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しおりを挟む《コンコン》
「や、やばい!ディーレこっち!ルーク、僕たちがいること内緒だからね!」
「は、はい!」
突如、扉が叩かれると、二人は反対側でまた顔を隠した。俺からは何も見えない。これなら入ってくる人物も大丈夫なはず。俺は少し緊張して、開かれる扉の人物を見た。そこには、背の高くて、高価な青いマントを羽織り、立派な剣を持った若い優しそうな騎士が一人で入ってきた。俺の顔を見て彼はニコッと微笑む。もしかして、あの人が俺を助けてくれた恩人─確か、カイル様…!
「はじめまして、カイルって言います。身体の調子はどうですか?」
「は、はい…あ、あのた、助けて頂き、あ、ありがとうございました」
俺は深々と感謝を述べた。俺をあそこから救ってくれた。もう死んでいた俺を…。でも、カイル様はまたにっこり笑って俺のそばに近づき、威張ることなく淡々と述べた。
「皆を守るのが騎士としてですよ。それに、君を本当に救ったのは陛下なんです。また身体が良くなったら一緒に挨拶にでも行きましょうね!」
「あ、は、はい!」
「しばらく、目を覚まさなくて状態も悪かったから心配していたんですけど、大丈夫そうで本当に良かったです…。目は大丈夫ですか?他に痛むところはありますか?」
「い、いえ…大丈夫です」
「そうですか、良かったです…。あれ…それは?」
「あっ、こ、これは…!」
カイル様が俺の手にあった、例の花達を見た。俺も気付いたときには遅く、どう言おうか咄嗟に考えたものの、カイル様の顔色が一変にして変わったのが怖く身を引いた。カイル様はあたりを見渡し、目を閉じる。一瞬だったが、目を開くとさっきのような雰囲気でまたクスッと笑って言った。
「レイディオ様、ディーレ様、そこにいらっしゃいませんか?陛下にはこの事はご報告致しませんので」
カイル様が俺を通り越して奥に目線を示すと、ピョコッと金色の髪を持つ二人の頭が見えた。そして、遠回りして、カイル様の隣に手を繋いで出てきた。
「な、なんで分かったの、カイル?」
「さぁー、なんででしょうか、レイディオ様。それよりどうやってここへ入ってきたのですか?陛下が心配しますよ?」
「お父様は今、お仕事で忙しいのー!」
「僕達、お父様の邪魔しないもん!部屋にいたらお父様に会いたくなってくるんだもん…だからね、ルークとお喋りしてたんだよ!」
「ルーク?」
「あ、俺の名前です。で、ですが、その…二人から貰って…」
「カイル、ルークの目光ってるみたいでしょ?だから光の意味でルーク!私達が付けたの!だって名前忘れちゃったんだって!」
「それはそれは!ルークさん、良かったですね」
「あ、はい…!」
俺は取り敢えず、下を向いた。恥ずかしい。でも、こうなれば先程からの疑問がひしひしと募ってくる。陛下っていうのは本当に俺が思っている陛下なんだろうか。たぶん、基礎中の基礎、誰もが知ってる事なんだろう。それに、俺はずっと外に出ていなかったから…本当に双子がいるなんてこと知らないし、まだ正確な場所も聞けてない…。俺は意を込めてカイル様に聞いてみた。
「あ、あのカイル様、その…」
「どうしました?」
「そ、その、ここって、あのルイビルのセレジェイラ城でしょうか…?」
「はい、もちろん!」
「っ!!で、ではこの御二方のお父様と言うのは…」
「ディオス陛下ですよ、ディオス・フェルレオ様。ルークさんに掛かっていた高度で稀な術式の闇魔法を呪戒させたのも陛下です。私は陛下の騎士の一人。そして陛下のお子様は、第一王子のオディル様、第一王女のアイナ様、そして、こちらの双子であられる第二王子のレイディオ様と第二王女のディーレ様ですよ」
「そ、そんな所に…お、俺…!この部屋もつ、使わせてもらって…ッ!お二人にも失礼な事!」
「うん?ルークは何も失礼じゃないよ?な?」
「うん。とぉーても楽しいよ!」
「フフッ、心配せずとも大丈夫ですよ。お二人もこう仰っていますし、陛下もお優しいお方ですから」
「あ、お父様のお話してる~お父様の魔法はすっごいんだよ?」
「そうですね、ディーレ様。すごいお方でございます」
「うん!」
ディーレ様はにこやかな笑みを浮かべた。目の前の笑顔に俺は心の底からほっとした。どこか嬉しかった。これは俺はここに来ていることに不思議しかわかなかった。ずっといい部屋とは思っていた。何から何までとても居心地のいい場所に、食べ物に、何より優しすぎる人達。元父を侯爵から落とした人物に助けて貰ったことになる。こんな立派なそして、最年少で王に君臨し、魔王までも倒した、一番の偉大な英雄の国の王に助けてもらった……。驚きが隠せない…
「そういえば、その…、また後日でもルークさんのこと宜しければ教えていただけないでしょうか…。あそこでどのくらいいらっしゃったのか、どのように暮らしていたのか…その犯人と見られる男はある程度捉えておりますが……詳しくは言えませんが、あらゆる事件の総裁により後ろ盾がいると我々は思っています。それに対して陛下が大変お怒りで……。良ければ是非教えて下さい」
「は、はい…!」
「それともう一つ、ルークさんに行われていたことについては未明ですが、出来る限りお伝え出来ればと思っています。今はここで身体を休めてくださいね」
「あ、ありがとうございます…!」
カイル様はそう言うと俺に深く頭を下げた。俺も慌てて、頭を下げる。あんなに偉い人が俺なんかに頭を下げるんだ。慌てるに決まってる。そんな俺の顔を見て、にっこり笑うんだもん。少し恥ずかしくなってしまう。
それに、俺の身体についても気になるもののここまで丁寧に対応されたら何も口を出すことなんてなかった。
「では、私はこれにて失礼致しますね。レイディオ様、ディーレ様、ご一緒にいかがですか?」
「…分かった。じゃまたね、ルーク」
「バイバイ~、ルーク」
「ば、バイバイ…?」
「では、失礼致します。お体に気をつけて下さい。また後日伺いに参ります。その時はどうぞ宜しくお願い致します」
「は、はい!」
そう言うとカイル様はレイディオ様とディーレ様を連れて扉を閉めた。今まで以上に緊張した…。いや待て、カイル様は陛下と一緒に挨拶に行きましょう…って言ってた…。俺の身体にはさらなる緊張が走った。俺を助けてくれた陛下。確か俺の元父は陛下の怒りで侯爵を落とされた際でも、直接見ることはできなかったらしい。陛下が自ら集めた数人の従者に守られて、白い布のさらに奥にいらっしゃったらしいのに、まだ二十歳もなっていない時、躊躇いなく刑を実行したらしいから生意気な王とか言って奴は怒りながら昔の話をしていたっけ。本当かは知りもしないけど。でも、外に出たら誰もが陛下陛下と多くの歓声を上げていたのを覚えている。
わかってるのは…優しいが、怒らせればとてつもなく怖いお方だってこと。そんな人に会うことが出来るなんて…。嬉しい反面、緊張が襲う。
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