過去の罪《2章完結済》

そろふぃ

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一章 過去の過ち

三話

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次の日、重い体を起こしながら学校に行く準備をする。部屋にはキッチンなどがついていて月に2、3度ほど中に食材を入れてくれるので料理には困らなかった。家からも月に大銀貨1枚をもらっている。ノートやペンは学校からの支給がありほとんど使い道がない分多い方だろうと思う。

昼食を食べ終えそろそろ出ないと間に合わないので学校に向かう。途中で何人かとすれ違うがそのたびに顔を顰め俺と距離を取ろうとする。昨日の今日でそこまで噂は広まってないだろうと思っていたが予想とは反して噂は大いに広まっていた。

クラスに入ると半数ほどすでに生徒が皆静まり返り睨むようまた怯えるようにこちらを見てくる。視線の居た堪れなさに視線を下へおろし、指定の席へ座り本を読む。本を読んでいる間は周りの声が聞こえない。リンにとっての少ない娯楽の一つだった。本を読み進めていると始まりの鐘がなり顔をあげると先生が前に立っていた。急いで本をしまい前を見る。

「みなさん、おはようございます。今日は昨日言った通りみなさんの技術を見るために軽く戦闘能力をみたいと思います。剣術科は3クラスあるので3クラス合同でやろうと思います。何か質問はありますか?」

「はーい!ないかもしれないけど大怪我とかしたらどうするんですかー?」

ちらっとこちらを言う男子にそうだと賛同するようにみんな不安そうな顔をする。

「あぁ、毎年数名ですが軽傷を負うものはいますのでボランティアで魔法科の一年生に治癒をお願いしているんですよ」

「そっか~なら安心だ~!」

不安そうな顔がどこに行ったのか安心したように皆笑顔になって喜んでいる。

「他にはなさそうですね。このあとは着替えて施設βに行ってくださいね。あと、リンさん」

「!は、はい」

「このあと私についてきてください少しお話ししたいことがあるので」

「わ、わかりました」

何か注意されるのだろうと周りも思ったのかクスクスと聞こえるように笑っていた。先生の後に続いて教室を出ると学園内にある談話室へと通された。

「どうぞ座ってください。今、紅茶を入れますから」

「ぇ、あ、は、はい」

何かしてしまってそれに対して何か言われるのかと思ったがそんな雰囲気は全くなくとても優しい雰囲気だった。

「どうぞ」

「あ、ありがとうございます、、、あの、話とは何ですか?」

「あぁ、あなたの体質のことを公爵さまから聞き及んでいます。そのため今回の合同には不参加もしくは見学を選んでもらいたいんです。」

「え、、、お、、、公爵さまが俺の体質のことを?」

リンは生まれた頃から他の魔力を受け付けない体質を持っていた。魔力を与えられたとしても体が魔力を受け付けず逆流してしまう。悪い時は死んでしまう。稀に魔力の波動が似ているものがいる。そのものが現れればいいが不可能と言っていいだろう。

「はい、私どももあまり滅多に見ない体質だったのでまだ対処のしようがないのです。もし大怪我を負ってしまったら災厄なことになりかねません、、、」

「あ、ありがとうございます。で、でも大丈夫です。傷なんてほっとけば治りますから、、、。じゃないとこの学科に来た意味が、、、」

言い淀むリンに何とも言えない表情をするルーリア。リンを幼い頃かり知っている彼にはリンがどれだけ危うい立場にいるのかわかっているつもりだ。

「ふむ、では参加することは許可しますが危ないと思ったらすぐに見学にします。これでいいですね?」

「は、はい。ありがとうございます」

話し合いもおわったところでみんなが言ったであろう施設へと向かう。







急いで着替え並んでいる列へと並んだ。クラスの人だけだと少ないと思うが3クラス合同となると結構人数が多く感じる。リンが遅れてきたことでもう一度初めから説明することになり他の生徒はリンを睨みながら見る。

