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Lv.1 ゲームフレンド ≧ リア友
15 捏造された情報
**
「二組に感染者出たって」
「電気科終了ー」
「カラオケ遊びに行ってたやつらがいるって」
「うっわ、自業自得乙。本物のバカじゃん、誰? そいつ」
「安藤って奴らしいぞ」
「ちょっと待て、お前ら。本当かわかりもしねえのに名指しで適当なこと言うなよ」
「いやでも、これマジ情報。二組の奴らが言ってたもん」
「誰か電車の中でチクったらしい」
圭太が車内で零したたった一言が、根も葉もない噂となって一瞬で拡がってしまった。圭太は教室でスマホを覗き込み、呆然と座り込んでいた。
声に出さない代わりに、クラスのライングループが大炎上している。ひっきりなしに鳴るバイブレーション通知音。授業中でもお構いなしだ。あまりに酷い様子を見て、滝沢が一度苛めてくれていたが、焼け石に水だった。他にも誰かが感染しただの、休んでいる奴は濃厚接触者だのと、確信のない話が次々と飛び交っていく。
クラスメイトたちは皆、安藤太一が新型ウイルス感染者で、彼と毎朝同じ電車に乗っている圭太も濃厚接触者ではないかと疑っているようだった。朝いつも太一と一緒にいることを滝沢以外が知っていることにも驚いたのだが、この情報が真実なのであれば自分は学校に来てはいけない気がする。
けれどなんの呼び出しもない。本当に濃厚接触者になれば、保健所から突然通達がくると聞いた。
それはいつ? どこから? それすらわからない。本人、あるいは教師に訊けば真実がわかるのだろうが、学校側からの公式情報は何もない。
「あー、もう知ってる奴もいるかもしれんが、この学年に濃厚接触者が出た。お前ら最近たるんでないか、しっかり手洗いうがい、消毒。みんなと一緒に飯食うのもなるべく控えて、マスクをはずさずに遊べる方法を考えろ。お前らもう高校生だ。遊ぶなとは言わないから、自分たちで何がよくて、何がダメなのか考えて行動しろ。不要不急の外出ってどういうことかわかるか……」
試験終了後のホームルーム。
担任は理不尽な説教をくどくど告げると、一目散に去っていく。
新型ウイルスが流行りだしてからもうすぐ一年。厳しい冬がやってくる。ネットニュースは旧型と新型のインフルエンザが同時にやってくることへの警戒と恐怖を煽る情報ばかりが流れていて、同時に「マスクなんか感染予防にならない、意味がない」という相反した情報も流れてくる。
一体何を信じて、どうすればいい。
圭太は汗ばむ手を握りしめたまま、誰にも手を触れないよう、ロボットのようにじっとしていた。声を出すのも怖い。
せっかく自粛ムードが緩和されたばかりだったというのに、翌朝には他クラスへの行き来や接触禁止のお触れが出た。どうやら疑わしい欠席者が急増したようだ。いよいよ学級閉鎖か。あるいは学年、学校閉鎖もあり得る。だが三組はそのまま待機で自習と言われ、戻ってきたテストの見直しを黙々とやる日になった。
女子の中には教室の隅で怯え、泣きじゃくる子もいた。二組に彼氏がいるらしく、会えないと嘆いていた。
「どうせ俺たちのことも疑ってるから閉じ込めてあぶり出す作戦だろ、バカバカしい」
「うちらも濃厚接触者になったらどうなんの?」
「あれって死ぬ病気?」
「すっげえきついってテレビでみた。後遺症のこるって」
「いやだ、怖い……」
今まで言われるがまま自粛生活をしているだけで、これっぽっちも現実味が湧かなかったのは圭太だけではなかった。
妙な噂が次々流れるようになってから、教室はどこか殺伐とした空気に包まれている。目に見えないウイルスという武器を持って息を潜め、けん制し合っているような――まさに生存を賭けたサバイバルゲームのような世界になってしまったのだ。
入学当初のように、机から手が届く距離には誰もいない。圭太の周りにいた、ゲームを語る友人も来なくなった。そして太一を含む二組の人間は「諸悪の根源」としてグループチャットで誹謗中傷されていた。
(……これ……僕のせいなんだろうか……)
一方的に嫌われたのだと思っていた。けれど本当に体調が悪くて休んでいたのだとしたら。自分はとんでもないミスをしでかしてしまったのでは。
圭太は痛みをこらえすぎて赤くなった鼻をずずっと啜ると、黙ったままシャーペンでノートの隅を黒く塗りつぶした。震える指のせいか、芯は何度も折れて飛んでいった。
