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第二章 死がふたりを分かつとも
第33話 許されない
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最初はあったはずの高い壁。
そして取るべき距離の両方が、うやむやになってしまっていること。
サリオンは、それが今の混乱の元凶なのだと、自戒する。
アルベルトに対してだけは、隔意を持つ。
公娼の客と奴隷として。
この国の兵士に虐殺されたユーリスの番の自分が、仇の国の皇帝に、なびくだなんて許されない。
挙句に、弄ばれて終わったら、ユーリスの死の尊厳までをも穢してしまうことになる。
「陛下のお手を煩せてしまいましたこと、誠に申し訳なく存じます。アルベルト陛下。レナ様の居室までご案内致します」
居住まいを正したサリオンは、口調も声音も改めた。
廻しの仮面を顔に貼りつけ、微笑んだ。
サリオンは、掌を本館側の廊下に向けたが、アルベルトからの返事はない。気色ばんだ顔つきで、不動の姿勢を崩さない。
一歩も動こうとしなかった。
そして取るべき距離の両方が、うやむやになってしまっていること。
サリオンは、それが今の混乱の元凶なのだと、自戒する。
アルベルトに対してだけは、隔意を持つ。
公娼の客と奴隷として。
この国の兵士に虐殺されたユーリスの番の自分が、仇の国の皇帝に、なびくだなんて許されない。
挙句に、弄ばれて終わったら、ユーリスの死の尊厳までをも穢してしまうことになる。
「陛下のお手を煩せてしまいましたこと、誠に申し訳なく存じます。アルベルト陛下。レナ様の居室までご案内致します」
居住まいを正したサリオンは、口調も声音も改めた。
廻しの仮面を顔に貼りつけ、微笑んだ。
サリオンは、掌を本館側の廊下に向けたが、アルベルトからの返事はない。気色ばんだ顔つきで、不動の姿勢を崩さない。
一歩も動こうとしなかった。
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