58 / 306
第二章 死がふたりを分かつとも
第34話 この際だから
しおりを挟む
「この際だから、言っておく!」
アルベルトの鋭い語勢が天井の高い廊下に響き渡り、こだました。
「この先も俺はレナを買う。だが、それはお前がレナの側付きだからだ。宴席で俺やレナの世話を焼く、お前に会いたい。それだけだ!」
「……アルベルト」
「確実にお前に会えるのは、買ったレナを 侍らせた饗宴の席しか、俺にはないんだ。……他には、俺は……」
弾かれたように振り向いたサリオンを、アルベルトが刺すような目で直視する。胸を上下に喘がせて、拳を握り締めていた。
「だからレナとは寝ていない。一度もだ。レナの居室に移った後は、寝室にレナを休ませて、俺は居間で本を読んだり、仮眠を取って帰っている。ここに来るのはレナと寝る為じゃないんだからな。レナはお前に黙っていたかもしれないが」
「それは……」
思わずサリオンは口ごもり、瞳を激しく戦慄かせた。その言葉尻を奪うように、アルベルトが追及の矢を放つ。
「……知っていたのか?」
「いえ、……あの、それは」
一晩レナを買い占めるくせに、饗宴の間からレナの居室に移った後は、一時間足らずで帰ってしまう。それでも公娼にある内風呂で、体を清めて去るからには、するべきことはしているのだと思っていた。
けれど、アルベルトがレナを買うようになってから、程なくレナに泣きつかれた。
レナがどんなに誘っても、アルベルトがレナには指一本触れようとしないこと。
ベッドに入ろうとすらしないこと。
俺が買った時ぐらい、ゆっくり朝まで一人寝をすればいい。そうでなくてもお前達は一年中休みなく、客を取らされているのだから、の一点張りで、口づけすらも交わさない。
来館すればレナを買い占めるアルベルトだが、当然ながら来館しない夜もある。
皇帝としての公務を優先せざるを得ない時は、アルベルトは律儀にも従者を寄越し、レナにその旨を通達する。
そんな夜は、レナもアルベルト以外の客を取る。
ダビデのように、『フル』理由が有り余るほどの、ろくでもない客ではないのなら、フル権限があるとはいえ、体が空いているのなら、買われてしまう身の上だ。
だからこそ、一人寝ができる時にはゆっくりしろと、アルベルトはレナを気遣うような 体裁で、床入りしない理由にしているようだった。
アルベルトの鋭い語勢が天井の高い廊下に響き渡り、こだました。
「この先も俺はレナを買う。だが、それはお前がレナの側付きだからだ。宴席で俺やレナの世話を焼く、お前に会いたい。それだけだ!」
「……アルベルト」
「確実にお前に会えるのは、買ったレナを 侍らせた饗宴の席しか、俺にはないんだ。……他には、俺は……」
弾かれたように振り向いたサリオンを、アルベルトが刺すような目で直視する。胸を上下に喘がせて、拳を握り締めていた。
「だからレナとは寝ていない。一度もだ。レナの居室に移った後は、寝室にレナを休ませて、俺は居間で本を読んだり、仮眠を取って帰っている。ここに来るのはレナと寝る為じゃないんだからな。レナはお前に黙っていたかもしれないが」
「それは……」
思わずサリオンは口ごもり、瞳を激しく戦慄かせた。その言葉尻を奪うように、アルベルトが追及の矢を放つ。
「……知っていたのか?」
「いえ、……あの、それは」
一晩レナを買い占めるくせに、饗宴の間からレナの居室に移った後は、一時間足らずで帰ってしまう。それでも公娼にある内風呂で、体を清めて去るからには、するべきことはしているのだと思っていた。
けれど、アルベルトがレナを買うようになってから、程なくレナに泣きつかれた。
レナがどんなに誘っても、アルベルトがレナには指一本触れようとしないこと。
ベッドに入ろうとすらしないこと。
俺が買った時ぐらい、ゆっくり朝まで一人寝をすればいい。そうでなくてもお前達は一年中休みなく、客を取らされているのだから、の一点張りで、口づけすらも交わさない。
来館すればレナを買い占めるアルベルトだが、当然ながら来館しない夜もある。
皇帝としての公務を優先せざるを得ない時は、アルベルトは律儀にも従者を寄越し、レナにその旨を通達する。
そんな夜は、レナもアルベルト以外の客を取る。
ダビデのように、『フル』理由が有り余るほどの、ろくでもない客ではないのなら、フル権限があるとはいえ、体が空いているのなら、買われてしまう身の上だ。
だからこそ、一人寝ができる時にはゆっくりしろと、アルベルトはレナを気遣うような 体裁で、床入りしない理由にしているようだった。
1
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる