悪役令嬢の弟

ミイ

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106. 発覚

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僕はイモーテルに支えられながら家に入り、玄関を入ったすぐのところにあるソファーに座らされる。

「トルー様、暫しこちらの席でお休み下さい。私は先程のことをサンバック様にお伝えする様、託けて参ります。」

「うん、分かった。」

僕はイモーテルの姿が見えなくなったところでソファーへ深く座るとフゥーと息を吐く。そして、既に引き返せないところまでやってきたヒロインについて考えを巡らせることになった。




新入生歓迎会での窃盗という前科、そして謹慎中にも関わらず屋敷を抜け出し、僕を含めイモーテルを襲撃、逃走。更には今までしていなかった他人への魔法の使用。




こうなるともう言い逃れ出来なくなるだろう…。僕はこれ以上、彼女を庇いきれなくなったこと、そして自分ではどうすることも出来なくなっている現実にようやくこの世界がゲームのシナリオを超えていることに気付く。

「(僕…初めは中途半端なゲームの知識のせいでこの世界が姉さんのやっていたゲームそのものだと思ってた…。だから自分が没落ルートにならないように必死だったけど、あのヒロインが現れたことで既にゲームの世界ではなくなってたのかも…。こんなこと言ったら不謹慎かもしれないけど、そういう意味では彼女に感謝しなくちゃ、彼女のおかげで自分の間違いに気付くことが出来たし…。
なら来年のルート様の暗殺計画は起こらない可能性が出てきた。それに、これから起こるはずだったイベントもゲームだから起こるだけでこの世界では起こらないのかもしれない。じゃあこれから僕、頑張らなくてもいいの…?自分のしたい様に生きてもいい…?)」

僕はギュッと目を瞑ると急になくなった自分の使命にホッとする反面、自分の存在意義がなくなった様で不安が押し寄せる。

「(僕、これからどうやって生きていけばいいんだろう…。)」

僕があまりにも暗い表情をしていたのかいつの間にか戻ってきていたイモーテルに「トルー様、大丈夫ですか⁉︎」と顔を覗き込まれる。それに大丈夫と苦笑いで応えると突然、彼は「失礼します。」と言って僕を抱きかかえた。

「えぇ⁉︎イモーテル⁉︎えっ…いや、大丈夫だよ、僕歩け「そんな青い顔をなさって何をおっしゃってるのですか!居心地が悪くとも今は私の言うことを聞いていただきます!」

彼はいつもは見せない渋面のまま問答無用で僕を部屋まで運ぶ。そしてベッドにゆっくりと降ろすと強制的に横たわらせた。

僕は性急なイモーテルの行動に戸惑いを隠せないでいると…

「トルー様、私の前では気丈に振る舞わないで下さい。さっきの貴方は不安で泣きそうな顔をなさっていました…しかし、私の前ではそれを隠し笑顔を作ろうとする。私は従者としてだけでなく、貴方を愛する者として心配しているのです、どうか私といる時は気を張らず、ありのままのトルー様でいて下さい。差し出がましい様ですが、不安であるなら胸の内を聞いてあげたい、その不安を取り除いて差し上げたいと私は思っているのです、どうかそんな者が近くにいること、ご理解下さい。」

僕はそんなことを心身に伝えてくれるイモーテルに感動し、今までの不安と安堵からとうとう抑えきれずに涙を流した。
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