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第四章 逆転
第15話 誰よりも何よりも
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アルベルトの両手で頬を包まれる。
長身の恋人が身を屈め、口づけの角度で狭せばまる顔。
「そんなに近くに来られたら、話せない」
押し返す。跳ねのける。
サリオンは、あらゆる拒絶を封じられ、伏し目になる。
アルベルトの濃艶な香油に交まじわる汗の匂いに火照る肌。
額が重なり、堪らず目を閉じ、寄せた眉。
険しい眉間に押し当てられた唇が離される。
二人の間の静寂が濡れた音を際立たせ、肩が強張る。恐くなる。
「綺麗だ。サリオン」
くり返される甘美な囁き。熱い息。親指で頬を撫でられる。涙の痕あとを拭い去る。
「ゆるい巻き毛の金髪も、挑むような碧の眼も白い肌も、薔薇色の頬も唇も……」
告げられながら唇で、髪を、目蓋を、頬を順になぞられる。
そうなのだ。
アルベルトにはレナよりも、他の誰より綺麗だなどと言われたい。
姿形で魅了して、虜にしたい。彼の目を惹きつけたい。離さない。
愁眉を和やわらげ、目を開けたサリオンを、天窓から射す月光が照らしていた。
「サリオン」
切なげに名前を呼ばれて、目と目が合わさる。
「愛して良かった」
「俺もだ。アルベルト……」
ここにいるのは皇帝でもなく、仇でもない、ひとりの男だ。宣言した。
その瞬間に息を詰め、目を見開いた男の瞳が揺らいでいた。
音もない。
声もない。
言葉を失い、顔を近づけ、口づける。
アルベルトの絹のトガにくるみ込まれたサリオンは、恋人の肩に手を掛ける。
十重二十重に口接し、吐息を絡からめる。舌のぬめりを感じ合う。
彼をこのまま、この身の中まで沈めたい。
溺れさせたい。許されるのなら今すぐに。
サリオンは、恋人の首に回した腕でかき寄せる。
「……サリオン……!」
極めたように猛たけり立ち、うなじに噛みつき、うなじを舐める熱い舌。吸いつく唇。弾む息。
溺れているのは自分の方だと知らされる。
長身の恋人が身を屈め、口づけの角度で狭せばまる顔。
「そんなに近くに来られたら、話せない」
押し返す。跳ねのける。
サリオンは、あらゆる拒絶を封じられ、伏し目になる。
アルベルトの濃艶な香油に交まじわる汗の匂いに火照る肌。
額が重なり、堪らず目を閉じ、寄せた眉。
険しい眉間に押し当てられた唇が離される。
二人の間の静寂が濡れた音を際立たせ、肩が強張る。恐くなる。
「綺麗だ。サリオン」
くり返される甘美な囁き。熱い息。親指で頬を撫でられる。涙の痕あとを拭い去る。
「ゆるい巻き毛の金髪も、挑むような碧の眼も白い肌も、薔薇色の頬も唇も……」
告げられながら唇で、髪を、目蓋を、頬を順になぞられる。
そうなのだ。
アルベルトにはレナよりも、他の誰より綺麗だなどと言われたい。
姿形で魅了して、虜にしたい。彼の目を惹きつけたい。離さない。
愁眉を和やわらげ、目を開けたサリオンを、天窓から射す月光が照らしていた。
「サリオン」
切なげに名前を呼ばれて、目と目が合わさる。
「愛して良かった」
「俺もだ。アルベルト……」
ここにいるのは皇帝でもなく、仇でもない、ひとりの男だ。宣言した。
その瞬間に息を詰め、目を見開いた男の瞳が揺らいでいた。
音もない。
声もない。
言葉を失い、顔を近づけ、口づける。
アルベルトの絹のトガにくるみ込まれたサリオンは、恋人の肩に手を掛ける。
十重二十重に口接し、吐息を絡からめる。舌のぬめりを感じ合う。
彼をこのまま、この身の中まで沈めたい。
溺れさせたい。許されるのなら今すぐに。
サリオンは、恋人の首に回した腕でかき寄せる。
「……サリオン……!」
極めたように猛たけり立ち、うなじに噛みつき、うなじを舐める熱い舌。吸いつく唇。弾む息。
溺れているのは自分の方だと知らされる。
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