「ここにいる生徒は初心者もいれば上級者もいるだろう。判断は俺が下すが中等部から上がってきたものは中級者とする。他のものは皆私の元へきなさい」

先生ーガリア・ルーウェンという王国騎士団を怪我で引退し多少は動けるということで学園の講師として入ったーの言われた通り俺は高等部からのようなものなので先生の元へと行った。先生の元に集まったのは10人もいなかった。3クラス合わせて60名いる中で途中入学したのがここに集まっているものなのだろ。

「ふむ、4人か。この中に剣術を習ったことがあるものは?」

「あ、、、家です、少しだけやって、ました、、、」

ユーストたちと被らないように剣術科にし、それに備え公爵がそこそこ有名な剣術士をよんで指導をしてもらった。その人もリンの噂を知っていたため、まるで鬱憤を晴らすかのようにきつい指導が待っていた。怪我を魔法で治せない以上死なない程度痛めつけ怪我を治すために数週間あけその間には礼儀指導や勉強が待っており休む暇がなかった。だがそんな厳しい指導のおかげで人並み以上に剣術は上達していると思う。最後らへんになると剣術士の方も俺の伸びがいいのが気に入ったのかたまには様子を見にきてくれる。彼がいなかったら俺はまともに人と話すことができなかったかもしれない。

「ほー誰に教わっていたんだ?」

「えっと、、、ダリア様です」

「ダリア、、、もしかしてSランク冒険者のダリアか!」

冒険者?ただ単に凄腕の剣術士としか知らない。まず冒険者というのをリンは知らない。

「そうか、昔ダリアに会ったときにいい弟子に会えたと言っていたがお前のことだったのか」

「そ、そんなこと言っていたのですか?」

「あぁ!こりゃ期待できるな。しばらくは他のやつの指導でもしておいてくれ」

「え?」

そんじゃよろしくっといて上級者の方へと行ってしまった。急に指導しろと言われても、、、。俺に教わりたいなんて思う奴いるわけが、、、。

「あの、僕フェルっていいます!平民で高等部から入ってきたんです。よろしくお願いします!!」

「わ、私は、リューリって言います。私も平民です。剣術に憧れてて女ですけど腕力はあります!」

「俺は、ヘルンって言います。リューリの弟で俺も憧れてて、えっとよろしくお願いします!」

俺のことを知らないのか瞳をキラキラとしながら俺に頭を下げてきた。

「あ、えっと、、、よ、よろしくお願いします?、、、えっと、リンです。その人に教えたことがないのでえっと、、、」

「そんなの気にしません!あの黒の獅子のリーダーであるダリア様の弟子なのでしょ!僕たち平民にとってそれはとても敬うべきことなのですよ!」

食い気味にそう言われたが言っている意味がよくわからなかった。

「その、、、冒険者っていったい、、、」

「え?知らないんですか!?冒険者っていうのは国や貴族とかがお金を払って依頼をするんです。簡単なやつから危険なやつまであって多くの依頼をこなすとランクが上がっていくんですけど、そんな中で経った2年でSランクに上がったパーティーがあってそれが黒の獅子っていうパーティーなんです!その中でもすごいのがリーダーのダリア様なんですよ!。平民なのに魔力も多いし剣術で右に出るものはいないしとにかくすごいんです!そしてそんなダリア様の弟子であるリン様もすごいんです!!」

