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Lv.1 ゲームフレンド ≧ リア友
5 勝ち組陽キャの襲撃
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季節はあっという間に秋を駆け抜けていく。
徐々に通常の学校生活が戻ってきたクラス内では、あちこちで雑談が聴こえてくるようになった。
それでも中学校の頃を思うと、随分静かだ。代わりにリア充発案のライングループができているらしい。だが圭太はまだ誰とも連絡先を交換したことがないので、実情を知りえない。別に知りたいとも思わなかった。
「なあサエ。お前、二組の安藤太一と仲いい?」
昼休み。一年三組の教室で一人弁当を食べ終え、鞄からスマホを取り出した矢先のことだ。最初は誰のことを言っているかわからなくて、圭太は首を傾げた。すると質問してきたクラスメイトの滝沢幸一は「電車で」とニヤニヤしながら圭太の肩に腕を絡めてきた。
「こんぐらいの至近距離で、仲良さそうにしゃべってんの見かけたけど」
「……はあ」
滝沢はクラスの中でもダントツの陽キャで、誰彼構わず近い距離で話かけてくる輩だ。そのくせ無駄に顔がいいし友人も多い。
(あいつに似たタイプだけど、もひとつチャラい感じがするっていうか、馴れ馴れしいな)
過去の経験からいくと、大抵こういう人間にはうざいほど絡まれるか、嫌われるの二択なのだが――。返事に困っていると、
「三枝に浮気してんじゃねえよ、滝っち」
「密集密接密着!」
後ろから誰かにドカッと蹴りを入れられ、滝沢がウシガエルみたいな奇声を発した。捕まっていたせいで一緒に圭太の身体も揺れて、スマホを落としそうになる。
蹴ったのは黒縁眼鏡のよく似合うクラス委員長。名前は覚えていない。その後ろで「滝沢と三枝って……もしかして、デキてんの?」と腰をくねらせ演技がかった発言をするのは多聞歩夢。滝沢と最も仲がいい、腰巾着のような男だ。た行が苗字の二人は、出席番号で並んだ最初の席の隣にいた連中だった。
「ほれ見ろ、滝っち一筋の歩夢が泣いてるぞ」
「いやこんなの浮気じゃねーし。俺は八方美人だからクラスみんな好きだよ」
「きゃはは最低!」
こんな女子受けするBL茶番劇が始まるのは今に始まったことではない。
(クッソうるせえ。陽キャはこれだから嫌いだ)
いじめられるよりはマシだが、人を勝手につまらないネタに仕込まないでほしい。
だが曲がりなりにもこの連中とはあと二年半は一緒に生活しなければならない。逆らうと後が面倒なので無視することにした。
滝沢は授業が再開してすぐ「恋愛は男女どっちでもイケる」とカミングアウトしていて、瞬く間にクラス全員からの支持を獲得した。まさに高校デビューに成功した覇者のような存在だ。
こんな男から勝手に「サエ」と呼ばれるのも気に食わないが、つまらない嫉妬で事を荒げたくないので質問には答えておく。
「安藤太一……って、肉食べ野郎のことか」
「? 肉がどうした」
「なんでもない。あいつとは登校中にゲームやってんだよ、いっつも電車で一緒になるから」
「へえ、なんのゲーム?」
「FCOっていう……お前らは知らないと思うけど」
「うん、知らん。それ可愛い女子いる?」
「は? まあ一応……」
潔く「知らない」と言いつつも、興味を示してくれたことが嬉しい。
ここは賭けに出るかと思い、圭太はFCOの中で最も人気な美少女キャラの立ち絵を画面に表示した。もちろん、圭太の推しキャラだ。
さあどう出る。二次元好きのオタクを罵倒するか、興味ないと嘲笑うか、それとも――。
「うはあ! これはよき!」
すると滝沢はスマホを奪い取って食い入るように見てくる。取り巻きの二人は呆れた様子。
「お胸のラインがエッチでよいですな」
