巻き戻った王子は幸せを掴む【三章完結】

そろふぃ

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一章 過去と今

7話 

城に帰って軽く王子らと話をして別れた。部屋に向かう足取りはいつもより早いだろう。

「あ、フラン様、おかえりなさいませ」

「、、、、うん」

部屋に着くといつものようにアリアがいる。そんなのは当たり前のことだ。でもそんな当たり前のことに出るはずもないのに涙が出るのではないかと思うほどに変な気持ちになった。

「あの、アリア」

「はい、フラン様」

「これ、、、あげる」

「?あら、これは、クレープですか?もしかして私に?」

「、、、、うん、、、嫌い、だった?」

「いいえ、いいえ、とても、とても嬉しく存じます。二つありますね、フラン様がよろしければご一緒にお茶をしながら食しましょうか」

「うん、、、あの、本も読む」

「ふふ、はい、お持ちしますね」

こんなこと思ってはいけないってことはわかっているんだけど、、、こんな日常が続けばいいのに、、、。

 ◾️

 ◾️

 ◾️


アリアSIDE

私はアリア。元伯爵家の令嬢であり、今は平民として生活している。この仕事につけているのも昔からの友人のおかげでもあるしとても光栄なことだと思っている。しかし、この仕事では、初めに教えられることがあった。

それは『絶対に第三王子の機嫌を損なうことをしてはいけない』ということだった。

その時の第三王子はまだ9歳ほどだったと思う。なのになぜそんな教えがあるのか私はとても不思議だった。でも、その理由がわかったのはとても早かった。

まだ見習いの私は、雑用しか頼まれることはなかった。いつものようにゴミ掃除や、洗濯などをしていると近くから女性の悲鳴が聞こえた。何事かとその場にいた私と同じ見習いたちは悲鳴の聞こえた場所に向かうとそこには血を流しているメイドと、それを冷めた目で見ている少年がいた。

「も、申し訳ありません!お許しください、お許しください!第三王子様!」

そのメイドの声でやっとその少年が噂の第三王子であることがわかった。噂で聞く第三王子はとても冷徹で気に食わないことがあったらすぐに癇癪を起こし、物に当たり、人を見下すなどといったまだ幼い少年がするとは思えないようなものばかりだった。その時までは噂は所詮、噂だと思っていたがそうではなかったのだと、噂は真実であったのだと理解した。

その時みた女性はその後一度も見ることはなかった。

私はまだ入ったばかりということで王子方々との交流は一切ない。それでも第三王子の世話係を任されたメイドはすぐに交代してしまうため、ベテランのメイドたちはいつ自分たちが王子専属になるのかと恐れ、やめるものも少なくなかった。

そうこうしているうちにいつの間にか、ここにきて2年ほどが経っていた。私は第一王女付きのメイドとして働いていた。第一王女はとても優しく、可愛らしい方だった。息子の歳が近いから少し自分の子供と重ねて居るのかもしれない。息子がもう少しで14歳の誕生日で、家に帰ることもできるしとても楽しみだ。

そして第一王女付きになって気づいたことがある。それは第三王子がご家族とうまくいっていないということ。ここにきて、私は陛下やご兄弟がご自身から第三王子の元へ行くのを見たことがない。あの性格ゆえなのかとも思ったが、生まれてからも疎遠であることは変わらないらしい。
それも第三王子以外の三人の王子はどの方も各々の分野でとても優秀でいらっしゃるのに対し第三王子は特に秀でたものがない。そのことに少なからずコンプレックスがあるのではないだろうか。まだ幼く、第三王子は子供なのだ、周囲から多くのプレッシャーに耐えられるはずもない。だとするとあのような悪い性格になってしまったことにもうなづける。

もう少し、陛下が第三王子にお優しくしてはくれないだろうか、、、。最近の第三王子は陛下のことを父親というよりも“国王陛下”としか見えていないと思う。陛下もそのことに気付いているだろうし、そんな第三王子を疎ましく思っているようにも見える。