そんなことを食い気味に言うリューリに若干引く。彼女が言っていた憧れとはダリア様を指していたのだろう。

「あ、えっと、、、あ、ありがとう?」

「姉さん、近いし、リン様が引いてるよ」

「!!す、すみません」

いつものことなのか慣れた様子で弟が姉を止める。

「だ、大丈夫です。そ、それと俺に敬語は不要です。必要ないです。同い年ですし、、、」

「そう?ならリンも敬語やめなさいよ」

流石に早い対応にめんくらってしまう。後ろではヘルンが頭を押さえてため息をついていた。苦労をしているんだな。

「えっと、俺は誰にでも敬語で話すようにと言われているのでできればこのままがいいです」

「む!それならしかないけど、、、。そういえば私、剣を握ったことほとんどないんだけど大丈夫かな?」

急に話が変わり混乱するが、先生に指導するようにと言われた以上しなければいけない。

「えっと、、、剣術はほとんどが才能で決まるものなんです。努力で上手くなる方もいますが、まずは剣を構えてみてください」

剣術は才能または努力で決まる。才能はごく稀に秘めているものがいるが努力ならば誰にでもできる。リンもダリアに初めて会った時に早々に才能なしと言われたが頑張って努力した結果ダリアに認めてもらえるほどに上達した。その際に才能を持つものの見分け方など剣術が上達するであろう人の見分け方などを教えてもらった。

少々照れは入るものの3人とも各々が構えやすいように剣を握る。こうしてみるとリューリが一番才能があるだろう。背筋の伸び方や剣の握り方など教わっていないのにある程度の基礎ができている。他の2人も才能がないわけではないだろう。フェルはスピード重視の剣術がより良さそうだ。ヘルンは型にはまった剣術をいくつか教えればすぐに吸収するだろう。

「リューリには才能がありますね。他の2人にも似合った剣術があります」

「マジか!!」

そういうと嬉しそうに喜ぶリューリが面白く笑ってしまう。

「「「!!」」」

「?どうかしましたか?」

無表情にちかかった顔が急に笑顔になり、通常が美形なので笑った顔など破壊力が凄まじい。

「「「なんでもないです!!」」」

「?リューリさんはまず体力、握力などの基礎的な体づくりをし、その後は剣を握ることになれるために剣を振るいましょう。フェルさんはスピード重視の剣術が似合うと思います。もっと軽い剣である程度の型を覚えましょう。ヘルンさんは基本は一つの型に絞るのが定法とされていますが多くの方を覚えて相手にあった型を出していく方法でいきましょう。ヘルンさんは体が柔らかそうなので色々な型を吸収できると思います。、、、あ、あの何か変なことを言いましたか?」

スラスラいうリンを惚けたようにみる3人に何か間違えたのか不安になる。

「すっごい!!みただけでそんなこともわかるの!?さすがすぎる!!」

「うん!すごい!」

「ダリア様が認めるわけだ!!」

あの時から褒められるなんてほとんど嫌、一回もなかった。その前だって皆純粋に褒められるというのは経験がなくどう反応していいかわからなくなる。

「あ、、、その、ダリア様から相手のことを理解することも大事だとおそわったので、、、」

「「「なるほど!」」」

何を言っても尊敬するような目で見られとても居た堪れない。

「おい、邪魔だぞ。もっと隅でやれよ」

「!!」

後ろから急に押されこけそうになるのをフェルに助けられ転ばずに済んだ。何事かと後ろを見ると同じクラスであり、剣術一家のランウェール家3男であるためでもあるのか珍しく剣術科にやってきた変わり者だが実力は相当のものだ。立ち振る舞いからもその強さがわかるほどに、、、。

「あ、、も申し訳、、、」

「なによ!なんでわざわざ私たちが隅でやらなきゃいけないの?邪魔だと思うならあんたたちがもっと隅でやんなさいよ!!」

「なんだと!この女!?平民のくせに!」

「はっ!この学園で平民貴族は関係ないのよ。あんたこの学園に何年いんのよ。そんなこともわかんないわけ?馬鹿なの?」

「この女!」

なぜ彼女はこうも強気なのかわからないが今にも殴りかかりそうな男を冷ややかな目で見る彼女だが知らない人間からしてみると女子に殴りかかろうとする野蛮な男という図にしかみられないだろう。

「何をしているんだ!」

騒いでいるのを聞きつけた先生たちが様子を見にきた。名も知らない先生はリンをみるとすぐに何かを察したように持っていた木刀を手に取るとその木刀で思いっきりリンを殴った。ガッっと鈍い音が響きそれを間近でみていたものは呆然とその様子を見るしかなかった。意識を失いそうになるのを我慢しながらなんとか体を持ち上げる。