「ええ、お前……その言い方はちょっと」
「いやあ、ちっぱいは正義だろ。サエはどっち派?」
もしやこの男、美少女オタクか。綺麗な顔をしておきながら意外な趣味をお持ちのようだ。圭太は思わず肩をすくめた。クラスの女子がその発言を聞いたらドン引きするに違いない。既に取り巻きの二人が、気持ち悪そうな顔をしてこちらを見ていた。
「そういや滝っちって二次元女でもヌケるって言ってたよな。特にロリ」
「守備範囲広すぎだろ」
「何言ってんだ。ロリは現実に手を出せないから二次元を愛でるんだよ」
「うわあ」
取り巻きと滝沢の間で交わされる会話はよく配信で聞くようなネタだ。そして圭太はこの場合、滝沢に一票投じる。わかりみが深い。
擁護せずとも滝沢は己の主張を堂々と声に出して、それがさも正義かのように語り続ける。周りはすっかり気圧されているようだ。クラスの人気者パワーはなかなか侮れない。黙ってみていると、急に会話の矛先が自分に向けられた。
「三枝もそうなん? 美少女ゲーってあれだろ、エロいやつだろ」
「べ……別にそういうのやってるわけじゃない」
「歩夢ーそれは偏見だぞ。誰しも美少女キャラが好きとは限らねえ」
「滝沢……」
コイツいいこと言うなと思った途端、滝沢はへらっと笑って圭太のスマホを皆の前に突き出した。
「サエはどっちかっていうとゲーム廃人じゃん。見ろよこいつのスマホ、こんなにゲームのアプリ入ってる。やっば、すげくね?」
滝沢はいつの間にかスマホをホーム画面に戻していたのだ。
圭太は思わず滝沢の腕に掴みかかり、「やめろ、人のスマホ勝手に見るな!」と怒鳴った。拍子でガタガタッと椅子が倒れ、昼休みの雑談で盛り上がっていたクラスが一瞬、しんと静まり返る。
すると「誰だー教室でスマホ使ってる奴」と冷たい声が返ってきた。ぎょっとして振り向くと、そこには担任が仁王立ちしていた。
「滝沢、三枝。放課後先生のとこに来なさい」
「はーい……」
スマホは滝沢の手から担任教師に没収されてしまった。
季節はあっという間に秋を駆け抜けていく。
徐々に通常の学校生活が戻ってきたクラス内では、あちこちで雑談が聴こえてくるようになった。
それでも中学校の頃を思うと、随分静かだ。代わりにリア充発案のライングループができているらしい。だが圭太はまだ誰とも連絡先を交換したことがないので、実情を知りえない。別に知りたいとも思わなかった。
「なあサエ。お前、二組の安藤太一と仲いい?」
昼休み。一年三組の教室で一人弁当を食べ終え、鞄からスマホを取り出した矢先のことだ。最初は誰のことを言っているかわからなくて、圭太は首を傾げた。すると質問してきたクラスメイトの滝沢幸一は「電車で」とニヤニヤしながら圭太の肩に腕を絡めてきた。
「こんぐらいの至近距離で、仲良さそうにしゃべってんの見かけたけど」
「……はあ」
滝沢はクラスの中でもダントツの陽キャで、誰彼構わず近い距離で話かけてくる輩だ。そのくせ無駄に顔がいいし友人も多い。
(あいつに似たタイプだけど、もひとつチャラい感じがするっていうか、馴れ馴れしいな)
過去の経験からいくと、大抵こういう人間にはうざいほど絡まれるか、嫌われるの二択なのだが――。返事に困っていると、
「三枝に浮気してんじゃねえよ、滝っち」
「密集密接密着!」
後ろから誰かにドカッと蹴りを入れられ、滝沢がウシガエルみたいな奇声を発した。捕まっていたせいで一緒に圭太の身体も揺れて、スマホを落としそうになる。
蹴ったのは黒縁眼鏡のよく似合うクラス委員長。名前は覚えていない。その後ろで「滝沢と三枝って……もしかして、デキてんの?」と腰をくねらせ演技がかった発言をするのは多聞歩夢。滝沢と最も仲がいい、腰巾着のような男だ。た行が苗字の二人は、出席番号で並んだ最初の席の隣にいた連中だった。