「二組に感染者出たって」
「電気科終了ー」
「カラオケ遊びに行ってたやつらがいるって」
「うっわ、自業自得乙。本物のバカじゃん、誰? そいつ」
「安藤って奴らしいぞ」
「ちょっと待て、お前ら。本当かわかりもしねえのに名指しで適当なこと言うなよ」
「いやでも、これマジ情報。二組の奴らが言ってたもん」
「誰か電車の中でチクったらしい」
圭太が車内で零したたった一言が、根も葉もない噂となって一瞬で拡がってしまった。圭太は教室でスマホを覗き込み、呆然と座り込んでいた。
声に出さない代わりに、クラスのライングループが大炎上している。ひっきりなしに鳴るバイブレーション通知音。授業中でもお構いなしだ。あまりに酷い様子を見て、滝沢が一度苛めてくれていたが、焼け石に水だった。他にも誰かが感染しただの、休んでいる奴は濃厚接触者だのと、確信のない話が次々と飛び交っていく。
クラスメイトたちは皆、安藤太一が新型ウイルス感染者で、彼と毎朝同じ電車に乗っている圭太も濃厚接触者ではないかと疑っているようだった。朝いつも太一と一緒にいることを滝沢以外が知っていることにも驚いたのだが、この情報が真実なのであれば自分は学校に来てはいけない気がする。
けれどなんの呼び出しもない。本当に濃厚接触者になれば、保健所から突然通達がくると聞いた。
それはいつ? どこから? それすらわからない。本人、あるいは教師に訊けば真実がわかるのだろうが、学校側からの公式情報は何もない。
「あー、もう知ってる奴もいるかもしれんが、この学年に濃厚接触者が出た。お前ら最近たるんでないか、しっかり手洗いうがい、消毒。みんなと一緒に飯食うのもなるべく控えて、マスクをはずさずに遊べる方法を考えろ。お前らもう高校生だ。遊ぶなとは言わないから、自分たちで何がよくて、何がダメなのか考えて行動しろ。不要不急の外出ってどういうことかわかるか……」
試験終了後のホームルーム。
担任は理不尽な説教をくどくど告げると、一目散に去っていく。
新型ウイルスが流行りだしてからもうすぐ一年。厳しい冬がやってくる。ネットニュースは旧型と新型のインフルエンザが同時にやってくることへの警戒と恐怖を煽る情報ばかりが流れていて、同時に「マスクなんか感染予防にならない、意味がない」という相反した情報も流れてくる。
一体何を信じて、どうすればいい。
圭太は汗ばむ手を握りしめたまま、誰にも手を触れないよう、ロボットのようにじっとしていた。声を出すのも怖い。
せっかく自粛ムードが緩和されたばかりだったというのに、翌朝には他クラスへの行き来や接触禁止のお触れが出た。どうやら疑わしい欠席者が急増したようだ。いよいよ学級閉鎖か。あるいは学年、学校閉鎖もあり得る。だが三組はそのまま待機で自習と言われ、戻ってきたテストの見直しを黙々とやる日になった。
女子の中には教室の隅で怯え、泣きじゃくる子もいた。二組に彼氏がいるらしく、会えないと嘆いていた。
「どうせ俺たちのことも疑ってるから閉じ込めてあぶり出す作戦だろ、バカバカしい」
「うちらも濃厚接触者になったらどうなんの?」
「あれって死ぬ病気?」
「すっげえきついってテレビでみた。後遺症のこるって」
「いやだ、怖い……」
今まで言われるがまま自粛生活をしているだけで、これっぽっちも現実味が湧かなかったのは圭太だけではなかった。
妙な噂が次々流れるようになってから、教室はどこか殺伐とした空気に包まれている。目に見えないウイルスという武器を持って息を潜め、けん制し合っているような――まさに生存を賭けたサバイバルゲームのような世界になってしまったのだ。
入学当初のように、机から手が届く距離には誰もいない。圭太の周りにいた、ゲームを語る友人も来なくなった。そして太一を含む二組の人間は「諸悪の根源」としてグループチャットで誹謗中傷されていた。
(……これ……僕のせいなんだろうか……)
一方的に嫌われたのだと思っていた。けれど本当に体調が悪くて休んでいたのだとしたら。自分はとんでもないミスをしでかしてしまったのでは。
圭太は痛みをこらえすぎて赤くなった鼻をずずっと啜ると、黙ったままシャーペンでノートの隅を黒く塗りつぶした。震える指のせいか、芯は何度も折れて飛んでいった。
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