そのことがとても私には悲しく思えてならないのだ。

そんなことを思いながらも私には何もできない。第三王子に話しかけることもできなければ、陛下に文句を言えるような立場にもないのだから、、、。

そして、いつの間にか、息子の誕生日が近くなっており、一時帰省の日になっていた。

「アリア、何か嬉しそうね?何かあるの?」

「えぇ、明日、一時帰省の日なのよ。息子に会えるのが嬉しくて」

「あら、それは嬉しいわね。私の子はもう独り立ちしてしまっているしそうそう帰省できないから羨ましいわ」

「ふふ、子供の時の楽しみよね」

私はウキウキしながら準備をした。久しぶりに会える息子はどれだけ成長しているだろうか。今は学園に通っている息子の成長を夢に見ながら私は眠りについた。

私のもらった帰省の期間は一ヶ月、私はその一ヶ月をどうやって過ごしたのかわからない。家に帰って最初に私の目に入ったのは首を吊って死んでいる私の息子だった。その後の記憶はなく、近所に住む人に聞いたところによると、息子の死体を見たことで錯乱したようだった。泣き叫び、息子の死体に縋っていたそうだ。近所に住むものが止めに入り、気絶するまでずっと叫び続け、自分の体を傷つけていたようだった。

私が落ち着いたのはそれから1週間ほど経った頃だった。落ち着いて私に差し出されたのは亡き息子からの一通の手紙だった。
そこに書かれた内容は、学園に入りそうそう、貴族のもの達にいじめに遭っていたこと。最初は我慢できたがそれがだんだんエスカレートとしていき、次第には体を汚されてしまったこと。そして最後に母より先に死んでしまったことへの謝罪と、愛していると。私はその手紙を読んで悲しい気持ちと、いじめられていることに気づくことのできなかった自分への怒りでどうすることもできなかった。

それでも時間は過ぎていくものだ。息子の葬式をして手続きをして、家の掃除をして、ただぼーっと過ごしていると帰省期間は終わってしまった。もうこのまま死んでもいいと思った。もう生きる意味がないからだ。でもそうふと思った時に、第三王子のことが頭に思い浮かんだ。理由はわからない、でもなぜか頭に浮かんで私は一ヶ月ぶりの仕事に出かけた。

久しぶりにあった人達には休日がどうだったのか聞かれ、あったことをそのまま話せば皆気まずそうに謝罪してきた。
私はその後仕事に没頭した。私のそんな様子に第1王女は気づいていたようだったがそれでも気づかないふりをしてくださった。

そんなことがあって1年ほど経つ頃には少しずつ私の中でも余裕ができていた。そんな時に数年以上ここで勤めているメイドが集められた。

「まず初めにここに集められたのは、長く勤務したもののうちの若いもの、いなくなっても問題がないもの、ある程度の労働に耐えられそうなものを集めました」

集まり次第そんなことを言うメイド長に集まったメイドは困惑の表情をする。

「単刀直入に言います。この中で1人、第三王子様の専属メイドになっていただきます」

「え!?」

「そ、そんな、、、」

「いなくなっても問題ないって、、、そんなの」

皆が困惑するのも無理はないだろう。今、この城において第三王子のメイドになることは追い詰められ自殺して死ぬか大怪我をして仕事をできなくなるかのどちらかなのだ。誰だっていやだろう。

「やりたいものがいない以上仕方がありません。この中から「あの」、、、あなたは?」

「私はアリア、今は第一王女付きのメイドをしております。その、よければ私が第三王子様の専属メイドになります」

「、、、そう。わかりました。王女には私からいっておきます。あなたは明日から早速仕事に取り掛かりなさい。することは大抵変わらないはずですから」

「わかりました」

自分から第三王子のメイドになりたいなんていうメイドを皆、驚いたように見てくる。
自分でもいっていることが自殺希望者同然のことだとは理解しているが、それでもこのまま第一王女付きのメイドでいても王女はいつか隣国に嫁いでしまうだろうし、時々、第三王子の顔がチラつくのも事実なのだから後悔するよりはまだマシだろう。

