところで事実が変わるわけでもないし、心配をさせてしまうだけだ。それならクローブさん達の最期を看取ってから覚悟を決めようと思う。

基本、能天気な僕だから少なくとも後70年も生きたら十分かな、と思っている。その後、王様の元で死んでしまってもその時はその時で王様に頼んでクローブさんのお墓に埋葬してもらおう。







僕はこの世界に何故やってきたのか、それは今でも分からない。もしかしたら本当に王様の子供を産むことが僕に課せられた使命なのかもしれない。

でも、今は心から愛する人に出会えて満足はしているし、将来生まれる子供達と過ごしていくことも想定している。

正直、王様の処に戻るまで何が起こるか分からないが、これから愛する人と愛し愛される日々を堪能し、余生を過ごそうと思っている。

それと落ち着いたらキーワ様やロータスさん、リナロエさん、ジョンにも会いに行きたいな。
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