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第3章

170. 出迎え

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僕は玄関を前に深呼吸をする。先程、自分から慣れないことをした上に恥ずかしそうな顔をしたサックルさんを見て自分まで恥ずかしくなってしまった。僕はその顔を戻すためにスーハースーハーと呼吸を整え、戸を開く。

エリーに聞こえるように「ただいまぁー!」と声を上げる。すると奥から「お帰りなさいませ!」とエリーが小走りで近付いてきた。

「長旅でお疲れでしょう。先ずはお部屋でごゆっくりなさってください。奥様にはご報告致しますので。」

流石エリーはよくわかってる。

「ありがとう、少ししたら母様に会いに行くから伝言宜しくね。」

と伝え、エリーには荷物を部屋まで運んでもらった。

僕は部屋に入ると軽くシャワーを浴び服装を改めた。シャワーに入りながらサックルさんとの情事を思い出して1人悶えてしまったが。

「(よし!叔父様に会ったことで覚悟が出来た!母様と父様に報告してタジェット兄様にも伝えなくっちゃ!)」

僕はそう気合いを入れ、母様の部屋に向かった。





コンコンッ


「母様、フェンネルです。宜しいですか?」

と声を掛けると扉がバンッと開き、目一杯抱き締められる。

「フェル!お帰りなさい!待ってたのよ!」

「ただいま、母様!中に入ってもいい?」

「勿論よ!さぁどうぞ。」

とソファーに促される。

対面に座り、エリーのお茶を堪能しながら始めから最後まで思っていたことを伝える為に口を開いた。

「母様…馬車を使えないって大変だね…。」

その言葉に母様もエリーも「フフッ。」と笑い「そうでしょ?」と返される。

「私は生まれも育ちも貴族だったからそういう体験をしたことがないの。でもエリーから冒険者の話を沢山聞いて憧れがあったのよ。私はもうこんな歳だし今から経験するのは難しいから子供達にそういう機会があったら体験させてみたくって。どう?フェルにとっていい経験になったかしら?」

母様はとてもウキウキとした表情で伝えてくる。

「うん、経験して良かったよ。僕、ギルドに冒険者登録までしてきたんだ。それに依頼を受けたり上位ランクの人とも友達になったんだよ。」

「まぁ…!こんな短期間に!凄いじゃないフェル!なかなか私達には体験出来ないことよ、その経験を大切にしなさいね。」

「うん、そうだね。それで母様、叔父様に会ってきたよ…。母様の説明があったからある程度覚悟はしてたけど、やっぱり衝撃的だった。」

「フフッ、お兄様は相変わらずね。とても気の良いお兄様だったでしょう?私もお義兄様達に会いたいわ。」

「皆、いい人達だったよ。僕のことも歓迎してくれたし。」

「そう、それは良かったわ。それでお兄様に会ってどうだったかしら?」

「…うん、重婚の良いところが聞けて本当に良かった。それに重婚する上で大切なことも教えてもらったし…だから僕、重婚することに決めたよ。」

僕は真っ直ぐ母様の目を見て伝えた。

「そう…わかったわ。フェルが決めたのなら私は反対しないわ。後はお父様とタジェットね、大丈夫だとは思うけど…覚悟はしておくほうがいいかしら?」

「…うん、反対されるかもしれないことは想定しておくよ。」

「…それでお相手はカラマス君と獣人のサックルさんかしら?お相手の方の了承は得ているの?」

「うん、それは2人共、大丈夫だった。」

「じゃあ…私、熊の孫が出来るのね…嬉しい。」

と母様はまたしても赤ちゃんを抱っこしている想像をしているようだ。

「まぁ…いつかね、まだ僕には早いよ。少なくとも僕が成人しないと。」

「…そうね、じゃああと5年待たないと…。」と項垂れていた。







その日の夕方、僕は父様をビックリさせようと仕事から帰ってくる父様を玄関で出迎えた。案の定、父様は目を丸くし一瞬、立ち止まったがすぐに僕を抱き上げ「おかえり、フェル!」と僕の頰にキスをした。それに僕もし返し「ただいま、父様!」とギュッと抱きついた。そのまま父様に抱きかかえられながら父様の部屋までくると2人でソファーに腰掛ける。僕はこの1週間のことを話し出した。

色んなトラブルはあったけど、いい人達に助けてもらったこと、ギルドに冒険者登録をしたこと、高位ランクの人と友達になったこと。語り出すと、様々な光景が浮かび上がりその度に僕は楽しくなり身振り手振りで父様に伝えた。それを父様は最後まで笑顔で頷いてくれる。そして、僕が重婚のことを口にすると父様も真剣な表情となった。

「僕、叔父様やその旦那様達と話をして覚悟が出来た。タジェット兄様はあまり重婚に前向きではないけど僕は重婚しようと思ってる…。だから兄様のことは僕が説得するよ。それに他の2人にはもう了承をもらったんだ。だから、父様にも重婚のことを認めて貰いたい。」

僕のその真剣な表情に父様は

「…そうか、わかった。フェルが決めたのなら私は何も言わないよ。お家同士のこともあるからタジェットの了承がもらえたら明確なことを決めていこう…フェル、頑張ったな。」

と頭を撫でてくれた。

僕は涙目になりながら

「ありがとう、父様。僕、幸せになるね。」

と答えた。
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