王子付きのメイドになって少したって意気込んでいた分、拍子抜けだった。朝支度をすると文句はいってくるが、すぐにでも食卓に行きたいのか私を置いていってしまうし、その後もあまり帰ってこないし、夜もすぐ帰ってきてお風呂を入るとすぐ眠ってしまう。その日常が長く続いた。突き飛ばされたり、罵倒されたりはされるがそれでもそれだけ、暴力などは一切されなかった。私はそれが不思議だったが、周りも私以上に不思議がっていた。

王子付きになって2年ほど、私が王子と会うのは朝の支度と夜のお風呂と着替えの時のみと時間で言うと数刻だけだった。二ヶ月もあれば少し王子のこともわかってくる。王子は周りが言うほど馬鹿ではないと思う。前にちらっとこの国の言語ではない文字の本を理解していたのを見かけたことがある。おそらく、上の第一、二王子が優秀すぎるが故に第三王子が霞んでしまうのだろう。もう一つ王子はよく夜にうなされていた。それに気づいたのは最近だけど、美しい顔を歪ませているのは見ていてこちらも苦しくなる。してはいけないことだとわかっているものの、私は夜少しの間だけ王子のそばで、初めは見ているだけだったが、次第に手を握り、頭を撫でるなど、優しく接すると王子はとても嬉しそうにするのだ。そんな姿を見てしまうと愛おしさが溢れてきてしまう。起きている時には絶対にできないが、、、。

その日は唐突にやって来た。いつものように罵倒されるのを覚悟しながらも私は王子の準備に向かった。ドアを開け入った先には、昨日とはまるで別人の人がいた。髪の一部が白くなり、瞳はとてもくすんでいた。まるで自殺した時のような私の息子のようだった。

髪が白くなってしまったことに王子は驚くことはなく、いつものように罵倒もすることなく冷静に支度をするように促してきた。
そして驚いたことに今日は陛下達と食事をしないと言うのだこれが驚かずにはいられないができるだけ冷静を装いながらもその旨を陛下に伝えにいった。

「第三王子付き専属メイド、アリアでございます。第三王子より伝言をことづかっております」

「、、、、入りなさい」

「失礼いたします」

「それで伝言とは」

あからさまにいやそうな顔をする陛下に私はとても悲しくなる。陛下も家族を亡くした身としては一緒であるはずなのだから、、、どうしてここまで自分の子を邪険にできるのだろうか、、、。

「はい、第三王子様は今日はお部屋で食事を取るとのことです」

「何?」

「へー、珍しいこともあるんだな。まぁうるさいのがいなくて俺はいいけど」

「ルディアン」

「すいませーん」

「、、、、失礼します!」

私の怒ったような声に陛下達は驚いた顔をしていたが私は無視した。本来なら不敬であるがそんなこと気にしていられない。私がメイドになって数年ほど経つがその長い間で(私が見たかぎり)あの子供は一切愛情を与えられていないのだから。そんな悲しいことがあっていいはずがない。

その後も王子はいつもと様子が違った。帝国暦を聞いてきたり、運ばれてきた食事も、すこし食べてなんとも言えない顔をして半分以上残していたし、一日中ずっと部屋の窓辺で外を眺めるだけで終えていた。そんなことが6日ほどたったころ、いつものように事前に朝食を取らないとつたえに行くとなぜか呼び止められた。

「悪いが、明日はフランも昼食にくるように伝えてくれ」

「、、、了解しました。失礼します」

それくらい、自分で言いに行けばいいのに、、、。

翌日王子にそのことを伝えると表情は変わらないがとてもいやそうな雰囲気を出している気がする。
そしてその日の昼食も最悪なものだった。王子が何かする前提で話していることがとてもいやな感じだった。確かに王子の行いのせいでもあるけれど、でもそれなら前々から陛下自身で叱るなりなんなりすればよかったんだ。これでは王子が報われないじゃないか、、、。

その後、ベットのシーツの替えを持って、掃除しにいく。多分だけど王子はベットで寝ていないのだろう。シーツがとても綺麗で寝た様子がないのだ。部屋に入ると王子はいつものようにぼーっと窓辺で外を見ていた。掃除を始めようとすると今日は声をかけられた。少し嬉しく思いながらも若干緊張しながら返事をすると、、、。

