字が書けない侯爵の長男は捨てられ、王の騎士を目指す

Allen

文字の大きさ
8 / 28

7

しおりを挟む
「では、私はこの事を報告してきますね。ここは安全ですから、ゆっくりしていてくださいね」
「……」
「失礼致します」

《ガチャン》

   また深く礼をして、エメリアは去っていった。安全な場所、とは、まだ信用できないが、前よりは格段に安全…かもしれない。俺は手元のテーブルに置かれた美しい食べ物達を見た。きちんと俺が取れるように工夫して置いてくれている。それに、今までは食欲なんて湧かなかったのにお菓子が輝いて美味しそうに見える。震えている手を無視して、ゆっくりとった。久しぶりに口に食べ物を入れる。入れた瞬間、ほんのり甘いものが口の中を覆った。噛み砕く力がなくとも、ゆっくりと溶けていく。こんな美味しいものは久しぶりだった。あんな注射器でのよく分からない栄養剤の投与なんて、もうコリゴリ。そもそも栄養剤じゃないかもしれない。左目から自然と涙が零れ、涙を拭うため手に目に触れた時だった。

「だ、大丈夫?」
「ッ!?」

  ハッと驚くとそこにはやはりさっきの子供が二人。双子のようにそっくりで光の反射か何かで青色まじっているようなの金色の目と、赤色まじりの金色の目が二個ずつ。まだ俺より小さいようで、背伸びをして、ようやく目が見えている状態。今度は驚かずに、俺は二人に出来るだけ近寄った。俺自身人と会うとは、久しぶりだ。特にこんな小さな子。でもどうしてここに入ったんだろう。二人の服を見ると、やはり装飾がすごい。昔の俺以上な事は確か。どこかで見た龍の家紋もある。

「目、痛いの?」
「え、いや、大丈夫ですよ。き、君達は…その…一体…?」
「僕はレイディオ。こっちは」
「私はディーレ。あなたは?」
「えっ、あ、わ、忘れてしまいました……」

   俺は咄嗟に言ってしまった。名前なんてもう捨てたんだ。あんな家、もう、いらない…。そう相手の目を逸らし、俯いた。

「ねぇ、こっち向いてみて?」
「あ、す、すみません」
「ほらレイディオ見て!お父様の目見たい!光ってる!」
「え…」
「ほんとだ!じゃぁ、光の意味のルークて言うのはどうかな?」
「いいね!」
「や、やめてください…目は、その…」
「どうして?見ちゃダメなの…?」

   女の子は首を傾げて不思議そうに見る。俺は潰された目が憎い。誰もが自然とこっちの目を見るだろう。咄嗟に隠し、目を背けた。

「怪我、酷いでしょ……?あまり見て欲しくないんです…」
「ご、ごめんなさい…」
「ごめんなさい…でも、ルークの目俺好きだよ?お父様みたいだもん!」
「お父様は、ほとんど金色だけど、ルークの水色もかっこいい!」
「うんうん!あ、そうだ、見て見て!これ作ったんだ、あげる!」
「レイディオ!?わ、私も!はい!」
「あ、ありがとうございます…!!」

   俺は二人の小さな手から色鮮やかな小さな花達を貰った。ほんのりあたたかい、生き生きとしている花だった。人から貰うなんてはじめてで戸惑った。
  しかし、二人はニコッと笑って喜ぶ。まだ小さくて可愛らしい…。レイディオ様とディーレ様…だ。でも、本当に一体どこの子だろう…?こんなところに日頃住んでるんだもんな。…待て、陛下って言うのって本当に王様だとしたら…。
   俺は固唾を飲んだ。確かにこの子達の目、ルイビルの国王、ディオス・フェルレオ様に似ている。まさか、この子の父親が陛下なんて訳…そんなわけ、無いよな…?双子がいたなんて情報…知らないし…。

「どうしたの?」
「い、いえ!なんでもありません。これ、ありがとうございます!!」
「うん!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

処理中です...