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しおりを挟む「お初にお目にかかります、アドルファス様。僕は─」
「ルークか。またの名をイルシア・ネフェルティー」
「ッ!?」
「俺の友の家族になるんだ。悪いが調べさせてもらった。落ちぶれた元侯爵の長男、賢い弟に嫉妬し殺害未遂を企て謹慎中に死亡した話もあるが、どうかな?」
「─そんなの、デタラメです」
「デタラメか」
「殺人未遂を企てた者を陛下の気まぐれで助けてくれるとお思いですか?私がネフェルティー家に怪我を負わされ、生死をさ迷っていたところをカイル様に助けていただいたのです。私自身の意思で、この国の法を破った事はありません」
「ほう…随分と威勢がいいな。だが、ここにいる者は長年から鍛錬を積み上げて厳しい試験を乗り越えた者ばかりだ。君自身は何を行っている?カイルの家族になれたからと言ってディオス陛下の傍でずっと暮らせるわけではないぞ」
「ッ……」
「ここに来れるのも、ここに入れるのも、お前の力ではない。覚えておけ」
これには、なにも言い返せなかった。厳しい口調に、鋭く胸に刺さる言葉。確かに、俺がカイル様に家族として拾われなかったら、俺はどうしていたんだろう。復讐?それには、助けてもらった陛下にもカイル様にも泥を塗る。その為にはまず、認めて貰わないと。あらゆるこんな人に。それに、今ここにいる為には、成果を出さないと!
「はぁ…、アドルファスそこまでにしといてくれ。ルークはここに来てまだ間もないんだ」
「ふーん、どうやらまたカイルはお前さんを助けたようだな。じゃ、俺はまた─」
「お待ちくださいッ!」
立ち去ろとするアドルファス殿。俺は躊躇いなく彼を止めた。声があまりに大きかったのか、辺りからの視線が強い。元より目立ってしまう俺だ。でも、気にしてはいけない。気にしてられないんだ。持っていたトレイを近くにあった台に置き、ほんの少しだけ驚いたような顔から真剣な顔に変化を表したアドルファス殿。俺は頭を深く下げた後、真剣な眼差しを見せる。そして、カイル様から習った威圧をこれとばかり出す。もちろん、殺せるなんて思っていない。けど、やってやる。
「アドルファス殿、善逸ながら一つお願いしても宜しいでしょうか?」
「なんだ?」
「俺との決闘を申し込みます!」
「っ!?」
「なっ!?」
「どうです?お願いできますか?アドルファス殿」
そう言いながら、手袋をはめていなかった俺はちょうど持っていたジャケットを投げつけた。辺りは騒然とした。もちろん原因は俺。こんなところでやってはいけないことなんだろうけど…。やるしかない。相手が騎士ならばこの挑戦は拒否することは無いだろう。
「返事はどうなさいますか?」
「驚いたな…。まぁいい。受けて立とう」
「おいッ!アファス、ルークッ!」
「いいじゃないか~。ルーク、お前気に入ったぞ!弟子にしてやる!」
「は?」
「騎士団長に直々に決闘を申し込むなんて久方ぶりだッ、こんな勇気のあるやつだとは思わなかった。いやー悪いな。あれで折れた者がカイルの家族になるなんて嫌味で威圧してたんだ。悪いな。あぁ、そうだ、決闘だろ?受けて立とう!」
「あ、ありがとうございます」
「はぁぁぁ……」
辺りからはどよめきの声が上がる。カイル様は長いため息を漏らしていたが、俺はアドルファス殿の性格の変化に驚いていた。あんなに敵意を醸し出していたのに、今じゃニコニコしていて明るい人。急に態度が変わった…。いや、もしかして、これがこの人の本来の姿…?いやいや、まさか…。
「で、条件はどうする?流石に今日とは言わないだろう?カイル、この子が剣術を習い始めてどのくらいだ?」
「まだ半年も経っていないさ。せめて半年間練習した後にしてくれ、だからあと1ヶ月半後の慈雨の日が終わった辺りにしよう」
「じうの日?」
「そう。知らなかったのかい?多くの人は水流の日と言って、青龍様は主に水を扱う水龍様で、水龍が水源と水の流れを作ったと言われている。だから、水流の日、水流の流れるという漢字は伝説の龍の漢字を書く時もあるんだ」
「大概ルイビルの人は龍とかくな。隣国では、流れるの方の漢字を書くのが多い気がする」
「ルイビルは龍の漢字…」
「そう。つまり、雨が降りやすい日でもあるんだよ。それも、特殊な雨で不思議な魔力を含むって聖水にも使われているんだ」
「へぇー!そうなんですね」
「そうだぞ、ルーク。噂では陛下が聖獣の青龍と一緒に雨を降らしているって話だ。荒れた土地も魔物も雨にあたれば、素晴らしく変化する。その日が3日ほど続く時もあるんだ。陛下の青龍様の力が増加する日でもあるから、陛下のお姿も変わっていつも以上に口では表せないほどお綺麗なんだぜ?まぁ、今年は拝見できたらいいがな」
「見れない時もあるんですか?」
「そうだね…。理由は言わない方がいいと言えば分かるよね?」
「あ……。はい、分かります」
カイル様はそっと人差し指を口に当てた。暗黙の了解である陛下の呪いの件。青龍様の力が強くなれば、契約者の力も強くなるはずなのに呪いは多少打ち消せないのかな。相手の力には関係しないのか、疑問だ。けどここではやめておこう。みんなが見ている。
でも、慈雨の日か…、陛下の姿は見に行ったことがないな…。日頃でもあれほどまでに髪も綺麗で男の人とは思えないほど美形なのに、もっと綺麗になるなんて。こんなに有名な日のこと、俺はなぜ知らなかったんだろう。少し…悲しく思った。
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