「掃除しなくていい」

「え?」

「嫌ならわざわざ来ることはない」

外の風景を見ながら無表情に言うその言葉に無性に泣きたくなる。私はそんなにいやそうに仕事をしていたのだろうか?確かに少しまだ王子を恐れているところはある。でもそれでも私は死ぬまで王子のメイドを辞めるつもりなど一切ない。

「食事も運ばなくていい。お腹がすけば自分で取りに行く。着替えも自分できるから、好きにするといい」

王子はそんなことを無表情で言うけれど、少しだけ悲しそうに見える。好きなようにしていいのなら私の答えは決まっている。

「、、、す、好きにして宜しいのであればこのまま王子へお使いしてもよろしいですか?」

「!、、、」

会話の中で王子は初めてこちらを向いた。少し驚いたように目を開いて。
その行動はまるで親を探す子のようで、、、。

「失礼でなければ近づいてもよろしいですか?」

「、、、、あぁ」

ゆっくりと私は王子に近づき、残り一歩という手前で止まりそっと彼に手を近づけると彼は無意識に体をびくつかせる。顔は無表情のまま、やはり無意識だろう。私はゆっくりと王子の頭を撫でた。

「私には王子と同じくらいの息子がいたのです」

「、、、いた?」

「はい」

王子は私の話を私の目を見て聞いてくれた。涙はなくともその目はとても悲しげに揺れていた。話し終えると王子は「、、、好きにすれば」と目を逸らして言っていた。

「はい。それで王子、もしかしてベットでお眠りになっていらっしゃらないのではないですか?」

「いや、、、」

「できればベットでお眠りください。体を痛めてしまいます。それとよろしければ紅茶をお持ちしますから椅子にお座りください」

「、、、う、ん」

素直に反応する王子はとても可愛らしい。まぜ陛下達はこのかたをほっといてしまったのだろうか、、、。

「今朝、おやつに私が作ったのですが、毒味などは済ませてありますので、よろしければ召し上がってください」

「、、、、!、、、美味しい」

「ふふ、ありがとうございます」

心から美味しいと思っているようで黙々と食べている。

「アリア、、、」

「はい?」

「、、、、ありがとう」

「いえいえ、喜んでもらえて嬉しいです。明日も何かおやつをお持ちしますね」

「、、、うん」

それからは少しずつ距離を狭めていった。途中、第二王子が来たり、暇そうにしている王子に小説を勧めたり、小さい女の子が迷い込んできてそれが隣国の王女だったり、、、。
ベイル王子に触れられそうになった王子はとても体が震えていた。私に触られた時も震えていた。何か人に触れられることが恐ろしいと思うことがあったのだろうか、、、。

 ・

 ・

 ・

私は王子を追いかけた。部屋に着くと暗い部屋の中で震えながら体を爪を立てながら押さえていた。ゆっくりと王子の手に触れると驚いたように私を見上げた。

「王子、、、フラン様、そのように爪を立ててしまうと傷がついてしまいます。先に謝罪をしますね。失礼します」

私は王子のフラン様の体を抱きしめた。そのことに驚いたのか震えは止まっていた。

「ア、リア?」

「はい、フラン様」

「これ、何?」

この行為もわからないなんて、、、。

「、、、これは抱き締めているんですよ?嫌でしたか?」

「、、、い、やじゃない」

「それはよかったです。少し失礼しますね」

王子の足の下に手を差し込むと持ち上げた。思いのほか軽くすっと持ち上げることができた。年齢にしては背が低いと思っていたけれどやはり体重もあまりないようだ。

「、、、重くないの」

「重くないですねぇ。フラン様はもう少し食事を召し上がったほうがいいと思います。同年齢の方と比べると少し小さいですから」

「そう、、、」

フラン様を持ち上げベットに腰掛ける。膝に乗せたまま、背中をぽんぽんと叩くと王子はそのまま眠ってしまった。

「フラン様、良い眠りを」

私はそう呟き、不敬な行為だが抑えきれず、私はフラン様の額に口付けた。これから私はこの方を、この子供を、愛し守ると誓って。
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