字が書けない侯爵の長男は捨てられ、王の騎士を目指す

Allen

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《ガチャンッ!》

「空いたぞ!隠し部屋だっ!!」
「入れっ!!証拠品は抑えろっ!!」
「はっ!」

  とある日、突然立派な服を着ているであろう兵士達が地下に入り込んだ。助けてという声も上げることなく、俺は地面と一体化していたが、俺を見た兵士達は目を丸くし、大声をあげた。俺は身体を起こすことなく片目だけを開けていたものの、辛くなり瞼を閉じた。辺りからは沢山の足音や声などが珍しく聞こえる。

「カイル様ッ!!せ、生存者です!」
「ッ!?」

   カイルという者が慌ててこちらを見に来たように感じた。少し目を開けると、牢屋の中から見た彼の姿は立派だった。若い大人の人を見たのは久しぶりだ。綺麗な髪に美しくも心配そうな両目、濃く青いマントを羽織って見たことの無いほど立派な剣を携えていた。あんなに綺麗な剣でここから解放してくれるならどんなに嬉しいことか。一思いに早く刺して欲しい。

「待てくれ!今助ける!!」
「カイル様っ!!」

  慌てて檻を魔法で壊し、あの高価なマントを脱ぎ、それを毛布のようにして俺の身体を持ち上げた。あまりにも優しい持ち方。よく分からない。まぁ…流石にここからは解放はしてくれないか。俺は実験材料で、また違う場所に売られたんだと思えば何も感じなかった。
   さらに目のように何かされるという恐怖がいつものように襲った。でも、それを表現する術はあいにくもう無い。強い眠気が俺を襲い、温かいものにも気を取られ意識が朦朧とする。

「この子の治療優先してくれ!!残りのものは引き続き探してくれ!」

《はっ!》

「カイル様ッ、その子を!」
「頼む!大分衰弱している…あと少し持ちこたえてくれ…」
「カイル様、この子には複雑な闇魔法で回復魔法がききません!!これじゃ手の施しようが!」
「くッ……死なせる訳には…」
「このような複雑な魔法や長年の薬物等を解放できるのは陛下のような方だけです!もう、為す術がありません!」
「くっ…そうだ、陛下に直接頼めば!」
「し、しかし!それではカイル様の─」
「別に俺はいい。この子を助けられるなら、俺に何があろうと悔いは無い。この子を連れ、城へ戻る!」
「しかし、陛下が簡単に助けてくれる訳ではありません…が、止めても無駄でしょう。カイル様っ!!全員戻ればここは手薄になります!二部隊は残らせるべきかと!」
「あぁ、そうしよう。ありがとう…他のみんなはここに残ってくれ、二日もあれば帰ってくる!すまない!」

《はっ!》

  朦朧としている意識の中で、何処か懐かしい音や雰囲気に包まれ目を薄ら開いた。それはカイルがイルシアをマントで包んで優しく持ちながら、馬を走らせた時だった。
   俺の身体中に久々に感じる太陽の光、爽やかな風、様々な音。また何か違う事をされるかもしれないけれど、もう俺自身悔いはなかった。たぶん、俺は今外に出れているんだ。それは俺を心から感動させてくれた。涙も声も出ないけど、二度とあそこから出れないと思っていた俺は出れたんだ…。夢のよう…いや、夢かもしれない。もうどうなっても、俺にはもうどうでもいい。
  そして、再びゆっくり瞼を閉じた。
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