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「なぜ逃げだしたと思う?」
「そ、それは利用されていたから嫌になったんでしょ?怪我もされていたんなら逃げ出すのは当たり前─」
「どうかな。生まれた時からだぞ?傷を作る世界しか見ていないんだ。どうして嫌だという感情が生まれると思う?逆に傷を作られることによって周りは喜ぶんだぞ?それが、当たり前の世界。何故逃げだした?」
「そ、それは…」
「とある日、外部を知るある二人の人物が1匹を尋ねたからだ。そして、1匹は外の世界を知ることになりました。1匹と二人は互いに信頼を深め、1匹は自分自身の感情を持ち始め、1匹は自身の魔法を使い外に出られる可能性知り、二人は戦う自信を掴んだ。そして、二人と1匹は共に助け合い、利用者達が閉じ込めた鳥籠のような世界から逃げ出し、遂に未来への扉開きましたとさー、っと」
そこまで言うと、男は身軽に近くにあった木の上に登る。木の枝に腰を下ろし、俺をそこから見下げる。そして、俺のカバンをそこから投げた。これには思わず声がもれてしまった。慌てて受け止めると、彼の手には俺のお昼ご飯であるサンドイッチが握られていた。俺も腹ぺこなのに、男は俺に何も言わず、大きな口で堂々と頬張る。その光景に俺は何をしているのか、何を聞いているのか少し呆れた。
「で、どうだった話は?」
「あ、いい話でしたよ。何かの童話か何かで?」
「んーな訳あるか」
「ハイハイ、それは1匹がトカゲですか?二人の内あなたが入っていると?」
「それはねーよ。トカゲの話は間違えないが、二人は死んだとの噂だ」
「では…あなたは利用する側…」
「…フッ、さぁどうだろうね、ルシオちゃん♪」
「……」
奴はまだのうのうと俺のサンドイッチを頬張る。それに俺をちゃん呼び。前世でもそんな呼び方をするやつはいなかった。簡単な挑発なのは分かってはいるが、やつに言われるのは心底イライラする。少し文句を言ってやりたいところだったが、男はサンドイッチをぺろっと平らげたようで、すっと立ち上がった。立ち姿は月に照らされ、髪も風に揺れ、目と髪の紫色が悔しいほどに綺麗だった。今の話と言い、明らかに自信と余裕を持っている、俺の敵である事には違いない。そう強く思った。
「あ~、最後に」
「なんですか?」
「俺は何としてもその1匹を探し出すつもりだ。そして、1匹には今信用出来る仲間がいない。お前も仲間がいないと力の無いものはこの世界では生きていけない。俺からの助言だ」
「…それはどうもありがとう。けど、仲間がいるからこそ出来ないこともあるでしょう?」
「そう思うからこそ、出来ないんだ。お前は」
「はい??」
「まぁいい、また会おうな、ルシオちゃん♡」
「くっ…!」
「トカゲちゃんにもよろしく!」
奴は木の上でウインクしながらそういった。簡単な挑発だけど、ちゃん付け2回と煽るような喋り方をやられると腹が立つ。一言言ってやりたいが、奴は身軽に木から木へ移り猿のように一瞬で去っていた。
しばらく、静寂が俺を包み込んだ。その森はあまりにも静か。嵐のような、よく分からない人だった。助かったから良かったけれど…。
「って、夜じゃん!!早く家に戻らないとッ!」
そのあとは慌てて家に帰るやいなや、マイラとイルダが俺を見つけるなり、泣きながら抱きしめてくれた。二人は帰ってこない俺を心配して探していたようだ。こうしてみると帰って来れて良かったと心から思う。血は繋がっていないけれど、マイラとイルダが本当の家族同然のように思う。しかし、嫌いな家族やその他の使用人こっ酷く怒られ、結果、謹慎処分になったルシオちゃんだった……。
「そ、それは利用されていたから嫌になったんでしょ?怪我もされていたんなら逃げ出すのは当たり前─」
「どうかな。生まれた時からだぞ?傷を作る世界しか見ていないんだ。どうして嫌だという感情が生まれると思う?逆に傷を作られることによって周りは喜ぶんだぞ?それが、当たり前の世界。何故逃げだした?」
「そ、それは…」
「とある日、外部を知るある二人の人物が1匹を尋ねたからだ。そして、1匹は外の世界を知ることになりました。1匹と二人は互いに信頼を深め、1匹は自分自身の感情を持ち始め、1匹は自身の魔法を使い外に出られる可能性知り、二人は戦う自信を掴んだ。そして、二人と1匹は共に助け合い、利用者達が閉じ込めた鳥籠のような世界から逃げ出し、遂に未来への扉開きましたとさー、っと」
そこまで言うと、男は身軽に近くにあった木の上に登る。木の枝に腰を下ろし、俺をそこから見下げる。そして、俺のカバンをそこから投げた。これには思わず声がもれてしまった。慌てて受け止めると、彼の手には俺のお昼ご飯であるサンドイッチが握られていた。俺も腹ぺこなのに、男は俺に何も言わず、大きな口で堂々と頬張る。その光景に俺は何をしているのか、何を聞いているのか少し呆れた。
「で、どうだった話は?」
「あ、いい話でしたよ。何かの童話か何かで?」
「んーな訳あるか」
「ハイハイ、それは1匹がトカゲですか?二人の内あなたが入っていると?」
「それはねーよ。トカゲの話は間違えないが、二人は死んだとの噂だ」
「では…あなたは利用する側…」
「…フッ、さぁどうだろうね、ルシオちゃん♪」
「……」
奴はまだのうのうと俺のサンドイッチを頬張る。それに俺をちゃん呼び。前世でもそんな呼び方をするやつはいなかった。簡単な挑発なのは分かってはいるが、やつに言われるのは心底イライラする。少し文句を言ってやりたいところだったが、男はサンドイッチをぺろっと平らげたようで、すっと立ち上がった。立ち姿は月に照らされ、髪も風に揺れ、目と髪の紫色が悔しいほどに綺麗だった。今の話と言い、明らかに自信と余裕を持っている、俺の敵である事には違いない。そう強く思った。
「あ~、最後に」
「なんですか?」
「俺は何としてもその1匹を探し出すつもりだ。そして、1匹には今信用出来る仲間がいない。お前も仲間がいないと力の無いものはこの世界では生きていけない。俺からの助言だ」
「…それはどうもありがとう。けど、仲間がいるからこそ出来ないこともあるでしょう?」
「そう思うからこそ、出来ないんだ。お前は」
「はい??」
「まぁいい、また会おうな、ルシオちゃん♡」
「くっ…!」
「トカゲちゃんにもよろしく!」
奴は木の上でウインクしながらそういった。簡単な挑発だけど、ちゃん付け2回と煽るような喋り方をやられると腹が立つ。一言言ってやりたいが、奴は身軽に木から木へ移り猿のように一瞬で去っていた。
しばらく、静寂が俺を包み込んだ。その森はあまりにも静か。嵐のような、よく分からない人だった。助かったから良かったけれど…。
「って、夜じゃん!!早く家に戻らないとッ!」
そのあとは慌てて家に帰るやいなや、マイラとイルダが俺を見つけるなり、泣きながら抱きしめてくれた。二人は帰ってこない俺を心配して探していたようだ。こうしてみると帰って来れて良かったと心から思う。血は繋がっていないけれど、マイラとイルダが本当の家族同然のように思う。しかし、嫌いな家族やその他の使用人こっ酷く怒られ、結果、謹慎処分になったルシオちゃんだった……。
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