両翼少年協奏曲~WINGS Concerto~【腐女子のためのうすい本】

さくら怜音/黒桜

文字の大きさ
100 / 106
八冊目 黄金色のクリスマスキャロル

アフターストーリー 1

しおりを挟む
**

日付変更線までまたいでしまったし、帰ったら眠気ですぐにひっくり返るだろうと読んでいたのに、光は珍しく自宅についてもまだ起きていた。帰りをタクシーに変えて居眠りできたおかげだろうか。
はみがきを済ませて寝巻に着替えることも、全部自分でちゃんとしている。

「へえ、めずらしい」

いつもなら「ちゃんとしろ!」と勝行が小言を何度叫ぼうが無駄で、着の身着のままベッドでぐったり寝ている時間だ。
摂氏零度近くまで冷え切った深夜のマンション。自室で部屋着に着替えた勝行は、まだ起きている光を見て純粋にびっくりした。

「眠くないの?」
「ねむいけど寒いから」

意識もはっきりしていて、普通に受け答えする光は、何の遠慮もなく勝行の頬にチュッとリップ音を立てて吸い付く。

「ただいまとおかえり」
「ああ……おやす」
不意打ちのキスに戸惑う勝行を無理やり引っ張ると、光はすぐそばにあった勝行の部屋に転がりこんだ。

「ちょっ、ちょっとなに、光」

ガチャ、と内鍵までかけて部屋に立て籠る。

「これで絶対二人きりだろ」
「ま、まあ……そうだけど」
「じゃあしてくれるよな!」
「え?」

今一つ状況が読み込めないままの勝行は、光がどうして部屋の鍵を閉めたのかも、何をしてくれと言っているのかもすぐには理解できなかった。素肌に薄いネル生地パジャマ一枚しか着ていない光が、目の前で寒そうにしながら期待のまなざしで自分を見つめてくる。

――添い寝しろってことだろうか。

ぼふんっ、といきおいよくダブルベッドのマットレスに飛び込んだ光は、やっぱふわふわしてて落ち着かねえなこれ、とぼやく。遠慮なく他人のシーツをくしゃくしゃにしておきながら、この偉そうな物言いは光ならではだ。
シルバーカラーの羽毛布団上でゆらゆら身体を揺らしながら、呆然と突っ立ったままの勝行をみて「まだ?」と不思議そうに尋ねてくる。

上目遣いのその目と冷え切った頬の赤らみが、窓から映る周辺の夜景ライトでオレンジと白に煌めきゆらいだ。
(ちょっと俺の精神的にそんな煽りキツイんだけど、わかってんのかな)

でも……。

キスはしてほしそうだ。

さっきイルミネーションを観ながら「キスして」と駄々をこねた光が、家に帰ってからもしてくれるかと尋ねていたのを思い出す。とんだ煽りだなと苦笑しながら、勝行は光の傍に寄ってその柔らかい髪を上からくしゃりと撫でた。犬か猫のように目を細めながら、気持ちよさそうにそれを受け入れる光がたまらなく可愛い。そんな姿を今ここで独り占めできる幸せは、彼のピアノをずっと一人で鑑賞している時間と同じくらい、尊い。

マンションの最上階とはいえ、カーテンをひいていなかった窓の隙間から、いつまでも消えない有楽町の街灯がベッドに差し込んでくる。
暗闇が大の苦手な勝行は、普段カーテンを引かない。ひとりで寝室にいる時、このライティングのおかげで快適に過ごすことができるからだ。けれどそのネオンライトがベッド上の光を照らし出した途端、どこからかどす黒い独占欲が湧き上がってくる。
カーテンをひいて、外のビルからも空からでさえも、見られないように閉じ込めてしまいたい。
たとえばそう、自分の布団の中に。

「……ひかる」
艶やかに輝《ひか》る唇を眺めながら、その細い顔を横から包み込むように両手で抱え込んだ。

落とすはうんと優しい、甘ったるいキス。
重ねてはほどき、見つめあいながら何度となくそれを繰り返す。

惚けた顔で受け入れながら、光は腕をふらりと泳がせ、勝行の腕や服の裾を探りつかんだ。その手が触れると、冷えた感覚が布越しに皮膚を走り抜ける。けれどもう勝行の思考は、目の前のきれいな少年を独り占めすることしか考えられなくなっていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー

夏目碧央
BL
 強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。  一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...