「リン・アルフォード!またお前か、入学早々問題を起こすとはこの数年何も反省してないじゃないか!立て!公爵様から問題を起こした場合それ相応の罰を与える用に言われている、覚悟しろ!」

「、、、!!ま、待ってよ!リンは何もしてないわよ!言いがかりで殴るなんて!なんて教師なの!先に突っかかってきたのはこいつらの方なのよ!!」

顔を真っ赤にして連れていかれそうになる俺の前にリューリがたつ。

「、、、君、もしかしてこいつに何か脅されているのか?大丈夫だぞ!私からきつく躾をしておくから安心しておきなさい」

「な!そんなわけ!?」

「何事だ!?」

さっきより大きくなった騒ぎにガリアが様子を見にくる。

「ガリア様!?申し訳ございません、このアルフォード公爵子息様がまた問題を起こしたので処罰を」

「問題?、、、!おい!大丈夫か!?」

頭を押さえているとその隙間から赤い血が垂れる。殴られた場所が悪かったのか少し切れてしまったようだ。リンの体質のことを知っているのか焦ったようにこちらに向かってくる。

「頭を殴られたのか?吐き気はあるか?、、、頭を少し切っているな。治癒師は、、、ダメなんだよな。仕方ねぇ保健室に連れて行くか」

「が、ガリア様?なぜそのような、、、」

「黙れ!!問題を起こしていようがいなかろうが生徒を急に殴る教師がどこにいるんだ!?しかもこいつは丸腰じゃないか!!打ちどころが悪かったら死んでいるんだぞ!!」

意識がしっかりとしていないリンを抱き上げると狼狽えている教師に怒鳴る。

「しかし公爵様から、それにそいつは過去に?!」

「あぁ、それは先ほど聞いたがお前は何か勘違いをしていないか。確かに公爵はそういったが、何をしたのかも明確にしていないのになぜその場で罰を与える必要がある!こいつが昔やらかしたことは被害者本人はもう許しているんだ!お前がとやかくいう必要はない!!」

もう話すことなどないかというようにガリアはリンを抱いて訓練場から出ていった。そのあとをフェルたちが続いていく。




「邪魔するぞ」

あまり使われていない保健室は意外にも綺麗に整頓されている。怪我人は大体が治癒魔法で直してしまうため保健室が使われるのはごく稀だ。

「珍しいわね。今日はどういった御用かしら?」

出てきたのはナイスバディの女性、、、、ではなく初老の女性だ。白衣に身を包み耳は人とは違い長くとんがっている。彼女がエルフだということだろう。

「負傷者だ。こいつは体質で他者の魔力を受け付けないんだ。頭を切って出血している」

「あらまぁ!そこに寝かせてちょうだい!」

手慣れた手つきで傷を手当てしていくうちにリンの意識が目覚める。

「ぅ、、、あ、あれ?」

「よかった。意識ははっきりしてそうね。頭意外に痛いところはある?吐き気は?」

「あ、だ、大丈夫です。俺、気を失ってしまったんですね。ガリア先生、ご迷惑を、、、」

起きあがろうとする俺をてでせいした。

「迷惑ってほどじゃねぇよ。頭への攻撃は油断出来ねぇしな。それにこいつらもお前を心配していたんだぜ?」

「え?」

ガリアが指を刺した方向を見るとそこには先ほどの授業で一緒になった3人がいた。

「ご、ごめんなさい。ご迷惑を」

「迷惑じゃない!こうゆうときはありがとうでしょ!!」

「そうだよ!僕びっくりしたんだから、血とかも出てるし!」

「うん!昔がどうかは知らないけど今のリンが優しいのはわかるもん!」

泣きながらいう3人にどうゆう反応していいかわからずガリアに助けをもてめる。

「心配してくれたときはお礼を言っとけばいいんだよ」

そう囁くガリアにびっくりしつつここ数年心配されることなどほとんどなかったのでやっぱりどうやって反応していいかわからない。

「え、、と、、、あ、ありがとう」

頬を赤らめて照れながらいうリンはまるで神が使た天使のようだったとのちに聞かされるのであった。






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