「ほれ見ろ、滝っち一筋の歩夢が泣いてるぞ」
「いやこんなの浮気じゃねーし。俺は八方美人だからクラスみんな好きだよ」
「きゃはは最低!」
こんな女子受けするBL茶番劇が始まるのは今に始まったことではない。
(クッソうるせえ。陽キャはこれだから嫌いだ)
いじめられるよりはマシだが、人を勝手につまらないネタに仕込まないでほしい。
だが曲がりなりにもこの連中とはあと二年半は一緒に生活しなければならない。逆らうと後が面倒なので無視することにした。
滝沢は授業が再開してすぐ「恋愛は男女どっちでもイケる」とカミングアウトしていて、瞬く間にクラス全員からの支持を獲得した。まさに高校デビューに成功した覇者のような存在だ。
こんな男から勝手に「サエ」と呼ばれるのも気に食わないが、つまらない嫉妬で事を荒げたくないので質問には答えておく。
「安藤太一……って、肉食べ野郎のことか」
「? 肉がどうした」
「なんでもない。あいつとは登校中にゲームやってんだよ、いっつも電車で一緒になるから」
「へえ、なんのゲーム?」
「FCOっていう……お前らは知らないと思うけど」
「うん、知らん。それ可愛い女子いる?」
「は? まあ一応……」
潔く「知らない」と言いつつも、興味を示してくれたことが嬉しい。
ここは賭けに出るかと思い、圭太はFCOの中で最も人気な美少女キャラの立ち絵を画面に表示した。もちろん、圭太の推しキャラだ。
さあどう出る。二次元好きのオタクを罵倒するか、興味ないと嘲笑うか、それとも――。
「うはあ! これはよき!」
すると滝沢はスマホを奪い取って食い入るように見てくる。取り巻きの二人は呆れた様子。
「お胸のラインがエッチでよいですな」
「ええ、お前……その言い方はちょっと」
「いやあ、ちっぱいは正義だろ。サエはどっち派?」
もしやこの男、美少女オタクか。綺麗な顔をしておきながら意外な趣味をお持ちのようだ。圭太は思わず肩をすくめた。クラスの女子がその発言を聞いたらドン引きするに違いない。既に取り巻きの二人が、気持ち悪そうな顔をしてこちらを見ていた。
「そういや滝っちって二次元女でもヌケるって言ってたよな。特にロリ」
「守備範囲広すぎだろ」
「何言ってんだ。ロリは現実に手を出せないから二次元を愛でるんだよ」
「うわあ」
取り巻きと滝沢の間で交わされる会話はよく配信で聞くようなネタだ。そして圭太はこの場合、滝沢に一票投じる。わかりみが深い。
擁護せずとも滝沢は己の主張を堂々と声に出して、それがさも正義かのように語り続ける。周りはすっかり気圧されているようだ。クラスの人気者パワーはなかなか侮れない。黙ってみていると、急に会話の矛先が自分に向けられた。
「三枝もそうなん? 美少女ゲーってあれだろ、エロいやつだろ」
「べ……別にそういうのやってるわけじゃない」
「歩夢ーそれは偏見だぞ。誰しも美少女キャラが好きとは限らねえ」
「滝沢……」
コイツいいこと言うなと思った途端、滝沢はへらっと笑って圭太のスマホを皆の前に突き出した。
「サエはどっちかっていうとゲーム廃人じゃん。見ろよこいつのスマホ、こんなにゲームのアプリ入ってる。やっば、すげくね?」
滝沢はいつの間にかスマホをホーム画面に戻していたのだ。
圭太は思わず滝沢の腕に掴みかかり、「やめろ、人のスマホ勝手に見るな!」と怒鳴った。拍子でガタガタッと椅子が倒れ、昼休みの雑談で盛り上がっていたクラスが一瞬、しんと静まり返る。
すると「誰だー教室でスマホ使ってる奴」と冷たい声が返ってきた。ぎょっとして振り向くと、そこには担任が仁王立ちしていた。
「滝沢、三枝。放課後先生のとこに来なさい」
「はーい……」
スマホは滝沢の手から担任教師に没収されてしまった。
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